三越伊勢丹グループでは、経営計画を達成する上で最も大切なのは「人」だと考えています。全従業員が同じ目標に向かって進むために、「従業員満足度(働きがい・働きやすさ)」を最も重要な土台であると位置づけています。
「従業員満足度の向上」に向けたすべての取り組みのベースとなるのは“コミュニケーション”です。
下記のようなあらゆる関係性における対話・議論を進め、一体感を醸成していきます。
「トップマネジメント層と従業員との対話」
▼ 経営方針の浸透
「ミドルマネジメント層とメンバーとの対話」
▼ 一人一人の心理的安全性向上
「労使コミュニケーション」
▼ 働き方と人事制度の質向上
経営方針の浸透を図るため、トップマネジメント層と従業員の対話を実施しています。「経営方針を理解し行動につなげるキッカケとする」「参加者同士が課題感を共有する」といった意識変革・行動変容へとつなげることが目的です。
より多くの対話が実施できるよう、2段階に分けて実施しています。
● 社長 × 管理職
(ステージA(部長職)・ステージB(課長・係長級))
● 役員 × 一般職(ステージC・メイト社員)
なお、2021年度は社長との対話を計30回程度、役員との対話を計230回程度を予定しています。
上司と部下が定期的に1対1で対話(1on1)を行うことにより、「個性・感情の理解」や「自律的に考え行動できる人財の育成」につなげることを目的としています。この対話を通じて、一人一人の心理的安全性を向上させることで「働きがい」や「働きやすさ」にもつなげていきます。
2019年度から、(株)三越伊勢丹および三越伊勢丹ホールディングスのステージA(部長職)に対して1on1実施の目的や意義を正しく理解し、メンバーの話を聞くスキルを身につけるセミナーを開催してきました。
2021年度までに、部下を持つステージA(部長職)全員(約200名)と、ステージB(課長・係長級)のうち部下を持つ者(約700名)に教育を実施予定です。
2022年度以降はグループ全体への拡大を図っていきます。
会社は「三越伊勢丹グループ労働組合」を唯一の正当な交渉団体として承認し、グループ各社の直接雇用従業員は、原則として組合員でなければならないと定めています。グループ企業37社と労働組合37支部・分会が労使関係や人事・労働条件を規定する労働協約を締結しています。
当社グループにおいては、人事賃金制度や働き方・労働時間制度などに関する労使協議を、いわゆる春闘などにおいて短期集中で交渉するのではなく、通年で継続的に行っています。
また、グループ経営トップと組合本部幹部、あるいは各社トップと組合支部幹部による懇話会も定期的に開催し、情報共有を行うことで、相互理解と信頼・協力関係のもとに、円滑な事業運営と働く環境の維持向上を図っています。
労使関係は相互に協力的で、良好です。
図1
三越伊勢丹グループでは「三越伊勢丹グループ労働組合(以下IMGU)」を設置し、三越伊勢丹グループ企業のカウンターパートナーとして、グループ企業37社と労働組合37支部・分会が労使関係や人事・労働条件を規定する労働協約を締結しています。
目的:わたしたちの幸せを創造し続けること
安心して働くための雇用の確保と労働条件の維持向上
企業の永続的な発展にむけたチェックとサポート
かけがえのない豊かな環境と安心して暮らせる社会の実現
民主的な合意形成を行ない、全員で責任をもち実践する
先進的なビジョンと広い視野をもち、常に挑戦し続ける
すべての働く仲間と連帯し、 一人ひとりが持つ多様性を全体の力にする
対等な労使関係を維持し、 誠意ある対話による創造的な結論をめざす
高い倫理観を持つとともに、 よりよい未来のための社会的責務を果たす
「あらゆる立場・境遇の人々が、自身の存在意義と幸せを実感しながら活躍できる社会」に向けた取り組みは、企業の社会的な責任です。
また、不確実性の時代に多様な人財を活用し、イノベーション創出を促進することは、企業成長に直結すると考えています。
三越伊勢丹グループでは、性別や雇用形態等にかかわらず、すべての従業員が活躍できる基盤の構築を進め、多様な人財が能力を発揮する環境づくりに取り組んでいます。
多様な価値観を尊重し、お互いの違いに価値を認めて、個々人が最大限に能力を発揮できる組織と環境づくりにより、従業員満足度の向上を通じた会社戦略の実現を推し進めています。
当社グループは、従業員の約7割が女性です。
今後の企業成長(戦略実現、イノベーション推進)においても、人口動態の変化においても、女性の活躍は不可欠です。今後も、制度・サポートの充実に留まらず、組織風土や個々人の意識醸成を進めることで、様々なライフステージの女性が働きがいと働きやすさを実感しながら活躍できる環境をつくっていきます。
性別にかかわらず活躍できる環境づくりを行うことで、女性管理職比率は年々増加しています。女性活躍推進の基盤として、育児関連制度を充実させながら、女性が出産後も継続して働き続けられる環境整備を進めており、子供を持つ女性管理職も多く在籍しています。その結果、女性の平均勤続年数も年々長くなっています。
女性社員平均勤続年数 ※(株)三越伊勢丹
ステージB(課長職・係長級)への昇格アセスメントにおいても、2020年度は受験者数・合格者数ともに男性を上回り、合格率も男性と同水準です(20年度合格者の女性シェア=55%)。
2021年度の在籍人数 ※グループ計
2014年4月に初めて女性役員が誕生しました。それ以降、当社グループでは継続的に社内外から女性役員を登用しています。
2021年度の女性役員在籍人数
多様な価値観を尊重し、採用基準を設けています。その結果として、例年新卒社員(総合職)の約半数あるいはそれ以上を女性が占めています。
新卒(総合職)採用実績人数 ※(株)三越伊勢丹
◆ 経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」(2015年)
◆ 日本生産性本部「女性活躍パワーアップ大賞」
優秀賞受賞(2016年)
◆ 内閣府 女性が輝く先進企業2018
「内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰」受賞
◆ くるみん(2014年)
◆ えるぼし認定(2016年)
※在籍所属は2021年11月時点のものです。
1人目の子供を産んだ時に、突然自分の人生に衝撃が走りました。それは、これまでできていた時間のコントロールができないという現実です。想像を絶する生活が待っていました。そして、そのままの状態で仕事に復帰し、今までのようには働けない現実を突きつけられてしまいました。子供の突然の病気による保育園の呼び出し等、常に不安定な状態で働かないといけない。両親は、遠方のため、頼ることもできず、夫も仕事で帰りが遅い状況。いつもそのような状態にびくびくしながら、まず、周りに迷惑をかけないことだけを第一に考えて、働いていました。会社には、時短勤務など育児制度が沢山あり、最大限利用することもできました。周囲も育児ママが無理しないように、いつもサポートしてくれていました。
