お客さまのより豊かなライフスタイルの実現に貢献するため、人の想いや感性に触れ合える場所づくりのほか、各地域の文化や伝統、名産品をご紹介するなど、人と地域をつなぐ取り組みを推進しています。
三越伊勢丹グループは、社会・経済の持続的な発展を目指し、地域社会の一員として、様々な活動に取り組んでいます。
私たちを取り巻く人や地域と積極的にコミュニケーションをとることで、様々な視点から見た「百貨店業を中心とした当社グループだからできること」を考え、従業員一人一人の積極的な参加のもとに実践しています。具体的には、主に地域活性化、募金活動を中心とした社会貢献に関わる活動、文化・伝統事業への貢献、次世代育成に取り組んでいます。今後も地域社会との信頼構築を推進してまいります。
当社グループの強みである、国内外に広がる店舗ネットワークと商品調達力を活かし、モノ・コトを通じて日本の技術や伝統文化を次の時代につなげます。
また、人と地域をつなぎながら、新たな価値を提案します。
地域と一体で、街の魅力を活かし、百貨店を中心としたあたらしい“まちづくり”を実現させる
● 地域活性化
● 社会貢献活動
● 文化・伝統事業への貢献
● 次世代支援・育成
● 新しい顧客体験の提供
三越伊勢丹グループでは、店舗のある地域だけでなく、商品調達で縁をもった地域とも積極的に関わり、行政や産業界などと協働して地域に根差した取り組みを行っています。
今後も既存の方法にとらわれず、常に新しい視点をもって地域へ貢献してまいります。
全国にある当社グループの百貨店が、地域の活性化を目指して取り組んでいるのが「三越伊勢丹ふるさと納税」です。地域をよく知る百貨店バイヤーが地域の事業者と協力し、返礼品としておすすめの特産品をご紹介しています。お客さまとの交流や事業者とのつながりで得た、私たちしか知らない地域のすばらしさをふるさと納税を通じて日本全国にお伝えすること、それが私たちにできる地域創生の取り組みの一つであると考えています。
自治体および事業者との窓口は地域百貨店が担当し、より近い距離から地域を支援できる仕組みを構築しています。また、返礼品は百貨店基準の品質管理を行っており、高品質な地域産品として取り扱うことで、ふるさと納税以外の販路へも拡大しやすい環境を整えています。それが事業者のふるさと納税制度に縛られない継続的な収益につながり、地域産業の活性化を目指しています。
「三越伊勢丹ふるさと納税」はポータルサイトだけでなく、催事や店頭カウンターを通じて、直接お客さまにふるさと納税をご紹介する機会を設けております。ふるさと納税をはじめるきっかけ、地域の魅力を知るきっかけとして、店頭をご活用いただけることも、当社グループならではの強みであると考えています。
2022年10月現在、参加表明いただいている自治体は254、公開自治体は223となります。今後も地域との取り組みを拡大しながら、コンセプトでもあるお客さまと地域をつなぐ懸け橋として、当社ならではのふるさと納税をご紹介してまいります。
山口県山陽小野田市のガラス産業振興と知名度向上を目的として、2021~22年度のプロポーザル案件を(株)日本デザインセンターと共同で受託し、2022年2月に“高い芸術性と暮らしに取り入れやすいスタイル”をコンセプトとした同市のガラス造形作家によるガラスアートブランド〈CLASS GLASS〉を発表いたしました。
同市は、古くは窯業が盛んな地域で、地域文化の伝承・創造を目的に、市出身の著名なガラス造形作家の故・竹内傳治氏と共に、窯業の一つであるガラスに注目しガラス文化をテーマにしたまちづくりに注力してきました。
〈CLASS GLASS〉は、百貨店の店舗や、3,500点以上のギフトが揃う伊勢丹のオンラインギフトサイト「ムードマーク バイ イセタン」や「三越伊勢丹ふるさと納税」などの当社グループだけでなく、法人顧客や同市の飲食店向けにもご紹介しています。
本取り組みでは、当社グループが百貨店事業で培ってきた顧客接点やグループネットワーク等のリソースを活用し、パートナー企業と協業しながら、ブランド設計、デザイン設計、販売計画、販路開拓等の基礎からブランド化に向けて同市とタッグを組み、地域社会と共生するビジネスモデルの構築を目指しています。
当社グループでは、日本全国に店舗を有する強みを活かし、各地域の企業・団体・自治体などと連携して地域活性化に貢献しています。
百貨店各店舗では、地域の社会課題に、経営だけでなく従業員も主体的に行動できる体制を整備しており、お客さまが商品購入やイベントへの参加という形で協創できる仕組みを整えています。
