昨今日本では、平均気温の上昇、猛暑日の増加、ゲリラ豪雨の頻発など気候変動に起因した災害に数多く見舞われています。
これらの災害は三越伊勢丹グループの事業に影響を及ぼすと同時に、社会の消費行動にも影響を与えています。2022年度は、2030年環境中期目標の達成に向けて脱炭素の取り組みを推進してまいります。また、サプライチェーン全体での社会的責任の順守および環境に配慮した取り組みを推進するため、お取組先をはじめとするステークホルダーの皆さまとコミュニケーションを図ってまいります。
当社グループは、未来に向けて持続可能な社会をつなぐため、安心・安全な商品・サービスの提供、脱炭素社会や省資源をはじめとした環境負荷低減につながる取り組みを推進しています。特に消費者の環境意識が急激に高まっており、これまでも環境配慮型の商品やサービスを積極的にお客さまに提案してきました。これからは、店舗だけに限らずオンラインストアでの展開をさらに進め、未来に向けたメッセージを発信、提案し、コミュニケーションを図っていきます。
● 環境中期目標に対する結果報告
● TCFD提言に沿った情報開示
● 温室効果ガス排出削減の取り組み
● 循環型社会に向けた4Rの取り組み
● 責任ある調達
● 品質管理の取り組み
脱炭素社会に向けて、「技術」「レジリエンス」を念頭に、気候変動対策に取り組んでいます。長期修繕計画における長期・中期・短期の時間軸で投資優先順位の入れ替えをしつつ、新技術の積極採用を行い、グループ各社のさらなる省エネへの取り組みを進めています。
また、サプライチェーンにおける資源循環の取り組みについても、積極的に実証実験等に参画し、温室効果ガス排出量の抑制、資源の有効活用と削減に取り組んでいきます。
三越伊勢丹グループでは気候変動に対するさらなる温室効果ガス排出削減に向け「新技術の積極的採用」を行っています。そのための長期修繕計画における長期・中期・短期の時間軸で投資優先順位の入れ替えをしつつ、グループ各社の好事例の共有を行いながら拡大を図っています。また、建物そのものの維持管理により安全で快適な環境を提供しつつ、日常の運用でさらなる工夫を一層深め、今まで以上の省エネの取り組みを日々推進し、温室効果ガス排出削減を実現していきます。
2018年度に当社グループは、2030年度の温室効果ガス排出量を50%削減(2013年度比)を目標に掲げ、取り組みを進めています。2021年度は42.9%削減となりました。
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大に見舞われ、政府の緊急事態宣言発出により54日間の休業や、その後も度々の時短営業要請のため、大幅な削減となりましたが、2021年度は社会、経済活動が回り始めたことにより、エネルギーの使用量が増え、温室効果ガスの排出量も増加しました。
2021年度は新型コロナウイルス感染症拡大に見舞われた2020年度から、社会、経済活動が回り始めたことにより、前年に対し2.2%の増加となりました。
サプライチェーン全体での環境負荷低減、CO2削減の取り組みが重要であるとの認識のもと、Scope3のCO2排出量の算定・開示が求められています。
当社グループでは、2018年度より、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」と、「同排出原単位データベース(Ver.3.0)」(2020年3月改訂 環境省・経済産業省)」に基づき、Scope3を算定・開示しています。
私たちを取り巻く世界では、気候変動をはじめとする環境変化が加速的に進み、巨大台風や豪雨による大規模災害が多発。生活や産業への影響も大きくなり、企業にとって気候変動対策は避けて通る事のできない状況です。
三越伊勢丹グループではグループ基盤を整備し事業を通じて社会課題、気候関連問題に取り組むこととし、重要課題についてはKPIを策定。具体的な取り組みを進め、進捗を報告しています。
2018年度に環境中期目標(温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比▲50%)を掲げるとともに、2019年度に環境長期目標として、2050年度の温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すことを決め、2021年度にロードマップを策定し、開示しました。
また、気候変動に伴うリスクや機会は事業戦略においても大きな影響を及ぼすと認識しており、2021年度には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しました。
今後もお客さま、株主/投資家、従業員、地域社会・コミュニティの方々との対話を通じて、当社グループの脱炭素への取り組みについて見直しを図りながら、温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みを進めて参ります。
当社グループでは、気候変動問題を重要課題と捉え、グループが横断的に取り組みを推進するために、ほかのリスクと同様に企業を取り巻くリスクの未然防止対策を講じ、リスクが顕在化した際に迅速な対応を実行するためのマネジメント体制を敷いています。
代表執行役社長(CEO)は取締役会における、主要メンバーとして、グループの大局的な方向付けと、業務執行に対する意思決定を担い、同時に、業務執行にかかる重要事項等の決定を行います。また、百貨店・金融・不動産・その他30社を超えるグループ企業の最高責任者がメンバーとして参加する、サステナビリティ推進会議の議長を務めます。