しかしながら、いつしか、働いていく中で、これが自分の望んでいた人生なのか、と感じるようになりました。「誰かに守ってもらう人生を歩み続けたいのか?」「私が出せる価値は、安定した環境でしか生みだせないものだったのか?」そう考えていくうちに、自分に自信がもてなくなってきてしまいました。それと同時に女性だからこんな思いをしないといけないのか、と悔しい気持ちもありました。そして、会社の上司に相談し、自分の悔しい気持ちやもどかしさを伝えました。
上司は答えてくれました。「自分は男だから分からない部分があるけど、竹前さんの価値や竹前さんらしさは、働ける時間に関係ないように実現できるんじゃないかな」。その時は、そんなこと本当にできるのか、と半信半疑でしたが、自分は、“働く時間”の長い短いだけで物事を見すぎていたかもしれないと思い、仕事に対する見方を変えて、自分らしい価値を追求するようにしました。人と同じやり方ではなく、これまでの延長戦上で行動しないことを徹底しました。
考え方を変えることで、守ってもらうだけでなく、自分らしい価値を出すため、挑戦しようと思えるようになりました。例えば、エンジニアと現場をコミュニケーションでつなぐことを重視する、これまで自分も気が付かなかった、自分の価値・スタイルを大切にした新しい働き方です。
そして、上司に「新規プロジェクトのリーダーに挑戦させてほしい」と相談しました。上司は、しっかり背中を押してくれました。その後も不安定な育児はつきものなので、子供が風邪をひいた時など、陰ながら助けてくれたり、自分が挑戦するための環境を作ってくれました。メンバーは、いつの間にか私の働く時間を気にしなくなり、私自身の存在に価値を感じてくれるようになりました。
考え方を変え、行動することで共感してくれる仲間もでき始めました。10年たった今でも、いつも助けてくれる仲間をとても信頼し、感謝しています。上司が背中を押してくれたように、私自身の価値が時間で左右されないような働き方ができるようになりました。そして、自分の夢を更に形にするため、ステージB(課長・係長級)試験を受験し、昇格することもできました。性別に限らず、人間には様々な価値観があります。育児中の方は、確かに数多くの制約があるのも事実です。しかし、みんな同じ価値観なわけではありません。それぞれの環境、それぞれの人の価値観の中で、無理ができない時や挑戦したい時があるはずです。新しい自分を発見した時、それは私自身の大きな岐路となり自分らしく生きていくために、会社と仲間はチャンスを与えてくれました。
そして、3年前には2人目が生まれました。自分らしさを見つけていた私は、もう不安はありませんでした。前回の出産とは違い、復帰も楽しみでした。今までで一番大きな挑戦もさせてもらい、これからも(株)三越伊勢丹が上質なサービスをご提供するためのスピードに耐えられるIT基盤のリリースを実現できました。前例のない挑戦でしたが、業界紙で特別賞を取るほどに反響がありました。
私がこんな風にいつも楽しく仕事をしているので、我が家の子供たちは仕事は楽しいものだと思っています。子供たちは「いいなぁ、わたしもはやく仕事したい!」といつも言ってくれます。子供ができると、仕事とプライベートをきれいに分けることが難しくなると思います。それでも、自分を犠牲にすることなく、自分らしく仕事ができる環境にいつも感謝しながら、仕事を楽しみ、人生を楽しむことができています。これからも自分で限界をつくることなく、常に挑戦を続けていきます。
三越伊勢丹グループでは、「障がい者も社会経済を構成する一員として職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとする」という障がい者雇用の理念を引き続き実践していきます。
障がい者雇用率 ※(株)三越伊勢丹および首都圏主要グループ会社の合計
百貨店店頭での接客には、多くの付帯業務が発生します。ギフト用ラッピングの袋づくりや箱の組み立て、リボンシール貼り、伝票へのショップスタンプの押印など多岐にわたる付帯業務は、スタイリスト(販売員)が接客に専念する時間を圧迫してきました。
そこで、手作業による単純反復作業に高度な能力を発揮する知的障がい者が主体となって、これらの業務を担う特例子会社(株)伊勢丹ソレイユ※を2004年に設立しました。現在、企業就労は難しいと言われている重度知的障がい者80人を中心に、91人の障がい者が在籍しています。店頭では1カ月約4,000〜4,500時間相当の業務削減となり、大切な販売支援戦力となっています。
※ 同社は三越と伊勢丹の統合に伴い、2011年3月に(株)三越伊勢丹ソレイユとなりました。
また、一人の従業員が複数の業務を担えるよう教育体制を強化しています。その結果、従業員の能力・特性に応じて、日によって様々な業務を行うことが可能となり、一人一人の成長促進(働きがいの向上)とともに、生産性の向上(繁閑に応じた対応)にも貢献しています。
三越伊勢丹ソレイユでは、重度知的障がい者は反復作業や人の手でしかできない作業を最も上手く遂行できる人財であると捉え、当社グループの“高感度上質”戦略において「なくてはならない存在」として活躍の場のさらなる拡大を目指すとともに、百貨店以外のグループ各社、および当社グループ外の新規業務獲得を目指していきます。
2017年10月、三越伊勢丹ソレイユは障がい者雇用において特色ある優れた取り組みが評価され、東京都産業労働局が主催する「障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞し、東京都知事より表彰されました。
障がい者の能力開発や処遇改善を積極的に行う障害者法定雇用率を達成している都内企業を表彰する東京都独自の制度です。障がい者が職場で活躍できる環境整備の促進、障がい者雇用に関する周知啓発を目的にしています。
2017年12月の「障害者週間(内閣府)」に合わせ、天皇皇后両陛下(当時)が同社を行幸啓されました。両陛下は障がいのある従業員に話しかけるなど、ご熱心に仕事ぶりをご覧になりました。
心のバリアフリーに対する社会的機運の醸成を図るため、従業員に対する意識啓発等に取り組む企業等を東京都が「心のバリアフリー」サポート企業としています。三越伊勢丹ホールディングスは、2018年度に登録されました。