(公社)広島県就労振興センターおよび広島市就労支援センターの協力のもと、県内の障害福祉サービス事業所や特別支援学校が出店する「おひさまマルシェ」を年1回開催しています。
「おひさまマルシェ」では、障害福祉サービス事業所でつくられた食品や雑貨などを販売し、障がいをもつ方の経済的自立を目指すとともに、事業所の活動を広く知っていただく機会を提供しています。
2022年4月には、新型コロナウイルス感染症の拡大によりイベント出店の見合わせを余儀なくされた、広島県内約30の事業所に参画いただきました。2回目の開催を迎え、イベントの認知度が向上しており、売上が大きく拡大しただけでなく、障がいのある方のモチベーションアップにつながりました。本イベントをきっかけに、事業所同士が連携し、新たな販路や商品が生まれたという事例もあります。今後も、共生社会の実現に向けて、事業所・お客さまに喜んでいただけるイベントを目指してまいります。
星ヶ丘三越は、地域社会との協創に取り組む「地域のパートナーズストア」として、2022年10月にリモデルオープンしました。地域のお客さまに寄り添いながら、より豊かな暮らしをお手伝いするとともに、近隣コミュニティと協力し、魅力あるまちづくりにも貢献しています。
2022年10月には、東海地方の輝くヒト・モノ・コトにフォーカスした「東海推しウィーク」を開催しました。今回初の取り組みとして実施した東山動植物園とのコラボレーション企画では、オリジナルアイテムの販売や、家族でのお出かけスタイル、行楽弁当をご提案し、相互送客・人流活性を生み出しました。そのほかにも、地元のブランドやアーティストをご紹介するなど、東海地区の新たな魅力を発信しています。
また、子ども・若者などの次世代支援にも積極的に参加しています。東山遊園(株)が運営する「星が丘テラス」と合同で、名古屋市千種区の幼稚園12施設に、組み立て式サッカーボールを寄贈しました。キットを組み立てる達成感や、プレイを通じたコミュニケーションなど、地域の子どもたちに学習の楽しさとスポーツの魅力を届けています。
隣接する椙山女学園大学とは、長年にわたり合同での取り組みを実施しています。星ヶ丘三越の社員がゼミに参加し、百貨店を取り巻く環境や課題点などをレクチャーしたうえで、学生自らが商品開発やパッケージデザイン、PR活動を実践しました。社会と関わりながら体験学習することで、マネジメント力を育成しています。今後もこのような取り組みを強化し、地域を活性化していきます。
当社グループでは、包装資材の総量抑制を通じたCO2削減に取り組んでいます。(株)新潟三越伊勢丹では、最低限必要な包装資材のプラスチックも、環境配慮素材に転換しています。その一環として、2021年4月からライスレジン製プラスチックをギフト包装材に使用しています。ライスレジンとは、食品に適さない古米、砕米、削米などを加工したバイオマスプラスチックです。国内有数の米どころ、新潟ならではの素材です。地域特性を活かすとともに、食品に適さない米を使用するので食品ロスの解決にもなります。この事業を進めるにあたりパートナーとなったのが、バイオマスプラスチック開発技術をもつ、(株)バイオマスレジン南魚沼です。
包装材での活用に加えて、ライスレジンの認知度向上を図ることで、ステークホルダーとともに環境と地域貢献について考える機会を創出しています。
お客さまに対しては、新潟伊勢丹内の新潟の逸品を紹介する「NIIGATA越品コーナー」において、ライスレジンが使用された子ども用玩具、カトラリーや食器などの商品を展示・販売しています。店内の喫茶やレストランの一部の店舗では、ライスレジンを使用した箸・スプーン・ストローを導入し、実際にお使いいただいています。従業員に対しては、従業員食堂にてライスレジン使用のカトラリーを導入しています。
2021年9月に(株)新潟三越伊勢丹は、(株)バイオマスレジン南魚沼とライスレジンの更なる使用拡大に向け、販売代理店契約と物販基本契約を締結しました。今後もライスレジンの取り組みを拡充していきます。
(株)岩田屋三越では、農作物の育成や収穫を通して、従業員が主体的に地域の現状や社会課題を知ることを目的とした「岩田屋三越ファーム」プロジェクトを実施しています。