議長であるCEOは各社における気候変動対策業務の執行状況の管理監督を行うとともに、気候変動関連における経営上の課題を抽出し、リスクと機会を評価し、具体的な施策を戦略に組み込む責任を負います。
さらに、サステナビリティ推進会議の下部組織には、サステナビリティ推進部会を置き、脱炭素やサプライチェーンへの取り組みのワーキンググループの最高責任者にCAO兼CRO兼CHRO※が就き、業務執行の指揮・監督を行っています。
※チーフ・アドミニストレイティブ・オフィサー
※チーフ・リスク・オフィサー
※チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー
気候変動問題を含めた基本方針や重要事項は、取締役会で討議・決議し、重要な目標設定は執行役会で審議・決議します。
気候関連の環境目標は非財務KPI目標として開示し、関係部門の3ヶ年計画・年度計画に反映しています。これらの気候関連に関する目標の達成進捗状況は、取締役会に報告されます。2021年度は、環境中期目標の見直しや、KPIの設定、具体的取り組みについて討議・決議し、ガバナンスの効果を上げています。
当社グループでは、2つの将来の姿を思い描き、いずれの場合においても適切に対応できるようにシナリオ分析を行いました。
具体的には、気候変動対策が思うように進んでいない現在の延長線上の「4℃の世界」、気候変動対策が進みパリ協定の目標が実現した「2℃未満の世界」を想定しました。
気候変動におけるリスクと機会は、事業活動に与える影響があることから、環境中期目標、長期目標に向けて短・中・長期にわたった具体的な施策を検討、実行し、リスクと機会に対応しています。
当社グループは、2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業および財務への影響のうち、日本国内における炭素税の導入については、重要なパラメータになると考えています。そのため2℃未満と4℃シナリオにおける2つのパラメータについて、財務への影響を定量的に試算しています。
三越伊勢丹グループでは、気候変動に関するリスク(移行リスク・物理的リスク)・機会の双方について、以下のプロセスにもとづいて評価、分析、対応しています。
また気候変動に係るリスク・機会について、CEOが議長を務める「サステナビリティ推進会議」において検討を行い、各社・各部門への共有を図っております。
1. 当社グループに影響を与えると考えられる、気候変動に関するリスク・機会を抽出
2. 抽出したリスク・機会をお客さま・お取組先・株主/投資家・地域社会・コミュニティなどのステークホルダーに与える影響度と、リスク・機会発生の可能性の2軸でプロット
3. プロットされた項目ごとの影響度について、定量面・定性面双方の視点から検討し、重要度を確定
脱炭素社会に向けた取り組みを通じて、持続可能な社会にしていくことに貢献するための目標を設定し、その実現に向けた取り組みを推進してまいります。
具体的取り組み策
◆ 新技術を用いた設備システムの導入による省エネの推進
◆ 環境に配慮した店舗づくり
◆ 屋上緑化や建物の環境性能維持管理
◆ 環境中期目標:2030年における温室効果ガス排出量を2013年度比50%削減
◆ 環境長期目標:2050年における温室効果ガス排出量実質ゼロ
◆ 環境中長期目標の実現に向けて、再生可能エネルギーへの切り替え計画、お取組先へのアセスメント実施、SBTの認証取得等について、併せて検討・実施してまいります。
当社グループのマテリアリティ「人・地域をつなぐ」「持続可能な社会・時代をつなぐ」では、気候変動などの環境に対する意識の高まりを踏まえた、環境配慮型商品やサービスの提供を積極的に行ってまいります。
◆ 本業を通じて取り組む
“think good”
◆ 買い取り・引き取りご相談窓口
i'm green
◆ (株)JEPLANのサプライチェーンにてリサイクル
2011年より百貨店店舗の天井照明をすべてLED化することを目標とし、2021年度までに約87億円を投資し約51万台の照明器具をLEDに交換しました。蛍光ランプ、HIDランプ(水銀灯などの放電管)、および一部残存していたハロゲンランプをLEDに交換する工事を実施し、2019年度までに当社グループの店舗の天井照明LED化が95%を超えました。2020年度以降は、店舗の後方照明LED化を進めています。
この結果、2013年度比で年間電力使用量は40.3%削減しました。
伊勢丹新宿本店では、フロア空調の使用エネルギー(電力およびガス)年間使用量の従来比50%削減に向けて、AIスマート空調の導入に取り組んでいます。これまでフロアごとの空調一括制御となっていましたが、売場や時間帯の混雑状況に応じたコントロールを可能にし、省エネを進めていきます。2022年度は地下食品フロアでのトライアルをスタートし、2023年度の完全運用を目指しています。
伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店は、2016年3月に「CASBEE不動産評価認証」で最高位のSランクを取得し、その後も認証を更新取得しています。
また、2021年度は伊勢丹浦和店、新潟伊勢丹((株)新潟三越伊勢丹)も認証取得し「Sランク」の評価をいただきました。
「CASBEE不動産評価認証」は、建物の環境品質と環境負荷低減の30の配慮項目からなり、「耐震化、維持管理、省エネ対策、周辺環境への配慮に積極的に取り組んでいること、築年数が経過しても良好なメンテナンスと企業としての環境配慮により高い環境性能を維持していること」が評価されました。