2004年、数名の障がい者従業員から出発した三越伊勢丹ソレイユは、2005年、障がい者雇用における特例子会社認定を受けました。現在、91名の障がい者が在籍しています。そのうち約88%にあたる80名が重度知的障がい者ですが、様々な工夫により会社の貴重な戦力としてその力を発揮しています。
主な業務は、百貨店で使用するギフトリボンやシール作りなど100種類以上に及びます。会社設立以来受け継がれてきた作成マニュアルの他、障がい者従業員自らが作成した自分用の「仕事ノート」で常に手順を確認しながら作業を進めています。
作業は各々責任をもって行い、できあがったら支援スタッフ(指導員)に自ら報告に行きます。報告を受ける際は、「きれいにできました」「上手にできていますよ」などまずは良い点を褒めて、やる気を引き出すことを心がけています。従業員は障がいがあることで辛い思いをしたり、同情を受けることが多く、褒められると心からの笑顔で応えてくれます。
※在籍所属は2021年11月時点のものです。
また、失敗をした時に「必ず自分で支援スタッフに報告をする」ということを強く指導しています。当社の製品は、三越や伊勢丹に来店されたお客さまにお渡しするものですから、不具合なものを納品することは許されません。そのためには、「失敗することは悪いことではない、失敗を隠すほうが悪いことである」という意識づけが必要と考え、失敗報告を受ける際には、失敗したことを叱ることはせず、まずは「失敗によく気づきました」「失敗をちゃんと報告できましたね」と褒めることを徹底しています。
ほとんどの支援スタッフは、(株)三越伊勢丹からの出向者およびOB・OGで、障がい者についての専門知識はありません。「障がい者にこんな作業はできないだろう」「障がい者に刃物を扱う業務は危なくてやらせられない」といった先入観なく接することができるため、一人一人の能力に勝手に限界を決めることなく、「どうやったら障がい者がこの作業を遂行することができるか」を絶えず考え、課題を解決しています。例えば、誰が作っても百貨店クオリティに耐えうる完成度の高い製品ができあがるように、支援スタッフが独自に治具(障がい者が業務を遂行するために使用する補助具)を考案・作成・改良する等の工夫を重ねています。また、障がい者が作業しやすい現場を整えることは、障がいのない者にとっても働きやすい環境となるため、障がい者への配慮や工夫が職場全体の改善にもつながっています。
当社には、特別支援学校新卒者から定年後再雇用された者まで、幅広い年齢層の従業員が在籍しており、そういった側面からもダイバーシティの進んだ環境であるといえます。
三越伊勢丹ソレイユでは、障がいのある従業員に対し、ともに働く仲間としての「配慮」には十分留意しますが、「特別扱い」はしません。当社では【三越伊勢丹ソレイユで働き続けるための10の問いかけ】を設定していますが、その一つに「障がい者であることに甘えていないか」というものがあります。これは「障がい者は甘えている」ということではなく、「障がいがあるからこの仕事はできない、できなくてもしょうがないとあきらめてはいないか」「どうしたらできるようになるか、その努力をしているか」という問いかけなのです。肢体不自由な従業員が、自分の横でリボン作りをしていた同僚の様子を見て、自分もリボンを作りたいと自ら治具を用意し、作業工程を工夫してリボン作りに挑戦しています。その姿こそが【10の問いかけ】に対する答えなのだと思います。
当社の障がい者従業員は、みな「ソレイユで働くことが本当に好き」と言ってくれます。2020年の緊急事態宣言発令期間中(4月・5月)、当社も一時休業を余儀なくされました。その間、「なんでソレイユに行けないの?」「早くソレイユで仕事がしたい」という声が多く寄せられました。ソレイユが、障がいのある従業員にとって働きがいがある会社となりつつあることを、大変嬉しく思います。
コロナで社会は随分と変わりました。当社で受ける業務も今後変わってくると思いますが、これからも従業員が社会の一員として誇りをもって働き続けられる会社でありたいと思います。
1991年、鹿児島県大崎町にて知的障がい者授産施設・社会福祉法人 愛生会を運営していた新平重人氏と岩田屋(現・(株)岩田屋三越)の社長、中牟田健一(当時)の間で障がい者に就労の場を提供しようという思いで(株)愛生が設立されました。のち、1998年には(株)岩田屋の特例子会社に認定され、現在17名の障がい者が在籍しています※。
愛生の主な業務は、岩田屋、福岡三越両店で使われる用度品やブランドショップの手つき紙袋の製作と野菜づくりです。愛生は雇用確保と社会参加促進のために、高付加価値な農業への取り組みを創業以来続けています。焼酎用のサツマイモのほか、地元農家の方と協力して育てた野菜の一部を2021年より岩田屋本店の食品売場で販売しています。ここでつくられた野菜は、安全で高品質な農産品の一貫した生産管理体制が構築できていることを評価され、世界120カ国以上で運用される国際標準のグローバルギャップ認証を鹿児島県内の障害福祉事業所として初めて取得しました。
また、人の交流もあり、愛生にて年に一回開催される「大運動会」には(株)岩田屋三越の新入社員がサポートとして参加、また夏に開催される「カブトムシ相撲大会」の応援にも有志で駆けつけています。
このような機会に愛生の方々と直接触れ合うことは、従業員の意識改革、ダイバーシティの理解が進むきっかけになっています。
※(株)岩田屋三越の障がい者雇用率は3.2%(2021年8月現在)
G.A.P.(ギャップ)とは、Good(適正な)、Agricultural(農業の)、Practices(実践)のことです。GLOBAL G.A.P.(グローバルギャップ)認証とは、食品安全、労働環境、環境保全に配慮した「持続的な生産活動」を実践する企業に与えられる国際基準の認証です。オリンピックやパラリンピックの選手村の食事など、国際的なイベント等で使われる作物はすべてこの認証を受けたものでなければなりません。
仙台三越では、障がい者雇用職場改善の取り組みが評価され、2018年度より仙台市から「障害者雇用優良事業者」に認定されています。また、2019年には、厚生労働省および独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構より「障害者雇用職場改善好事例 優秀賞(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞)」を、2020年には「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞」を受賞しています。
支援学校との連携や、新たな採用枠の創設など、ともに社会を構成する障がい者と企業が、それぞれにメリットを持てるような取り組みを積極的に作っていることが評価されています。