このプロジェクトは、2017年度に佐賀県唐津市「大浦の棚田」で米作りをしたことから始まります。その後、2018年度には、福岡県筑後市でお茶の栽培を、福岡三越屋上で屋上養蜂を、2020年度には熊本県菊池市で栗の栽培を開始し、同じ2020年度には銘茶のふるさと、福岡県八女市でもお茶の栽培を開始しました。育てる農作物の種類や作業する場所が増えることは、多角的な社会課題の発見につながっています。
最近は気候変動に伴い、九州地方は災害に見舞われることが増えています。その影響で、米作りは2020年度より地元、福岡県朝倉郡東峰村竹地区に生産の場を移しました。竹地区の棚田は、蛍の生息地の名所です。しかし、2017年の九州北部豪雨による水害で壊滅的な被害をうけ、蛍の姿はほとんど見ることができなくなりました。竹地区の棚田の復活と維持の一助となるため、2020年度から棚田米作りを開始。蛍が戻る日に向けて活動を続けています。
収穫した農作物は、商品として店頭で販売しています。中には、お中元・お歳暮のギフトになるものもあります。手間暇かけて農作物を育てることは、従業員の意識を変えています。また、商品の販売時にその体験をお客さまにお伝えすることで、農業を中心とした環境問題への関心を高めていただいています。
(株)岩田屋三越では今後もこの取り組みを強化してまいります。
私たち4人は、ファームプロジェクトメンバーの一員として、説明にあるように、農作物の育成から商品化・販売まですべての工程に参加しています。実際の作業、特に農作業は想像以上に体力的にきついです。その体験だけでも収穫ですが、苦労して作ったものをお客さまの手に届ける喜びは地域により強い思いを抱くきっかけをつくってくれました。
近年は気候変動に伴い、九州は毎年のように災害に見舞われています。同じ福岡に住んでいながら、それまでニュース上の出来事のように感じていたことも、このプロジェクトの活動を進めていくうちに各地域の被災を、自分事として捉えるようになりました。生産者の皆さまの苦労がわかるからこそ、募金活動やボランティアだけでなく、継続的な復興支援のために米作りの場を移転した理由もそこにあります。
当初はモノづくりの過程を知る、という観点で始めたプロジェクトですが、ともに作業をすることでできた地域の方々との絆を通じて、(株)岩田屋三越が地元の企業であるからこそ、より福岡の活性化に関わりたいと、その実施目的が次のステージに上がったように思います。
2022年1月に「福岡県ふるさと物産展」を開催します。そこでは、作り手を取り巻く環境、後継者問題も含めて、プロジェクトを紹介します。農家の方をお招きして、お客さまと接する機会を設け、農家の方が、商品開発のタネを発見できるお手伝いができればと考えております。この機会を通じ、私たちがプロジェクトで学んだことを、生産者の皆さまとお客さまにお伝えし、「食を通したつながりの輪」を広げることで「地域貢献」を目指していきたいと思います。
※在籍所属は2021年11月時点のものです。
三越伊勢丹グループでは、百貨店という公共性の高い店舗であることを活かし、募金活動のほか、商品販売を通じたチャリティ活動などの社会貢献活動をしています。
お客さま・従業員ともに多くの女性に支えられている当社グループでは、乳がん早期治療の啓発活動「ピンクリボンキャンペーン」を実施しています。
伊勢丹店舗では2007年より、三越店舗では2014年より、2016年からはグループ全体に拡大して取り組んでいます。
2021年度も乳がん月間である10月に、グループ全体で「ピンクリボンキャンペーン」を実施。早期発見・治療を呼びかける店内放送やリーフレットのお渡し、「ピンクリボンバッジ」による店頭募金など、お客さまへの啓発活動を行いました。皆さまのご協力の結果、2021年度の寄付金額は1,201,221円(14店舗)となりました。
この寄付金は、活動開始当初よりご協力いただいている認定NPO法人乳房健康研究会をはじめ、店舗の所在地域の活動団体へ寄付され、乳がんの早期発見に向けた様々な啓発活動に役立てられます。
(株)エムアイカードでは、ポイント交換サイト上で日本赤十字社への寄付ができるようになりました。集まりました寄付は、新型コロナウイルス感染症対策を含む、日本赤十字社の活動全般に役立てられます。
また、エムアイカード公式ホームページでは、新型コロナウイルスの影響で様々な活動の自粛などにより多大な影響を受けている食品業界を支援する取り組みとして、フードロス削減に取り組むサイトとの連携も行っています。
旧・(株)伊勢丹の創業家が1963年に創立し、後に公益認定を受けた、(公財)伊勢丹奨学会が運営している奨学金制度です。