伊勢丹新宿本店、三越銀座店では、太陽光発電システムによる「創エネ」への取り組みを実施しています。年間65,407kWhを発電し、店舗内で使用しています。
また三越伊勢丹物流センターの屋上を活用した「創エネ」を、2023年度の完全運用を目指し、現在準備中です。物流センターでの年間使用電力の4分の1を賄う試算になっています。
伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の屋上では、緑化工事を進め、温室効果ガス削減に取り組んでいます。
日射を遮断し、コンクリートの蓄熱を防ぐことにより建物最上階の空調負荷が低減され、建物の省エネを実現できます。壁面緑化は、建築物の外壁を緑で覆うことにより、蒸散作用によるヒートアイランド緩和に効果があることから、当社では温暖化対策の一環として注力しています。
特に、①表面の温度上昇の抑制効果 ②省エネ効果 ③空気の清浄・ヒーリング効果のほか、周辺緑地をエコロジカルネットワークでつなぐ効果があり、生物多様性にも貢献しています。
また、伊勢丹新宿本店「アイ・ガーデン」、三越日本橋本店「日本橋庭園」、三越銀座店「銀座テラス」は(公財)都市緑化機構の「SEGES(シージェス)都市のオアシス」に認定されています。
2010年にオープンした三越銀座店屋上の「銀座テラス」の一角には、野菜を育てている「テラスファーム」があります。オープン当初より、都会の子どもたちに食べものをつくることの大切さや自然との共生を感じてもらうことを目的として、子どもたちに向けた農業体験の課題授業を地域とともに実施しています。体験内容としては、5月にはサツマイモの苗植えや落花生の種まき、ハーブの収穫などを行い、秋に収穫を行います。
2021年度も地元小学校の4年生の児童を迎え、10月にサツマイモと落花生の収穫で賑わいました。
2022年10月、(公財)都市緑化機構が主催する「SEGES都市のオアシスガーデンツアー2022」が開催され、三越銀座店の「銀座テラス」が視察コースの一つになりました。
「街なかでの緑の楽しみ方を伝える」をコンセプトとした今回のツアーには15名が参加しました。
当日は晴天に恵まれ、参加者の方々は集合場所の日比谷公園のセミナーハウスで座学をし、銀座の街を散策しながら銀座テラスへ移動。銀座テラスでは、緑地管理スタッフから季節の花々や管理の注意点、またテラスファームへご案内し、ハーブや収穫間近の落花生やサツマイモをご覧いただき、都会の中の緑を楽しむひと時となりました。
• 2015年に、フロン排出抑制法が全面施行され、第一種特定製品(業務用冷凍・冷蔵・空調機器)の所有者・管理者に、使用中の機器を整備、点検、記録すること、法人単位で一定量を超えたフロン漏えいがあった場合は国に報告することが義務付けられました。
三越伊勢丹グループでは以下を実施しています。
(1)使用機器の把握と台帳作成
(2)3ヶ月に1回以上の簡易点検と定期点検の実施、記録・保管
(3)フロン漏えいの場合、修繕、充填、証明書の保管
(4)保有量、漏えい量の集計と報告
(5)機器廃棄の際のフロン類の回収
「PCB特別措置法」に基づき、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が絶縁材料として使用されていたPCB含有産業廃棄物(蛍光灯用安定器等)の処分期限が2023年3月と定められて以来、当社グループ内の使用実態調査を進め、処分の計画を策定してまいりました。それによりグループ内のPCBを含む機器類は2022年度末までに処分する予定です。
百貨店店舗ではリモデルなどの改装に合わせ、当社グループ内の建物に残るアスベストについて、計画的に除去を進めております。
•(株)静岡伊勢丹が運営するコリドーフジは、建て替え、リニューアルオープンに伴い、お客さまに快適な空間を提供しながら温室効果ガス排出量削減を実現しています。複層ガラスの採用により断熱性の向上、LED照明の設置のほか、自然通風や採光による空調運転負荷軽減に取り組んでいます。
三越伊勢丹グループ調達方針において「持続可能な循環型社会・省資源社会を目指し、サプライチェーン全体での廃棄物の排出抑制と適正処理、資源循環に努めます。」と掲げています。その具体的行動の一つが「4R※」です。適切な発注と在庫管理、長く大切にご利用いただくための上質な品ぞろえとアフターケア、買い取りのご提案や衣料品回収など、お客さまのご要望に対応しながら当社グループだからこそできる資源循環の形を目指してまいります。
※4R=Refuse、Reduce、Reuse、Recycle
• 百貨店事業を中心とする当社グループらしい4Rに取り組んでいます
百貨店の店舗では、日本百貨店協会が進める「スマートラッピング」を実践し、お客さまのご要望をお伺いしながら適正包装や、マイバックのご持参をお薦めしています。
国内グループ百貨店では、容器包装リサイクル法関係省令改正によるプラスチック製買物袋有料義務化に伴い、2020年7月1日より、自社製プラスチック買物袋を順次廃止しています。
また、プラスチック製買物袋だけではなく、紙製買物袋も含めた使用量削減のため、「マイバッグはお持ちでいらっしゃいますか?」のお声がけを強化し、“マイバッグの利用と持ち歩き”がスタンダードなライフスタイルとなることを目指しています。
お客さまのご理解とご協力の結果、プラスチック製買物袋の使用量の大幅減となり、温室効果ガス約1,005tの削減(杉の木約40万本の温室効果ガス吸収量に相当)※に寄与しました(2020年7月から2021年3月末まで)。