仙台三越では、現在12名がそれぞれの障がい特性に応じた職務および勤務場所で、健常者の従業員とともに勤務し活躍しています。
少子高齢化が進行する我が国においては、シニア人財の活用は必要不可欠です。三越伊勢丹グループでは、再雇用ありきではなく、従業員が定年後に自身のライフスタイルに合わせて最適な第二の人生を送れるよう支援しています。
定年後のライフスタイルの選択肢の1つとして、定年後の再雇用制度(エルダースタッフ制度)を導入しています。これは、原則として定年後再雇用希望者全員が65歳まで継続勤務が可能な制度です。現在は定年退職者の約8割が定年後も勤務しており、定年前の役職は次世代に譲り、豊かな経験や知識を活かして現場における後輩の指導・育成を担っています。
この取り組みにより、経験豊かな60歳以上の従業員が活躍する機会を広げるとともに、その豊かな経験やスキルを活かして企業成長につなげながら、(株)三越伊勢丹らしさの継承を図っています。
◆ 40歳、50歳時にキャリア・マネーを考えるセミナーを実施
◆ 59歳時に人事による定年に向けての各種説明実施
◆ 再就職支援会社による支援サービスを18カ月間利用可能
◆ 支援会社を4社の中から自由に選択
◆ 在職中から再就職活動が可能、定年とともに新たな就業開始可能
定年後再雇用者数・再雇用率 ※(株)三越伊勢丹の社員・メイト社員
当社グループの一人一人にとっての日々の行動の基準である「三越伊勢丹グループ企業倫理行動基準」、および「三越伊勢丹グループ人権方針」において、人権・多様性の尊重、性別・性的志向による差別の禁止を明文化しています。
個々人が持つ個性と能力を十分に発揮できる環境づくりのため、また従業員だけでなくすべてのステークホルダーにおける多様性を実現させるために、LGBTQ+についての取り組みを積極的に進めていきます。
ユニバーサルマナーハンドブック
三越伊勢丹グループでは人権・国籍・性別・宗教・年齢・障がい等に関わらず、あらゆる人々が活躍できる「ユニバーサル社会」の実現に向け、多様な人々や社会のニーズを的確に把握し、適切な対応を図ることをめざしています。
商品・サービス・店舗環境等における安全・安心・高い利便性でお応えするにとどまらず、お客さま一人ひとりのきめ細かなニーズに寄り添うことで三越伊勢丹の新たな付加価値を生み出すことにつながると考えています。
また「三越伊勢丹グループ人権方針」では、多様な個性を尊重し、人種・民族・国籍・信条・宗教・性別・性的指向・出身地・年齢・疾病・障がい・雇用形態等による差別や、個人の尊厳を傷つける行為は行わないことを徹底しています。
三越伊勢丹グループでは、ユニバーサルマナーが求められる理由や学ぶ理由を知り、障がいのある方々、高齢の方々に対する理解を深めるため、2018年3月に三越伊勢丹グループオリジナルの「ユニバーサルマナーハンドブック(基本編・応用編)」を策定し従業員で共有しています。ここでは概念、基礎知識、対応マナーの解説のほか、応用編では、現場ノウハウの集積(マニュアル化)で、カード払いの代筆等、現場で生じえる様々なケースへの実践例が示されており、現場における顧客サービスの均一化はもちろん、従業員研修等で活用しています。さらに日本百貨店協会と連携して、全国の百貨店へと横展開することで、サービスの一層の向上へとつなげています。2019年度から2020年8月末までに、国内グループ会社従業員約4,400名がEラーニングを受講しました。
また2017年度より民間資格であるユニバーサルマナー検定の取得を推奨し、3級352名、2級15名が取得しています。1980年代より、社内資格として手話講座全15回を自主開催し、合格者に手話バッジを授与。計228名が手話バッジ保有者として活躍しています。
基幹店舗では、アクセシビリティの向上に向け以下の設備を整えています。
ユニバーサル対応施設(伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店・三越銀座店)
当社グループでは、求める人財像に沿って国籍にかかわらず採用しています。新卒採用実績としては、過去6年で59名の外国人採用を行っており、今後も継続する予定です。
新しい発想・スキル・ノウハウを積極的に取り込むことによるイノベーション創出促進のため、グループ外からの人財の活躍も推進しています。また、当社グループからも別の組織に出向する制度もあります。(P.66参照)
グループ外人財の人数
三越伊勢丹グループでは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」および日本経済団体連合会の「企業行動憲章」に則り2018年11月に「三越伊勢丹グループ人権方針」を制定しました。これは、当社グループが、お客さま、従業員、お取組先、地域のコミュニティ等、企業活動を行う上で関わる様々なステークホルダーの人権を尊重するための方針です。
また、当社グループは、約120社が参加している東京人権啓発企業連絡会に加盟しています。人権に関する最新の課題と取り組みについて情報を収集しつつ、参加企業との情報交換を通じて、よりよい人権保護を実現しています。
ここ最近は特にハラスメントの撲滅に向けた取り組みに注力しています。グループの状況を確認しながら、従来型の研修や社内資料の作成・配布に加え、eラーニングなども組み合わせることで従業員の特性に応じた啓発活動に力を入れています。人権については、自社の従業員だけでなく、サプライチェーン全体の問題として、今後取り組みを強化していきます。
当社グループでは、職場の環境整備と生産性向上のための重要な課題の1つとして「しない、させない、みすごさない、Noハラスメント」を合言葉にハラスメントゼロに向けた取り組みを実施しています。
ハラスメントそのものの発生を防ぐため、予防教育に力を入れています。2020年には、グループ全社の社員・メイト社員を対象にeラーニングを実施し、のべ15,000人が受講しました。2021年には、受講対象を役員からフェロー社員(時給制社員)まで拡大しました。イントラネットでの定期的なハラスメント教育(年度内で11回を計画)を通じ、一層の撲滅に努めています。また、懲戒が科せられた案件については、その内容を社内で開示し、注意喚起も行っています。
ハラスメントの通報があった場合には、各社人事、三越伊勢丹ホールディングスリスクマネジメント室、労働組合が三位一体となって、真摯に対応しています。2020年6月1日に施行された改正労働施策総合推進法に則り、通報があった際には「迅速かつ適切な対応」ができるよう、通報窓口教育も実施しています。
ハラスメントの通報・対応フロー