都内および近隣県にある7大学の商業、経済および経営関係学部に在学する、修学可能な心身で、学力優秀でありながら経済的理由により修学困難な学生に対して奨学金を給付しています。
2022年度には、ロシアの侵攻により深刻な人道危機に面しているウクライナの人々を支援するための募金活動を、インターネット上で募金できる仕組みにより実施。寄付金は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の救援活動の支援にあてられます。
「#みんなでマスク」は、当社グループがお取組先や生産者の皆さまをつないでマスクの製造を依頼、すべての収益は日本赤十字社(医療関係支援)に寄付をするチャリティ企画です。
様々な所属の従業員が「今できること」、「今やらなければいけないこと」は何かを考え、緊急事態宣言下の休業時からこのプロジェクトをスタートしました。
各自が持つ社内外のネットワークを活かして交渉し、お取組先、デザイナー、今回のメインビジュアル作成のイラストレーター長場 雄さんや、タイトルとステートメント作成のコピーライター後藤 国弘さんなどが、「この状況で何か力になりたい」と快く賛同、協力してくださいました。
本企画は、新型コロナウイルスの影響により、仕事が減少した国内の縫製工場や、医療関係者への支援を目的としていますが、同時に、ファッション業界の現状をポジティブな内容で発信し、「(自宅にいても)ファッションを楽しみたい!」というお客さまのマインドに働きかけることで、賛同の環を拡大することができました。
お取組先から素材(残反やデットストック生地)をご提供いただき、その生地で国内縫製工場各社にマスクの製造を委託、すべての生地のホルマリン検査を実施し、衛生面など品質管理もしながら、2020年6月に三越伊勢丹オンラインストア限定で発売しました。「#みんなでマスク」としてSNSでも拡散、お取組先やお客さまからの投稿も数多く頂戴し、ご好評のうちに約12,000枚を完売、3,112,727円を寄付することができました。
伊勢丹新宿本店本館3階センターパーク/ザ・ステージ#3では、マスクケースの販売だけでなく、今回ご協力くださったブランドの皆さまからのメッセージとともにマスクの展示やメッセージ動画の放映も行いました。高いファッション性だけでなく、お客さまやデザイナーの皆さま、生産者の皆さま、そして当社グループが「#みんなでマスク」を通じて、想いを「つなぐ」ことができたプロジェクトとなりました。
緊急事態宣言の発出(2020年4月~5月)は、小売業だけでなく、様々な業態に影響を及ぼしました。
地域に元気を取り戻すため、宣言終了後、(株)静岡伊勢丹では、これまでのテイクアウト販売で培ったノウハウ(内容・価格)と場所や販売業務を、近隣の個人経営の飲食店7店に提供しました。
メニューがふえたことは、近隣の官公庁やオフィスにお勤めの従来からのお客さまはもちろん、「お弁当を買うことで少しでも役に立ちたい」というお客さまに好評で、連日完売しました。
この結果を受け、(株)静岡伊勢丹では地域社会への貢献により力を入れることになりました。2020年度より、静岡県と山梨県が共同で行っている「バイ・ふじのくに」に参画しています。
期間 | タイトル | 金額(千円) | 実施店舗 | 寄付先 |
---|---|---|---|---|
10月 | ピンクリボンキャンペーン | 1,201 | 伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店、伊勢丹立川店、伊勢丹浦和店、函館丸井今井、仙台三越、新潟伊勢丹、静岡伊勢丹、高松三越、松山三越、岩田屋本店、岩田屋久留米店、福岡三越 | 認定NPO法人乳房健康研究会、ピンクリボンかがわ県協議会、ピンクリボンえひめ、認定NPO法人ハッピーマンマ |
4月~6月 | 動物保護 アクセサリー販売 | 623 | 三越伊勢丹オンラインストア | (一財)クリステル・ヴィ・アンサンブル |
年間 | 新型コロナウイルス感染症対応 | 5,113 | グループ各店 | 日本赤十字社 |
エムアイカード1ポイント=1円としてお客さまから寄付 | 1,587 | エムアイカードホームページ | 日本赤十字社 | |
802 | エムアイカードホームページ | 東京国立博物館、国立科学博物館、(独)国立文化財機構、鎮守の森プロジェクト、名古屋市観光文化交流局 | ||