※環境省「3R行動見える化ツール」、林野庁「杉の木換算」にもとづいて計算
グループ関連会社の(株)三越伊勢丹ビジネス・サポートでは、2022年9月末に梱包マニュアル【包装】【養生】【配送袋】を策定しました。
マニュアルは、誰がみても判断できるよう、商品特性に応じた適切な梱包方法を写真付きで掲載し、平準化を進めています。何より受け取られるお客さまを第一に考え、あわせて輸配送段階の環境にも配慮し、「適正包装」「適正梱包」の推進に取り組むことで、包装資材の削減を進めてまいります。
百貨店店舗では廃棄物計量器を設置し、廃棄物排出量の把握を実施しています。
なかでも食品部門では、社会課題となっている「食品ロス削減」に様々な角度から取り組みを進めています。季節商品の受注販売や、日々の廃棄物排出量の記録など、お取組先のご協力をいただきながら進めています。
2021年度は、これまでの「見える化」から一歩踏み出し、お客さまのために、適時、適量を提供できる体制を整備するうえでも、売上との相関関係の分析を始めました。
お客さまにご満足いただけるお買い物をしていただきながら、食品廃棄物削減に向けて取り組みを進めていきます。
2022年4月に施行された「プラスチック資源循環>促進法」への取り組みをグループで進めています。特に、食品事業や食品部門で提供するプラスチック製のスプーンやフォーク、ストローは対象となることから、お客さまのご協力をいただきながら、使用量の抑制に努めています。
グループ関連会社の(株)エムアイフードスタイルが運営する「クイーンズ伊勢丹」では、2022年5月から、プラスチック製のカトラリーの削減として、割り箸と木製のスプーンのみの提供に切り替えました。これにより、プラスチック製のカトラリー使用量が年間1.6トン削減され、温室効果ガス2.7t-CO2が削減される試算です。
2022年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」への対応として、2021年度のグループ特定プラスチック製品の使用量は41.2トンでした。
今後、お客さまへのお声かけをはじめ、製品の薄肉化や、素材の転換の検討を推進しながら、使用量の抑制に取り組みます。また、事業所から排出されるプラスチック廃棄物については、可能な限り再資源化を進め、資源循環を進めて参ります。
「捨てない社会」「必要以上につくらない社会」を実現するため、三越伊勢丹グループでは使われなくなったものをまたあらたたに活躍できる場所へと送り出すビジネス“i’m green”を2021年10月に開始しました。三越日本橋本店、伊勢丹新宿本店本館にカウンターを常設しています。
i’m greenでは、衣料品、バッグ、時計、宝石、骨董・美術品などをお預かりし、専属の三越伊勢丹のスタイリスト(販売員)がご相談を承りながら最適な方法をご提案いたします。
開始から1年間で、延べ8,000名以上のお客さまにご利用いただき「三越伊勢丹だから安心できる」「こんなサービスを待っていた」など当社グループに対する信用・信頼の声を数多くいただいております。年間で、約8千件、約10万点を買取させていただきました。
今後は、サービスを各支店・グループ店へ拡大することを検討しています。これまで、百貨店として販売を通じてお客さまとのつながりを深めてきましたが、販売後にも、お客さまの大事にされているお品物へのサポートを行うことで、循環型社会実現の一助を担っていきます。
i’m greenは買取をメインとしながらも、経済・環境循環を行うために様々な活動を行っております。サステナビリティを体現するため、経済面では、初年度に単体で営業黒字化を達成。2022年度はさらなる増益を見込んでおります。また、伊勢丹新宿本店では、買取後の新品購入還流を目的とした仕組みを構築し、あらたな循環が生まれております。
i’m greenをご利用いただくお客さまは、ご自身の大切にしていた品物に強い思い入れをお持ちで、この後どこに行くのか、どう扱われるのか、品物の“セカンドライフ”に想いを馳せている方がとても多くいらっしゃいます。
そこで、買取できずに引取になった品物を、学校法人等の外部団体と連携し、リメイクやアップサイクルなど、当社グループのフィルターを加えて新しい価値に生まれ変わるような取り組みを開始し、第一弾として東京都立青山高等学校(以下、都立青山高校)に品物を無償で提供いたしました。
都立青山高校の「外苑祭」は、生徒による演劇の上演が伝統行事となっており、衣装をはじめ、舞台道具なども、生徒たちが手づくりするのが特徴です。提供した品物は、生徒自らがリメイクをし、演劇衣装として生まれ変わりました。
今後も学校法人等外部団体と協業し、リメイクやアップサイクルなど、活動の幅を広げていき、さらなる環境循環を計画していきます。
三越伊勢丹グループの“think good”活動では、「モノを大切に長く使う価値観の享受」をテーマに4Rの推進に取り組んでいます。
この一環として、2021年3月より、伊勢丹新宿本店リ・スタイルおよび、三越伊勢丹オンラインサイトにて、黒染めサービス「KUROZOME REWEAR」をスタートしました。このサービスでは、日本の伝統的な正装である黒紋付を100年間染め続けてきた(株)京都紋付と協業。独自の深黒加工(しんくろかこう)で、深みのある黒に染め替えることにより、お客さまの大切なお品物に、新たな命を吹き込みます。