人はあらゆる場面で、常に同等の能力を発揮できるとは限りません。特に“気持ち・マインド”の良し悪しは、個々の能力の発揮度合いを大きく左右します。企業においても、従業員のモチベーションは「個々のパフォーマンス」「組織の生産性」「離職率」など様々な形で影響を与えるため、企業が成長を続ける上で必要不可欠な要素です。
三越伊勢丹グループは、従業員が大きな“働きがい”を感じられるための様々な制度の充実を行い、従業員満足度の向上を目指しています。併せて、「学び」と「幅広い経験」を従業員が自律的に築き上げていくためのサポートや、それを促進させる風土醸成を推進しています。
三越伊勢丹グループでは、企業の持続的な成長に向けて、すべてのステークホルダーの心を動かしファンになっていただくために、社員一人一人が、
・商売人として利益を産み、ステークホルダーに還元していこうとする「経営マインド」を持ち、
・百貨を扱う小売グループの一員として、幅広い「学びとキャリア」を自律的に経験し、
・その経験から養われた幅広い「好奇心」、深い「想像力」、デジタルの力をフルに活用することで、
・三越伊勢丹グループならではの“特別な”価値を創造することにチャレンジしていく。
このような人財がやりがいと誇りを持つ組織づくりを目指していきます。
全従業員が自身の個性を大切にし、最大限の「力」を発揮できるキャリアパスこそが、個の育成・成長の重要な機会と捉え、計画的に推進していきます。その中で一人一人が期待される行動を上司との対話から明確にし、学びの成果と進捗を確認する評価制度と一体となった教育グランドデザイン【MANABIの森】を全従業員に提供し、やりがいと誇りに満ちたキャリア形成を後押ししていきます
人財育成方針の考え方の詳細については こちらをご覧ください。
当社グループは、企業の持続的な成長と事業戦略実現に向けて、従業員が自律的に学び、成長し、キャリアにつなげる環境と機会が整っている状態を目指しています。そのために、人財育成のグランドデザインである【MANABIの森】を策定し、教育の環境・機会を全従業員に提供しています。
これは、2015年より発刊している教育体系「MANABIの森」をベースに、企業の継続的成長に向けて、①全従業員にとって必要不可欠な教育と、②従業員一人一人が描くキャリアに合わせて自ら選べる教育、の両軸で構成されています。 大きく「キャリア教育」「基礎」「専門」「体験教育制度」の4つの分類に沿って、業務教育と能力開発のコンテンツを用意し、徹底すべきところを押さえつつ、従業員それぞれが描くキャリアに沿って自ら選び学べる機会をeラーニング含めて展開していきます。
私たちの目指す人財開発のあるべき姿
総合職として新卒入社した社員がまず経験するのが、百貨店事業の業務です。まずは百貨店事業において現場に身を置き、お客さまと直接接しながら、商売の基本を身につけます。
その後は本人の希望と適性に合わせて、継続して百貨店事業に携わるほか、百貨店事業以外の様々な事業へ配属されます。
また広い視野を持ちどの分野でも通用する人財になるために、希望者からの選抜で海外店舗や他企業へ1~2年程度研修出向するという選択肢も用意されています。
その後昇格試験を経て、最短で7年目にはマネジメント職を担います。
三越伊勢丹グループ内では獲得できない知見・スキルを、外部企業で一定期間経験を積むことで身につけ、帰任後に組織に還元することを目的にグループ外出向を実施しています。
官庁、団体、異業種企業など幅広い組織へ直近3年間で35社110名が出向しています。
ステージA(部長職)4年目以降の人財を対象に、将来のボードメンバーとなりうる人財プールを形成すべく、育成プログラム「ビジネスリーダープログラム」を実施しています。
このプログラムは、2013年度より「企業価値構想力」や「リーダーシップ」の養成を目的に開講しました。これまでに累計150名以上が参加し、その受講者の中から2021年度までに30名の役員が誕生しています。
また、配置においても、評価、面談、自己申告など多方面から本人の能力・適性を見定め、経営人財育成視点での戦略的な異動配置を実施しています。
当社グループでは、積極的に人財交流を促すことで、グループの一体感の醸成と次世代人財の育成を進めています。例えば、グループ百貨店の入社3年目以降の定期採用社員(選抜者)を、首都圏の商品統括部や店舗に配属し、1年間に及ぶ研修を実施しています。これは主に、リアル店舗でのお客さま一人一人とつながるCRM戦略の理解、デジタルリテラシーの向上、お取組先との関係づくりなど、首都圏ならではの知識やスキル、経験を習得する学びの機会を提供するものです。帰任後はそれらを活かし日々の業務に邁進しています。この研修を継続実施することでグループ全体のレベルアップと将来の優秀なマネジメント層の早期育成を目指しています。
表彰制度開始から10年を迎えるにあたり、2021年度には表彰内容の見直しを行います。好事例のノウハウを見える化し、人財育成につなげながら、従業員の自律性を高めモチベーション向上に寄与する表彰制度とする予定です。
三越伊勢丹グループではお客さまと接点を持つすべてのスタイリストの中から、お客さま・働く仲間・会社にとってなくてはならない存在として最も優秀なスタイリストを「エバーグリーン」として敬意を持って認定・表彰し、モチベーション向上を図っています。
「エバーグリーン」は2011年度に(株)三越伊勢丹でスタートし、翌2012年度よりグループ全社に拡大しました。対象となる約78,000人のスタイリストのなかから、9年間で累計573人が表彰されています。
当社グループでは、「高い専門知識をもって、お客さまのご期待を上回る感動レベルでお応えすることができる人財」を目指しています。商品領域ごとに求められる専門知識を社内資格と定め、体系的な知識・技術の習得を推進しています。
現在は「パーソナルカラーアナリスト」「シューカウンセラー」「マスターシューカウンセラー」「マタニティ・ベビー コンシェルジュ」「インテリアスペシャリスト」「モードフィッター」「手話」の社内資格を取得したスタイリストがスキルを活かしながら活躍しています。
社内資格者数 ※(株)三越伊勢丹計
三越伊勢丹グループでは、継続的な企業成長の実現のためには、「会社が戦略としてやるべきこと」と「従業員がやりたいこと」を最大限マッチングさせること(=適所適財)を重要視しています。適所適財はモチベーションの向上に直結するため、個人のパフォーマンス、ひいては組織・企業としての業績にも大きく影響すると考えます。
また、不確実性が増していく世の中において、企業も人も常に変化し続けることが求められているなか、個人の成長においては会社主導のキャリア開発ではなく、自らの責任でキャリアを選択していくことが必要であると考えます。