エムアイ友の会の収益から一定の金額を寄付 | 669 | グループ各店友の会カウンター | (公社)チャンス・フォー・チルドレン | |
853 | グループ各店友の会カウンター | (一社)more trees |
海外店 | 金額(千円) |
---|---|
シンガポール伊勢丹 | 452 |
天津伊勢丹・天津濱海新区伊勢丹 | 193 |
成都伊勢丹 | 258 |
米国三越 | 423 |
※2022年5月末のレートで円換算
三越、伊勢丹、岩田屋、丸井今井は、呉服店・呉服商から始まりました。その歴史を振り返ると、明治時代には、「元禄模様」の三井呉服店(三越の前身)、「御守殿模様」の伊勢丹が切磋琢磨するなど、呉服の文化や産業の発展に寄与してきたことが分かります。
また、三越は1907年に美術部を創設しました。当時、身近に触れる機会が限られていた美術品を百貨店が紹介することで、誰もが美術品を鑑賞しながら楽しめる、そして安心して購入できる機会を提供し、文化と芸術の普及を図りました。
今に続く呉服や美術の伝統・文化事業への取り組みのほか、国立博物館・美術館との協業や、物産展や外国展など催事を通した文化の紹介や地域振興についてご紹介いたします。
近年、国内産シルクのシェアは、日本で消費される絹量の1%にも満たないと言われています。そこで呉服店を起源とする三越伊勢丹グループでは、養蚕農家や国産絹糸の維持を目的に、養蚕から製糸、製織まですべて国内生産にこだわった純国産絹を、10年以上もの歳月をかけて開発しました。
お客さまから寄せられた「シワになりにくい着物が欲しい」「昔の着物の方がしなやかな肌触りで風合いが良かった」という声にお応えして、蚕の品種改良を行うところからスタート。通常の蚕が吐き出すものより80%も細い糸からつくり出された絹糸は、養蚕農家、製糸製織小売、お客さまの三者が煌き続けることを願い「三煌」と命名しました。優雅な光沢としなやかな質感、そして発色の良さが特徴の生地は、色無地から多色使いの振袖まで、さまざまな着物に用いられています。日本の絹文化を次世代につなぐため、今後は洋服など幅広いアイテムへの活用を目指しています。
2023年、三越は創業350年を迎えます。長い歴史を経て、今もなお続く三越伊勢丹呉服部の存在意義とは、きものにまつわる知識を後世に正しく残していくこと、また世代をつないでいくことだと考えています。もちろん産地振興の一助となる伝統産業を残していくことも大切な課題ですが、家族の中で代々受け継がれていたきもののルールやマナーなどに関するお問い合わせが、年々増加しているのが現状です。きものはお手入れをすれば、世代を超えて着られると言われています。そこで経験豊富なスタイリストがご相談を承り、お客さまの疑問を解決することが、呉服に携わる我々の重要な役割と捉えています。
これまでも、きもののクリーニングやメンテナンスを専門にしたカウンターを設け、拡大し、お客さまのご要望にお応えしてまいりました。最近では価値の分かる人に譲りたい、オークションに出したい、保管する場所を探してほしいなどのお声も多くいただいています。今後はお客さまの財産整理のお手伝いをするなど、サービスを幅広く拡大する必要がありそうです。呉服文化の継承とともに、きものが何代にも受け継がれ、美しく着られるお手伝いをすることで、持続可能な社会の貢献につなげていきます。
三越伊勢丹グループの文化展の歴史は、1904年に三越日本橋本店で開催された「光琳遺品展覧会」に始まります。この展覧会は、モノを売るだけにとどまらず、日本の文化、特に芸術を誰もが自由に楽しむことを近代百貨店の使命の一つに据えた、日本独自の文化の創造を目指したものでした。
現在、当社グループでは、「春の院展」と「日本伝統工芸展」を中心に文化展を実施しています。「春の院展」は、1945年11月に三越日本橋本店にて開催された「第一回日本美術院小品展」に始まり、途中、現在の名称に代わり、2022年には77回を迎えました。2022年度は、三越日本橋本店を皮切りに、札幌三越、福岡三越、新潟伊勢丹で開催しました。一方、「日本伝統工芸展」は、1954年に第1回を三越日本橋本店で開催して以来、2022年には69回を迎え、三越日本橋本店を皮切りに、星ヶ丘三越、札幌三越でも開催しました。2023年1~2月には、仙台三越、福岡三越で開催します。
また、三越伊勢丹の各店では、日本工芸会の諸部会の展覧会(陶芸・染織・漆芸・木竹工・人形・諸工芸のみ)も開催しています。