また、京都紋付は、『大切な服を長く着られるようにすることで、サステナブルな社会を実現する』という考えのもと、染め替えの工程での染料にもこだわり、過去にエコテックス®スタンダード100認証のクラスⅡを取得したこともある染料を使用し、地球環境に配慮した加工技術の開発にも取り組んでいます。
累計の注文件数は、330点を超え、当初予想を大きく上回る反響をいただいています。
今後も、「KUROZOME REWEAR」を通じて、愛着のある一着を長く使う喜びや、限りある資源に関心を持つきっかけをご提供していきます。
※在籍所属は2021年11月時点のものです。
(株)三越伊勢丹は長い歴史の中で『ファッション』によってお客さまとのつながりを作ってきたことから、環境に配慮しながらのモノ作りでも、お客さまに高揚感(ワクワク、ドキドキ、これ欲しい、かわいい、かっこいい)を抱いていただく仕掛けが必要だと考えています。私はバイヤーとして、上質な洋服や独自性のある洋服をご提案してきましたのでお客さまには修理をしながら長く着ていただきたいという想いを常に持っていました。一方で、新たな高揚感が生まれる消費・サービスの在り方をお客さまにご提案するのも私たちの大切な仕事だと考えています。「KUROZOME REWEAR」は、ご購入いただいて終わりではない、モノを介しお客さまとお取組先・地域と従業員の接点やコミュニケーションとなっています。また「どんなふうに仕上がるんだろう」といったお客さまの想像力を掻き立てる取り組みとなりました。
今後もデザイナーやクリエイターなど様々な人たちとのコラボレーションを通じて、ユーズドストックを蘇らせるプロジェクトを企画しています。これは単なる衣料品の再利用や修理ではありません。モノの仕込み、展開・世界観の仕掛け、販売、そのすべての過程においてお取組先や地域社会と協力しながら商品の価値を向上させ、お客さまにお伝えするのが百貨店の役割であり、最も大切なことだと思います。
FOOD&TIMEでは、2021年3月より、横浜市資源循環局、(公社)フードバンクかながわと連携し、フードドライブを実施しています。フードドライブとは家庭で余っている食品を収集し、食を必要としている福祉施設(子ども食堂、一人暮らしの高齢者が集う会)などへお届けするものです。回収にあたり、4つのルール①未開封、②賞味期限が残り2ヶ月以上、③常温保存が可能、④アルコール不可を定めています。
2021年度は約219kgの品物をお届けしました。参画当初と比べ、フードドライブへの関心、理解も高まっており、寄付量も徐々に増えています。
百貨店事業では様々な種類の廃棄物が排出されています。お客さまに安全で安心していただける商品を提供できるよう、紳士服や婦人服等では、汚れ防止の観点から透明なビニール軟質フィルムで包装された商品を納品し、店頭に並ぶ際には軟質フィルムを外します。
2021年11月、首都圏の3店舗では、この軟質フィルムを使った「POOL PROJECT TOKYO」に参画しました。
百貨店店舗で回収した軟質フィルムを商品を納品した帰り便トラックに積み込み、ペレット状に砕く工場へ搬入。そこでペレット状になったプラスチックを、衛生商品や菓子のパッケージとしてリサイクルする循環システムです。
2021年11月~2022年10月までの取り組みで軟質フィルムを3.9トンリサイクルし、温室効果ガス5.8t-CO2を削減しました。
三越伊勢丹グループでは、「持続可能なサプライチェーン」「ビジネスと人権」等の社会課題に対応するため、2018年度に「三越伊勢丹グループ調達方針」「三越伊勢丹グループ人権方針」を制定し、公表しています。
サプライチェーン全体で、より一層人権の尊重や持続可能な調達に取り組んでいくため、2023年4月に両方針を改訂いたしました。2023年6月には、お取組先と調達先に対して、社会課題・環境課題に関連して取り組んでいただきたい項目を示した「お取組先行動規範」を制定いたしました。あわせて、グループの中核事業である百貨店業のお取組先に向けて「お取組先行動規範 解説版
」を公表いたしました。
2030年までにお取組先・従業員への調達方針浸透率100%を目指すとともに、調達・人権方針に基づき、サプライチェーン全体での環境・社会に配慮した取り組みを推進し、お客さまに安心をお届けできるようお取組先とのコミュニケーションを深めてまいります。
小売業を中心とする当社グループでは、お取組先と手を携えて商品やサービスの透明性を確保することでお客さまから信頼いただくための取り組み方針として「三越伊勢丹グループ調達方針」を制定しております。2030年に向けて国際社会が一丸となって実現を目指すSDGs(持続可能な開発目標)に積極的に対応する内容となっています。
• 国内においては、2018年度にお取組先延べ1万2千社に郵送にて通知し、お取組先および生産委託先にも順守をお願いしています。
2021年度は、百貨店事業の売上上位約7割を占めるお取組先およびその他事業や後方部門の主要お取組先に対して「サステナビリティ調達に関するアンケート」を初めて実施し、292社・グループ(回答率51%)よりご回答をいただきました。アンケート結果からは、品質管理に関しては積極的に取り組まれているものの、環境(生物多様性保全、水資源、環境データの開示)、および人権(雇用、不当労働、労働安全衛生等)などに関して、サプライチェーン全体の実態把握に課題があることが分かりました。2021年11月には、三越伊勢丹方針説明会を開催し、計300社を超えるお取組先に対して、アンケート結果のご報告と調達方針の順守をお願いしました。