当社グループは「意欲ある人財の自律的なキャリア形成を支援する」という考え方のもと、1年に1度の「自己申告制度」や、社内で募集がかかった案件に自身の意思で自由に応募ができる「社内公募制度」、希望部署に自ら手を挙げる「チャレンジ申告制度」など、自律的なキャリア形成を支援する制度を整備しています。
今後は、今まで以上に個々の従業員の要望・スキルなどを深く収集するとともに、「パーソナルデータ」「パフォーマンスデータ」「キャリアデータ」を一元管理することで、「戦略」と「個々人の想いやスキル」を有機的にマッチさせた戦略的な人事配置を効率的に実行していきます。
当社グループで働く上での仕事や進路、異動等の希望や自己啓発、キャリアプランについての意見や意欲を自由に回答し、提出する制度です。
現在の仕事への満足度や、過去のキャリアの振り返り、保有スキルなどの情報も収集することで、より本人の要望や適性にマッチした異動配置に活用しています。今後は、従業員個々人の「想い」や「要望」をより深く抽出することで、人財育成や適所適財を通した「従業員満足度の向上」につなげ、企業としての戦略実現につなげます。
なお、この申告制度は毎年1回、社員、メイト社員(地域限定社員)、エルダースタッフを対象に実施しています。
中期経営計画の実現に向け、広く人財公募の必要性が高い案件の募集に対し、職務遂行に必要な能力や適性を持ち、意欲のある人財を公募する求人型の公募制度です。
なお、この申告制度は社員、メイト社員、エルダースタッフを対象に実施しています。
社内公募制度の実績
希望する役割や業務内容に対して、自分を活かすことのできる経験、能力を具体的に申告できる求職型の公募制度です。自己申告制度を一段階進め、ポジティブなキャリアチェンジを希望する人に人事担当との直接面接を実施します。
なお、この申告制度は入社7年目以降の社員を対象に実施しています。
制度の流れ
従業員が今よりもさらに専門的な知識を身につけ、能力を向上させるための制度・取り組みです。メイト社員にも正社員登用を通じて、キャリアアップの機会があります。
上司と部下の定期的な1対1の対話(1on1:P.57参照)に加え、2017年度からは、節目節目での評価に対するフィードバック面談にも力を入れています。評価の納得感を高め、今後強化すべきポイントを相互に明確にすることで、個人の目標が明確になり、自己成長意欲の向上につながっています。
三越伊勢丹グループでは、自己啓発のために一時的に休職できる制度やグループ外出向制度があります。
期間は、最短1カ月から最長2年です。2015年から計10名が制度利用しており、取得目的は、主に大学院進学です。
グループ内では経験できない知見を、外部企業で一定期間経験を積むことで身につけ、帰任後に組織に還元することを目的に、グループ外出向を実施しています。(P.66参照)
(株)三越伊勢丹のメイト社員(地域限定社員)は、全従業員約8,800名のうち約2,000名を占め、百貨店で最も重要な店頭販売で大きな役割を担っています。入社4年目以降を無期雇用とする制度を、2016年4月からは入社初年度より無期雇用とし、スタイリストの働く環境のさらなる改善を図っています。
また、メイト社員から正社員への登用は、登用試験受験までの年数を入社5年目から4年目に短縮した結果、正社員登用者数は年々増加し、2020年度は約80名、累計で約1,000名が正社員となり、うち約30名が管理職に昇格しています。
また、フェロー社員(時給制契約社員)からメイト社員への転換者数は、2020年度は約30名、累計で1,400名以上となっています。
当社グループでは、能力開発として従業員が自主的に学ぶ場を提供しています。これまでは集合開催が中心でしたが、2020年度からはオンライン開催も取り入れることで、地理的、時間的な制限を可能な限り取り除き、より学びやすい環境を整えています。具体的にはグループ内従業員が学びを進める「SNACK」と、グループ外企業の従業員と学びあう「DATE」と、それぞれのつながりによる学ぶ場を提供しています。
SNACKは「Skill」「Network」「Attitude」「Communication」「Knowledge」の略称。これまでは持ち込み企画として朝活・夕活を中心に、社内従業員および社外で活躍されている方を講師にリラックスして学ぶ場として位置づけていました。
2021年度からは、成長したいという意欲を持った従業員が自律的にいつでも・どこでも・誰でも学ぶことができる場として、「リベラルアーツ〜教養を高める学び〜」をテーマに社内で動画をアップしていく形へと変化させていきます。
「SNACK」は、(1)自分の時間を使い誰もが参加できる場、(2)従業員自らが自由に設計し教え合い学び合う場、(3)店や部署の垣根を越えた全社横断型の場、などのさまざまな場を提供し、主体的に学ぶ企業文化の醸成と、従業員と会社の新しい関係を築く働き方改革との連動をめざします。
DATEは「Development Acceleration Training by Exchange」の略で、他企業が実施している優れた研修を相互に交換し、交流することで、自社にない新しい学びと刺激を提供する研修です。(株)三越伊勢丹、カルビー、ソフトバンク、サントリー、ユニリーバ、5社による連携の取り組みです。
DATE開催実績
少子高齢化、生産年齢人口の減少、働き方への価値観の変化に伴い、働き方の自由度を拡大する「ライフワークバランスの実現」が重要視されています。文字通り「生活と仕事の調和」を実現させるためには、従業員の健康や生産性向上も重要な要素となってきます。
三越伊勢丹グループは、ライフワークバランスの実現に向けて、従業員が“働きやすさ”を実感できる環境を作っていきます。従業員のライフステージ・ライフイベントにおける問題に適切に対応できる制度構築をはじめ、健康サポートや多様な働き方の促進など、個々人が柔軟にかつ継続的に働くことができるための取り組みを進めていきます。
※「いかなる時も“仕事最優先”ではない」「一人一人の人生や価値観が最大限に尊重され、それにフィットする企業・職場でありたい」という思いから、当社グループはワークライフバランスではなく、“ライフワークバランス”と表現します。
メリハリある働き方を実現することで、従業員の心身の健康を確保しライフワークバランスの向上につなげるため、継続的に総実労働時間の短縮に向けて取り組んでいます。単に時間だけを削減するのではなく、業務の見直しを図ることで、生産性の向上につなげています。
(株)三越伊勢丹では、2019年度より1日の労働時間を30分短縮し(変更後の1日あたりの労働時間:7時間25分)、年間所定労働時間を1,972時間から1,840時間に短縮しました。
(株)三越伊勢丹では、効率的な働き方を進めるため、Office 365の活用や業務用スマートフォンの貸与、書類のオンライン化(ペーパーレス)、会議の在り方の見直しなどの業務改善を実施しています。