日本が世界に誇る文化財を守り、未来へと守り継ぐことを目的に、パッケージに国立博物館・美術館の所蔵作品を使用した日本の美意識あふれる特別なギフトを、中元、歳暮の商品として販売しています。商品代金の一部は、その作品を所蔵している博物館・美術館の運営に役立てられます。
コラボレーション先:
● 東京国立博物館(2016年~)
● 京都・奈良・九州国立博物館(2018年~)
● 東京国立近代美術館(2020年~)
三越伊勢丹グループでは美術展や文化展のほかに、人と地域をつなぐ取り組みの一環として、物産展や外国展も開催。人の想いや感性に触れ合える場所づくりのほか、各地域の文化や伝統、名産品まで幅広くご紹介しています。物産展の歴史はとても古く、1917年に日本で初めて開催した「東北名産品陳列会」を皮切りに、現在まで70回以上も続いている「全国銘菓展」や「洛趣展」など、日本中から選りすぐりの食や工芸などを集めた催事を数多く行っています。また、1956年には戦後初の外国展として、流行の中心地からモードなアイテムをご紹介する「パリー展」を開催。その後1965年にスタートした「英国展」など、どれも長きにわたりお客さまから愛され、より豊かなライフスタイルの実現に貢献しています。
“伝統と伝承”をテーマにした「日本の職人 匠の技展」※も、20年以上続く人気催事です。先人たちの技を継承しながら、歴史あるものを、現代の暮らしに馴染むよう昇華させることを推進しています。同時に、若い世代のお客さまにもご覧いただくことで、伝統工芸の持続的な発展にもつなげています。
※「日本の職人 匠の技展」のWEBサイトでは、日本各地の伝統工芸を今に伝える、職人の方々へのインタビュー記事【工房を訪ねて】をアーカイブ形式で紹介しています。
伝統や文化を振興・継承していくためには、次世代の支援や育成が欠かせません。伝統や文化のこれからの担い手となる、次世代の支援と育成についてご紹介いたします。
日本画壇の発表の場として歴史を重ねてきた三越日本橋本店を舞台に、いま一度“日本画とは何か?”を問い直し、未来へ向けた日本画の在り方そのものを見つめる「三越伊勢丹・千住博日本画大賞」。2020年にスタートし、2022年8月に2回目を開催しました。従来の画材である岩絵具を必須としない、新しい日本画に挑戦する作品を公募。世界的アーティスト千住博氏を審査委員長に迎え、厳正な審査を通過した20点は、日本画壇を代表する横山大観、平山郁夫などが作品を展覧した、三越日本橋本店美術特選画廊にて紹介されました。今後も三越伊勢丹では、将来の美術界で活躍する作家を発掘し、広く発信していきます。
文化・芸術の振興に長年取り組んできた三越伊勢丹グループは、今後100年先にも受け継がれていくような、本物のアートを取り扱っていくことが使命であると考えています。三越日本橋本店では、既存ギャラリーでご紹介している絵画や彫刻、陶芸などに加えて、より一層日本の美術を幅広く網羅するため、現代アートにフォーカスした「三越コンテンポラリーギャラリー」を2020年3月に新設しました。先駆者たちが切り拓いてきた美術の歴史へ敬意を払いつつ、時代に即した新しい価値観をつくり出す現代アートを発信しています。
「三越コンテンポラリーギャラリー」では、東京藝術大学などを卒業した現代アートに秀でた社員も活躍。自らもアーティスト活動をしていることを活かし、作家の想いが伝わる環境づくりや、作品に込められたコンセプトをお客さまにお伝えして興味を持っていただくなど、さらなるアート市場の活性化に貢献しています。
約120年もの歴史を持つ三越日本橋本店の美術画廊は、オーセンティックなアートをご紹介し続け、多くの方から支持されてきた実績があります。私は東京藝術大学のデザイン科を卒業後、画廊で美術商として働いていたのですが、より幅広いアートに触れたく、2018年に三越伊勢丹へ入社しました。また、ワインエキスパートという資格を取得しており、いつかアート×ワインの企画をしたいと考えています。異なるカテゴリーの商品を一緒にご紹介できるという点も、三越伊勢丹に転職を決めた理由の一つです。