2022年度は、方針の理解・順守促進に向けて、一部のお取組先と対話を実施し、実践に向けた課題やご要望をヒアリングするとともに、取り組みの改善に向けた意見交換を行いました。環境および人権問題は業界全体での取り組みが必要であるため、今後は、お取組先および官公庁・業界団体への働きかけ・協業を進めるとともに、人権デューデリジェンスの実践に向けて体制を整えてまいります。
当社グループは、お取組先や価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを宣言する「パートナーシップ構築宣言」※の趣旨に賛同し、2022年8月に同宣言を公表いたしました。調達・人権方針に基づいた個別項目を掲げることで、お取組先や事業者の皆さまとの連携・共存共栄のための取り組みをより明確に宣言しております。今後も公平、公正な取引を通じ、お取組先との信頼関係を築き、「社会的価値」と「経済的価値」を両立しながら、持続可能な社会、豊かな未来の実現を目指します。
※経団連会長、日商会頭、連合会長および関係大臣(内閣府、経産省、厚労省、農水省、国交省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」における「パートナーシップ構築宣言」
当社グループは、海外に28店舗の商業施設を展開しております。各国・各拠点のお取組先にも調達方針に基づく取り組みを実践いただくべく、2022年に中国語・英語へ翻訳し、2か国(4拠点)のお取組先1,400社・グループに対して送付し、理解・順守を働きかけを行っています。
今後は、お取組先の実践状況・課題の把握に向けて、アンケートおよび対話の実施を検討してまいります。
2024年までに従業員への人権教育100%実施を目指し、2019年度からは、国内グループ各社従業員のうち管理職を対象に環境や人権分野を含む調達方針に関するeラーニングを実施し、2022年10月末までに4,183人が受講しました。今後は、実施対象をお取組先との窓口を担うアシスタントバイヤー等の実務担当者にも拡大することを検討し、従業員の理解と順守に向けた風土醸成に努めてまいります。
三越伊勢丹グループは、長い歴史において、常にお客さまへ安全・安心な商品をご提供することを念頭に、品質の確保に取り組んでまいりました。
お客さまアンケートでも常にご期待の上位である「商品の品質・安全の確保・正確な表示」は、同時に多くのお客さまからの評価も得られてきたところだと考えています。
百貨店は様々な商品を取り扱っていることが特性ですが、すべての商品に法律の規制があるわけではありません。法律を順守することはもちろんですが、法律の規制がない分野の商品についても当社グループの独自基準やルールを設定することで、様々な商品の品質を確保し、お客さまに安心してお買物をしていただけるための土台をつくり上げることが品質管理の役割だと考え、取り組んでいます。また、基準やルールを定めるだけではなく、その基準やルールが守られているかを確認するための自主点検の運営や、様々なツールを使った社内教育の実施、さらにはお取組先との連携を構築することで、より高い品質管理の実現を図っています。
当社グループの重要方針の一つである「三越伊勢丹グループ 調達方針」にも品質管理の項目がありますが、日々の業務行動につなげられるよう、より具体的な品質管理への姿勢を個別に設定しています。「調達方針」はもちろん、その上位方針である「サステナビリティ基本方針」と連携し、より良い社会の実現にも貢献してまいります。
三越伊勢丹グループは、お客さまのニーズとともに多様化する商品やサービスについて、常に安全・安心を最優先に、お客さまのご満足と信頼に応えられる品質を追求します
● 関連する法令を遵守するとともに、お客さまにご満足いただける品質をご提供するために必要な自主基準やルールを作成し、お取組先を含めた社内関係者全員に周知いたします
● お客さまへ安全・安心な商品をご提供するために、表示・外観・衛生などの点検活動を推進し、当社グループ社員一丸となって実践します
● 品質管理に必要な検査体制を社内に整備し、維持していきます
● 環境や資源への配慮、適正な商品調達も含め、品質管理面からのトータルサポートに取り組みます
当社グループが安全・安心な商品をお客さまにご提供するために、法律順守に加え、当社グループ独自の品質管理基準やルールを定めているものがあります。
例えば、食品・レストラン、化粧品、宝石・アクセサリー、衣料品などですが、商品分野に応じて幅や深さを持たせることで、お客さまのご期待に応えられるようにしています。また、品質に関連する多くの基準やルールは、お取組先との連携を欠かすことができません。当社グループ社員、お取組先、そして品質管理が一体となって、安全・安心な商品をご提供するために、基準やルールの適正な運用に日々取り組んでおります。
2021年6月から制度化されたHACCPの考え方に基づく衛生管理計画書です。当社グループの独自ルール(食品取扱基準、デリバリールール等)も含まれた内容で、お取組先と共に食の安全を確保するためのマニュアルになっています。
※HACCP(ハサップ)= HazardAnalysisandCriticalControlPointの略で、国際的な食品衛生管理方法の一つ
食物アレルギーは一歩間違えれば生命の危機につながる重要なファクターです。正しいアレルギー情報を提供することで、お客さまに安心して食品を購入し、召し上がっていただけるよう、このマニュアルに当社グループのルールをまとめています。
化粧品に関わる表現について、表現可能な効能効果を示すとともに、化粧品類やエステ類にはNGワードを設定し、適正な表現を推進しています。