長時間労働抑制のため、PC使用時間を把握するシステムにより労働時間を客観的に把握できる仕組みも導入しています。また、就業関連の知識浸透に向けて、業務用スマートフォンでもルールを確認できるよう、アプリ化も進めています。
モバイルPCと通信機器を貸与することで、外出先など通常勤務先以外での業務遂行を可能にしています。2015年度よりテレワークの推進に努めています。
1)在宅勤務制度
◆ 2017年度より導入しています。
◆ 対象者は雇用形態ではなく「自宅で通常業務が自律的に実施可能か」で判断・実施しています。
◆ 2021年度時点で(株)三越伊勢丹と三越伊勢丹ホールディングスの合計で、3,000名(全従業員の33.7%)が実施しています。
2)社内サテライトオフィス
◆ 2019年度より順次導入しています。
◆ 新宿、日本橋、銀座、立川、浦和の店舗または周辺ビルにて執務可能な共有スペースを設置しています。
◆ 店舗立ち寄り時や顧客やお取組先訪問後の残務処理時に活用することで、総実労働時間の短縮にも貢献しています。
グループとして年間の取得目標(55%以上消化)を掲げ、取得推進を図っています。期初に連休取得計画を立案することで有給休暇を取得しやすい環境づくりを推進しています。
三越伊勢丹グループでは、出産・育児をしながら働く従業員を支援するために、法令を上回る制度を設けているほか、働きがいをもって仕事をし続けられるよう、様々な制度と環境を整えています。
「産前・産後休暇」「育児休業制度」を取得した従業員の出産後の復職率は約9割であり、2021年8月現在、約440人が「育児勤務制度」を利用し、仕事と家庭の両立を図っています。
そのほかにも、フルタイム勤務への早期復帰に向けた支援として「育児勤務の一時的勤務時間延長制度」「フルタイム早番固定勤務制度」「育児勤務のスライド制度」など勤務形態の拡充を行っています。
また、人事統括部内に「育児関連制度相談窓口」を設置しており、育児休業中の従業員への「トピックスレター」の発送(毎月)のほか、職場復帰前には「復職準備質問会」を、復職後には人事制度の説明や制度利用経験者からのアドバイスを聞ける「ワーキングマザー・セミナー」などを実施しています。2015年度からは、フルタイム勤務復帰を迎える従業員を対象とした「ワーキングマザー・セミナー2」を実施するなど、復職やフルタイム勤務復帰に向けたソフト面の取り組みにも力を入れています。
育児関連制度利用者数 ※(株)三越伊勢丹の社員・メイト社員
育児支援制度の体系
育児関連制度
男性の育児参加を促進するため、法定の育児休業制度のほか、「育児休業の特例」として(株)三越伊勢丹独自の育児休暇制度を設定しています。
2020年度制度を利用した男性従業員 ※(株)三越伊勢丹
家族の介護をしながら働く従業員を支援するために、一定期間内において休業できる制度や勤務時間を短縮できる制度を法令以上に設定し、継続して働き続けられる体制を構築しています。また、家族の介護を事由としてストック有給休暇※を取得することを可能とし、選択肢を広げています。
※期限内に取得できなかった年次有給休暇を一定数までストックできる制度(P.74参照)
2020年度介護関連制度利用者数 ※(株)三越伊勢丹の社員・メイト社員
当社グループでは、個人のライフイベントに対応した雇用制度を設定しています。
結婚、出産、育児、介護または配偶者の転勤等を理由に退職した場合、退職後12年以内であれば、退職時の雇用形態で優先的に再雇用する制度。
結婚、育児、介護、配偶者の転勤等ライフイベントに応じ、本人希望による地域間異動を可能にする転籍制度。
グループ内継続雇用制度利用者数 ※グループ計
※在籍所属は2021年11月時点のものです。
私は、2020年4月から2021年3月までの1年間、育児休業制度とストック有給休暇制度を活用し、育児のために休業しました。
子どもを授かったことがわかってから、自分が子育てにどのように関われるのか色々と思案しました。元々、子どもを育てるということは、一生続く、大変なことで責任のあるものであると考えていたこと、また、妻も当社グループで、私と同じ職責で働いていること等から、子育てを妻に任せきるのではなく、楽しいこともつらいこともシェアしながら、できうるかぎり関わりたいという気持ちをもっていました。
ちょうどそのころ社会の関心事として男性の育児参加が積極的にとらえられていたこと、周りに男性で育児休業の経験者がいてお話を伺えたこともきっかけとなり、育児のために休業することは人生においても貴重な経験になるのではと思い、選択肢として前向きに考えてみることにしました。
取得にあたっては、当初、休業中の金銭面のことや、復職後のキャリア形成のことで不安もありましたが、実際に取得してみて、(株)三越伊勢丹の制度は非常に充実していると感じました。女性が取得できる制度の多くは、男性も同じように利用できるように整備されています。育児休業制度のみならず、ストック有給休暇制度(P.74参照)を育児のために利用できたおかげで、金銭面での不安は払拭されました。キャリア形成については、上司とのコミュニケーションの中で、後押ししてくれたことで、こちらも不安を払拭できました。育児の先輩としても、相談にのってくれてとてもありがたかったです。
取得するからには、またとない機会と思い1年間、会社を離れました。この1年間は初めての経験ばかりで本当に大変でしたが、とても貴重な歳月でした。
復職してみて思うことは、育児が自分を人間的に成長させてくれたことです。当社グループには女性従業員が多く、育児休業制度や、育児勤務制度を利用されている方が多くいらっしゃいます。育児と仕事を両立させながら働く大変さを、少しでも理解し、配慮しようと思えるようになったのは、大変な進歩だと感じています。
現在、妻は育児勤務制度を利用していますが、子どもの突発的なことに勤務が左右されるのを見て、私も引き続き主体的に関わりたいと思っています。今後、また子どもを授かったら、再度の取得を考えると思います。私自身、先に取得された方や、周りの方の応援があって育児休業を取得できたので、今後機会があれば、男性の間にも制度が広がるように、取得を考えている人の後押しになるようなことができればとも思います。
従業員がグループ内で得ることが難しいスキルや経験を会得できるだけでなく、従業員の自律性や自主性も促進されるため、2020年4月より制度を開始しました。
長時間労働や過重労働による従業員の健康被害が生じないよう、また、職務専念義務や秘密保持義務に違反することがないよう、遵守事項を常時掲示しています。
2020年には(株)三越伊勢丹ホールディングスおよび(株)三越伊勢丹で計88名が利用しました。