2020年3月にオープンした「三越コンテンポラリーギャラリー」では、時代に即した新しい価値観をつくり出す、現代アートをご紹介しています。私以外にもアートを学んだ社員が在籍しており、独自のネットワークで注目の若手現代作家によるグループ展を開催。次世代を担うアーティストの支援にも取り組んでいます。私たちが大事にしているのは、作家とお客さま双方にベストな環境づくりをすること。そのために、会期前には作家と対話をし、制作背景から展示の希望まで、リアルな声を引き出すようにしています。また、タイトルなどのキャプションを貼らないのも特徴。お客さまにはまず、情報の無いまっさらな状態で、作品を感じていただいています。オープンから2年が経ちましたが、バイヤーや私たちが築いてきたネットワークを駆使し、他ギャラリーではでいないような展覧会も実現。コレクターやインフルエンサーの方に「三越日本橋本店は、伝統的な日本画から世界にも通じる前衛のアートまで、すばらしい展示に挑んでいますね」とお褒めの言葉をいただきました。また、お顔の見えるお客さまには1対1でご案内もしているのですが、お好みとマッチした作品をご紹介することができ、とても喜んでいただいています。今後ますますデジタルでの発信も強化し、これまで三越日本橋本店にご来店したことのない方々にも興味を持ってもらえるよう、高感度上質な現代アートをご提案していきます。
•現在、国内外から注目を集める日本のマンガ・アニメーション・映画・ゲーム。これらは文化芸術基本法 第9条で「メディア芸術」として定義されています。
三越伊勢丹グループでは、これまで文化振興やクリエイター育成に取り組んできた実績を活かし、「三越伊勢丹メディア芸術」を新たに事業化しました。メディア芸術の優れた作品やクリエイターと協業し、様々な企画を実施しています。
•2022年8月には、劇場版『ONE PIECE FILM RED』とコラボレーションした『ONE PIECE FILM RED』× 伊勢丹 を、伊勢丹新宿本店と三越伊勢丹オンラインストア、オンラインギフトサイト「ムードマーク バイ イセタン」で開催しました。これからも、メディア芸術の魅力やオリジナル企画をご紹介していきます。
三越伊勢丹グループでは、産学協同による“未来のクリエーター育成”も支援しています。
2022年で7回目を迎える東京デザイン専門学校との取り組みでは、体験型実学教育の場として伊勢丹新宿本店を提供しました。今回は“ハロウィン”をテーマに、学生自らがデザインコンセプトやプランニング、プレゼンテーションを実践。施工会社など多くの人たちと関わりながら、自分たちのアイデアが立体的につくられていく様子を学びました。できあがった作品は、2022年9月28日~10月31日の期間、伊勢丹新宿店本館地下1階ショーウインドー10面にディスプレイ。学生ならではの独創的な視点でつくられたストーリー仕立ての演出は、会期中多くのお客さまから注目を集めていました。
今回のプロジェクトに参加した学生からは「皆と同じ目標に向かって協力する、かけがえのない時間を過ごすことができた」「社会と関わる貴重な経験ができた」と喜びの声をいただいています。今後も次世代のクリエーターに向けて、ゼロからものづくりをする大変さや、試行錯誤しながらより良いものをつくり上げる楽しさを経験できる場の提供をしていきます。
“世界最高のファッションミュージアム”を目指し、2013年に大規模リモデルを行った伊勢丹新宿本店では、未来のクリエーターを育成すべく、産学連携にも力を入れています。
コロナ禍で取り組みを一時中止していましたが、学校側と協議の結果、2022年から再開することになりました。4月より、東京デザイン専門学校の学生と“ハロウィン”のショーウインドー制作をスタート。通常の授業はもちろん、課題や就職活動、さらに日常生活に多くの制約があるなか、半年間計10回の活動に参加するのは、非常にハードだったと思います。そんななか、何度も企画のプレゼンテーションをしてくれました。グループ全員でナレーションのように台本を読んだり、オリジナルの絵本をつくったりと、学生ならではの固定観念にとらわれない発表の仕方に、私たちもとても刺激を受けました。選ばれたデザインが、プロのイラストレーターや施工会社によって形になる様子や、実際に完成した現場を見た時、学生たちの感動もひとしおだったようです。コロナ禍で制約を受け、我慢を強いられている学生たちに、活躍の場を提供することができ、良かったと思います。
プロジェクトに参加する生徒の半数が、伊勢丹新宿本店に来店したことが無いのが現状で、若者の百貨店離れが顕著であると実感しています。活動を続けているなかで、三越伊勢丹を知ってもらうことはもちろんですが、学生時代プロジェクトに参加した方たちが、今度は仕事のパートナーとして一緒に働く機会もできており、とてもうれしく思っています。産学連携の取り組みは、まずは若者たちに三越伊勢丹を知ってもらうきっかけの一つとして、重要な機会だと考えています。そして、次世代支援・育成の取り組みを継続的にすることで、百貨店・ファッション業界を盛り上げ、さらに未来へつなげていくことを目指しています。
「MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭」は、お客さまに身近な環境でアートを感じていただくとともに、若手のアーティストに発表の場を提供する、次世代育成につながる取り組みです。2020年8月で6回目の開催となりました。
「I LOVE YOU」をテーマに、日本画・油画・彫刻・工芸・デザイン・建築・先端芸術表現・美術教育・文化財保存学の9部門の現役教授陣がご推薦の、多様性社会に生きるアーティストとして若き才能※が表現した作品をご紹介しました。
※40歳未満の大学院在学生および卒業生約90名
文化学園大学・文化学園大学短期大学部の学生を対象に、2021年7月に「第一回 ユニフォームデザイン画コンペティション」を開催しました。このコンペティションでは、「未来を叶えるサステナブルユニフォーム あなたのデザインが社会を変える!」をテーマに、ユニフォームを着る業種や、着る人の性別を問わない、未来に向けたユニフォームのデザインを募集しました(一人3デザインまで応募可)。1カ月と限られた応募期間にも関わらず、99名104デザインもの応募がありました。
今後も引き続き、創造力溢れる学生向けのコンペティションを開催する予定です。
ここ数年でデジタル化が急速に進みました。三越伊勢丹グループにおいても、食品定期宅配サービスの「ISETAN DOOR」や化粧品ECサイトの「meeco」などデジタル事業に加え、オンライン上でのコミュニケーションも進化しています。
地域店舗と首都圏店舗をオンラインでつなぐ「リモート接客」とメタバースを活用したコミュニケーションアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」についてご紹介します。
地域店舗では、三越日本橋本店・伊勢丹新宿本店ならではの品揃えを活用し、店舗に無い商品をお取り寄せするデジタルサービスが根づき始めています。
2022年4月にオープンした高松三越デジタルサロンでは、お客さまからの幅広いご要望・ご相談にお応えするため、個々のニーズに合わせ、三越日本橋本店とリモートでつなぎ接客する取り組みが広がっています。
お客さまをデジタルサロンの特別な個室へご案内し、親交の深い担当セールスがそばで寄り添いながら、三越日本橋本店の商品をお見せし、そのカテゴリーに詳しい専門のスタイリストから接客を受けることができます。
リモート接客のスタイルは様々で、例えば、日本橋にいるスタイリストがカメラを持ってリアルタイムで店内を歩き回る映像と共に接客することで、臨場感のあるお買物体験をご提供できます。呉服のお仕立てやお家のリフォームに合わせた家具のコーディネート等、イメージを具現化するのに何度も接客を重ねる必要がある場合も、リモートであれば、専門性の高い接客を繰り返しご提供することができます。これまでは、商品のある店舗へ来店しなければ不可能でしたが、距離と時間を超えてつながることのできるリモート接客を活用することで、お客さまのご期待にお応えできることが増えました。今後もこのような特別なお客さま体験を提供できるようにお客さまのニーズに合わせて取り組みを拡大していきます。
「REV WORLDS」は、三越伊勢丹グループによるメタバースを活用した仮想都市コミュニケーションアプリです。
お客さま(ユーザー)は、アバターを操作して、新宿をイメージした仮想都市を散策し、仮想伊勢丹新宿本店や企業ブースでショッピングやコンテンツを楽しめます。家族や友人、他のユーザーとボイスやチャット機能を使ってコミュニケーションを楽しむなど、「人とのつながり」を体験しながら、街や店内で思わぬ商品との出会いや新しいきっかけを感じることができます。
ローンチしてから1年以上が経ち、さまざまな企業・ブランドの出店やイベントを開催したほか、アバター着せ替えアイテムは約1,000点実装、2022年7月には自分の部屋を好みにコーディネートできる「マイルーム機能」をスタートするなど、仮想空間上でもより自分らしい生活を楽しめる機能を拡充してきました。
リアルでもデジタル上でも、より豊かなライフスタイルを提供できるよう、他社コンテンツを誘致しながら、サービスを向上させていく予定です。