現在、上記3つに「三越伊勢丹グループ 針管理マニュアル」を加えた4種類のマニュアル類は、お買場の社員が、日常の業務に加え、自主点検やお取組先からの問い合わせ等に適切に対応できるよう、業務スマートフォン内にアプリ化しています。今後も必要なマニュアル類を加えながら、利便性と実用性の向上を推進していきます。
百貨店では日常的に商品点検を行っております。
● 会社のディフェンスラインの機能を働かせながら重点リスクの未然防止策として行っている「自主点検」
● 商品の安全性を販売前に確認するための「日常点検」
いずれも店頭のスタッフを中心に、各店舗が主体的に取り組んでおり、商品の安全性確保に大きく寄与しています。
HACCPの考え方に基づく記録(健康管理記録・温度管理記録等)を適切に行っているか、基本となる衛生管理計画書が保管されているかなどを点検することで、法対応が適切に行われているかを確認するとともに、食中毒リスクの軽減を図っています。年2回の自主点検だけでなく、日々の食品衛生管理は私たちの重要なテーマです。
「食中毒予防」点検フローイメージ
各ショップにアレルギー台帳が整備されているか、アレルギー台帳と店頭POPは一致しているかなど、お客さまへ正しいアレルギー情報が提供できる体制を整えることを目的に、年に2回自主点検を実施しています。2022年度から、アレルギー事故の予防をさらに強化するために、食品レストラン取扱部門だけの中間点検も年に2回加えました。まずは事故の未然防止を優先に取り組んでいます。
「アレルギー強化月間」点検フローイメージ
全店全売場を対象に、陳列している商品の点検を、品質管理が発信する年間テーマと月間テーマに基づき実施しています。見つかった不適は現場で速やかに改善されますが、全国に影響が出るような重大不適が見つかった場合には、品質管理がハブとなり全店へ情報を共有することで、全店的な事故予防にも効果を発揮しています。
また、商品点検を行うために商品知識や品質知識を身につけることができるため、スタイリストのスキルアップにつながる相乗効果も図られています。
三越伊勢丹グループでは、バイヤーが選定した商品を直輸入するなど、お客さまのご要望に沿った品揃えに取り組んでいます。しかし、海外で販売されているからといって、そのまま日本で販売することはできません。
品質管理では、国内で販売するために必要な日本の法律に沿った表示の指示をはじめ、機能性や外観、安全性などを確認するための1点検品、そして根拠資料の確認を行っています。
世界的にSDGsに関連する話題が多く取り上げられていますが、商品の表示にもその傾向が顕著に表れています。
例えば、環境負荷低減につながる「オーガニック」の表示は3年前の約5倍、資源を循環させる「リサイクル」の表示は3年前の約15倍に増加しており、海外では明らかに持続可能な社会活動が活発化していることが実感できます。
いずれの表示についても、輸入時に表示されている内容が正しいか、その根拠資料などの確認を実施し、お客さまが求める商品を正しく選択できるように目を光らせています。
直輸入品も国内製品と同じ目線で安全性を確保することが重要です。針や釘などの異物が混入していないか、モノフィラメント糸や鋭利なスパンコールが使用されていないかなど、肌に触れる部分を中心に、安心して着用いただくための点検を実施しています。
また、子供服においては、より高い安全性を確保する必要があり、通常の検品に加えて、フードや紐による怪我を未然に防止するため、JIS規格に沿った仕様であることも確認しながら、可愛いデザイン性と安全性の両立も図っています。
三越伊勢丹グループ百貨店各店舗では、「三越伊勢丹グループ品質管理基準」に基づいたチェックおよび管理を行うことで、商品や店舗環境の安全・安心につなげています。また、化学物質への対応は、「三越伊勢丹グループ 調達方針」の《7.化学物質の排除》にも連携します。
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で規制されている「ホルムアルデヒド」について、特にベビー用品売場における管理が重要です。当社グループでは、直輸入品の法規制対象のベビー用繊維製品は全品番全色の検査を行うことや、ベビー服売場の什器等のホルムアルデヒド計測を年1回実施するなど、商品・販売・環境面からの管理を適正に実施することで、ベビー用品の有害物質に対する安全性を確保しています。
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で規制されている「特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料」の規制対象品に加え、「三越伊勢丹グループ品質管理基準」では和装や座布団なども対象品として追加指定しています。この内容に沿って、2016年4月より、取り組みを最初に始める段階において、食品以外のすべてのお取組先から「有害物質不使用宣言書」(該当商品を取り扱っていない場合は「対象製品の取り扱いに関する証明書」)を提出いただいています。
商品に関連する品質管理の知識は、スタイリストがお客さまに必要な商品情報をご説明するうえでも、お客さまの安心とご満足につなげるためにも、とても重要です。お買場はもちろんのこと、新規事業を担当する所属からの教育要請も増えており、より幅広い対応が求められています。
かねてより、各所属の要望に応じた品質管理教育を行ってまいりましたが、現在は、お買場がより便利に教育の機会を得られるよう、テレビ会議形式の講習会や、コンパクトにまとめた「動画教育」を増強するなど、DX化を推進しています。