働きやすい仕組みの環境づくりの一環として、法的には失効してしまう未取得の年次有給休暇を最大230日までストックできる制度です。予め定めた事由と日数の範囲内であれば原則本人が希望する時期に取得できます。
取得が認められる事由は、従来の治療・介護・看護などの他、ボランティア、不妊治療など社会的な動きに合わせた内容も含んでいます。近年は介護、看護、学校行事の事由での申請が増えており、育児事由で男性が1カ月単位で取得するケースも出てきています。
ストック有給休暇制度の利用実績 ※(株)三越伊勢丹ホールディングスおよび(株)三越伊勢丹
従業員が心身ともに健康で勤務できるよう、様々な取り組みを進めています。
従業員が健康に勤務できるよう、年に1回の健康診断を実施しています。法定以外の項目についても定期的に健康診断を行い、年齢に応じて実施内容を変えるなど、個人の状況に応じた内容としており、満40歳になる年からは、5年に一度人間ドックを実施しています。
結果に対するフローも整備し、細やかなフォローを行うことで、従業員一人一人の健康管理を支援しています。
健康診断受診率 ※グループ計
(株)三越伊勢丹では、常勤産業医を新宿店・日本橋店に各1名配置しています。非常勤の産業医7名と連携を取り、従業員の健康診断結果や安全衛生体制を確認しています。従業員は自分の健康診断結果に関する質問や、健康に関する相談を産業医に申し込むことができます。また、メンタルヘルス専門の産業医もおり、心身の健康管理に対応しています。
(株)三越伊勢丹では労働災害の状況や対策の実施状況を会社と労働組合の両者で確認しています。職場巡視による確認など、産業医とも連携しながら労災の未然防止に努めています。
また、労働組合と会社の合同会議として、年2回中央安全衛生委員会を開催しています。職場をまたいだ社内の労災の発生状況を確認し、再発防止に向けた対策を共有するとともに、開催時期に応じたテーマを設定し、議論することで取り組みの精度向上を図っています。
組織のストレス状態を捉える機会としてグループ全体でストレスチェックを活用しています。(株)三越伊勢丹では、法制化を前に2014年8月に「ストレスチェック」を実施。2016年度よりグループ全体に広げて実施しており、グループ全体・各社・各所属で組織の活性度合いを可視化しています。
本人への結果通知はもちろん、管理職には組織の調査結果をフィードバックすることで組織改善に結びつけています。
ストレスチェック受検率
メンタル不調による休職などを未然に防ぐため、社内・社外に相談窓口を設置して早期に相談しやすい環境をつくっています。また、一旦休職に至った従業員に対しては、勤務時間や業務を調整して段階的に通常業務に復帰できる仕組みを設けています。
気軽に体調など健康関連のことを社内の保健スタッフへ相談できる制度です。状況に応じて産業医との面談や医療機関の紹介を行っています。
ハーフタイム利用者数 ※(株)三越伊勢丹
体調相談中心のハーフタイムとは異なり、職場問題やハラスメント関連を産業カウンセラーに相談できるカウンセリングルームを設けています。
メンタル不調で休職した方の復職をサポートするシステムです。要保護勤務(時間外不可、短時間勤務)を設定し、休職から段階を経てスムーズに復職できる環境を整備しています。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、行政の方針を遵守しつつ、三越伊勢丹グループでは様々な取り組みを行っています。
感染者が発生した場合には、個人が特定されない形で速やかに社内外に開示を行い、社内対策を強化するなどの対応を行っています。対策内容については、店内看板、サイネージ動画、HPを通じて周知を図るほか、店頭での感染防止には、お客さまにもご協力をいただいています。
首都圏をはじめ国内グループ百貨店で実施している対策をご紹介します。
◆ 店舗入口での体温測定(赤外線サーモグラフィーカメラでの計測)と手指消毒
◆ 店内でのマスクの着用
◆ お客さま同士の適度な距離の確保
◆ 入口の限定へのご理解(入口、出口を分ける対応)
◆ 定期的な店内施設及び備品の消毒
➡カート、買物カゴ、手すり、什器、カウンター、試着室、ハンガーなどを定期的に消毒
◆ 飛沫防止シートの設置
➡食品フロアやギフトセンター等一部のレジカウンターに設置
◆ お会計時の従業員とお客さまの接触回避
➡現金・カード・レシートなどの受け渡しは金銭トレイで行い、サインが必要な場合は消毒済のペンを使用する
◆ 食品フロアや催事場における試食・試飲の一時中止
◆ 混雑回避の取り組み
➡クリアランスセールや物産展など、混雑が想定されるイベントにおいては、特に混雑回避について取り組んでいます。
オンライン上の品ぞろえの強化、段階的なスタート、時間別入場、ソーシャルディスタンスを確実に確保できる売場の
構成など、お客さまに協力していただきながらの対策を講じています。また、グループ内で好事例を共有し、
回を重ねるごとに改善しています。
◆ 手指消毒・不織布マスク着用(一部フェイスシールド)等、基本的感染予防対策の徹底
◆ 出社時の従業員通用口における検温の実施
◆ 従業員施設における3密防止対策の実施
◆ 業務上可能な場合はテレワークの推奨
➡2021年度時点で(株)三越伊勢丹と
(株)三越伊勢丹ホールディングスの合計で、
約3,000名(全従業員の33.7%)が実施
◆ 職域接種の実施
◆ COCOA(厚生労働省の接触確認アプリ)の業務用スマートフォンへのダウンロード推奨
DBJ健康経営
表彰・認定日 | 主催 | 表彰制度・認定制度名 |
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2018年12月 | 内閣府 | ![]() 「内閣府特命担当大臣 (男女共同参画)」表彰 |
2018年8月 | 東洋経済新報社 | 「CSR企業総覧」 女性が働きやすい企業ランキング1位 ※2015年、2016年 1位獲得 |
2016年10月 | 厚生労働省 | ![]() 「えるぼし」認定企業 |
2016年2月 | 日本生産性本部 | 女性活躍パワーアップ大賞優秀賞 |
2016年2月 | 日本能率協会 | KAIKA Awards 2015 |
2015年11月 | 厚生労働省 | キャリア支援企業表彰 2015 ~人を育て・人が育つ企業表彰~ |
2015年6月 | 日本HRチャレンジ大賞実行委員会 (後援) 東洋経済新報社 ビジネスパブリッシング Pro Future |
![]() |
2015年3月 | 経済産業省 | ![]() ダイバーシティ経営企業100選 |
2014年9月 | 厚生労働省 | ![]() 「子育てサポート企業」 |