また、品質管理メンバーがその時々のトピックスを加えてオリジナルに作成した「通信講座」は15年以上の実績がありますが、2022年度から当社グループ関連事業会社の一部を加え実施しました。百貨店事業だけでなく、グループ全社の誰もが、必要なときに必要な教育を受けられるよう、今後もメニューとツールの充実化を図ってまいります。
お取組先から適正な商品を納品していただくために必要な当社の品質管理基準を一部共有しています。
「三越伊勢丹グループ品質管理基準」※衣料品・雑貨・リビング製品の総合基準書
「三越伊勢丹グループ食品衛生管理計画書」
「アレルギー情報提供マニュアル(お取組先版)」
「化粧品類・エステ類NGワードルール」
「在庫連携商品お取組先様用広告表現ルール集」
今後は、環境負荷の低減や4Rの推進などの取り組みが増加していくこと、DX化により商売のスピードが向上することなどが考えられるため、お取組先としても活用度が高いと感じていただける内容にブラッシュアップしながら、商品に関連する課題解決に一緒に取り組んでまいります。
三越伊勢丹グループでは、取組先と取り組みを開始する際に各社の品質管理体制を確認しています。
①お取組先の品質管理体制の把握
②表示等が各種法令に準じた内容であるかの確認
③商品等の品質が確保されていることをデータ等で確認
④三越伊勢丹グループ品質管理基準の共有
お取組先の規模は様々であるため、不足している法令知識等を最初にお伝えすることで、お取組先の知識向上も図っています。取り組みを開始するその時点から、相互理解を深めるためにも大きな役割を果たしています。
皆さまは、「品質」という言葉にどんなイメージを持っているでしょうか。データ偽装、異物混入、産地偽装など、様々な「品質」に関連する問題がニュースで取り上げられることも多く、高い「品質」を維持することの重要性は年々高くなっております。社会の「品質」に対する目もより厳しくなっており、「品質」の問題は、企業の存続にさえ影響を及ぼすような重大なリスクとなっています。
また、社会環境の変化とともに品質管理を取り巻く問題も変化しますが、過去に社会的な問題になったことが、忘れた頃に形を変えて再度問題になることも多くあり、「品質」の課題は継続的に取り組む必要があると感じています。さらに、最近では商品の流行やトレンドの移り変わりが早く、加えて法律や規則の改訂や新設も多くあり、情報を素早くキャッチすることがとても重要になっています。
お客さまが三越伊勢丹グループに求める商品品質への期待は、創業当時から先代が築き上げてきたのれんへの信頼につながっています。ゆえに、こののれんへの信頼を守ることが、私たちの最大のミッションです。
のれんへの信頼については、まだ私が若手の頃に、多くのお取組先からも教わりました。例えば、「三越や伊勢丹からお墨付きを貰えれば、他社へも自信を持って薦められる」とか「上司から三越や伊勢丹の品質管理へ確認してから決定しろと言われた」などなど、相談を受ける責任の重さを感じながら、とても嬉しかったことを今でもよく覚えています。先輩方が真摯に取り組み築いてきた信頼を損なわないように、私たち後輩はしっかりとその土台を継承していくことがとても大事だと考えています。
品質管理は様々な業務を担っていますが、このレポートでも一部をご紹介させていただきました。
品質管理というと、何か問題が発生した際に対応する役割だと思っている方もいますが、私たちが考える本来の役割は〈事故の未然防止〉です。土台としての「基準・ルールの策定」、事故予防の武器となる知恵を得るための「教育」、そして適時不適品を排除する「日々の点検」などに力を入れているのは、そのためです。他にも、直輸入品の適正な検品体制の構築や表示の指示など、一部メーカー的な役割も果たしています。
一方で、事故の未然防止の観点に加え、万が一の事故発生時の被害拡大防止においては、品質管理としての専門性を活かした対応も行っています。例えば、社内に設置している検査室で定期的に店内製造品の細菌検査を実施して衛生状況を確認したり、食品に重篤な異物が入っていた場合にはその工場まで出向き、原因を特定し、再発防止策がきちんと取られていることが確認できるまで商品の再販は認めないなどです。私も実際に、事前確認や改善対応を含め、300カ所を超える食品関連の厨房や工場確認を経験しています。
2このように、品質管理は安心・安全な商品を確保するために努力をしていますが、一緒に取り組んでいる〈お買場のスタイリスト〉〈バイヤー〉〈各店舗〉、そして〈お取組先〉の方々の働きがあることも忘れてはいけません。それぞれが信頼関係を築き、連携を図ることではじめて、良い「品質」の商品をお客さまへ提供することが実現できるのです。私たちは黒子として、またある時は前面に出て対応できるよう、今後も精進と関連各所との連携を進めていきたいと考えています。
当社グループがこれからも持続的成長を続けていくためには、お客さまが商品やサービスを安心・安全にご利用いただくことを大前提としながらも、品質管理という狭義の意味に囚われることなく、今後の社会的な役割(プラスチック問題、化学物質への対応、フードロス等)へも積極的に関与したいと考えています。それぞれが持つ得意分野が相乗効果を発揮し、部門を越えて連携できることが理想です。それが実現できるよう、私たちも知見を深めていかなければなりません。品質管理が持つノウハウや知識が、様々な現場の仲間に役立つと思って貰えるよう、メンバー全員が一丸となって新たな1ページを作るために努力してまいります。
サステナビリティレポートをご一読いただき、当社グループの品質管理について知っていただければ幸いです。