三越伊勢丹グループでは、経営計画を達成するうえで最も大切なのは「人」だと考えています。全従業員が同じ目標に向かって進むために、従業員エンゲージメントへとつながる「従業員満足度(働きがい・働きやすさ)」を最も重要な土台であると位置づけています。
企業活動の基盤である「従業員」の働きがい・働きやすさの実現を土台としつつ、従業員一人一人のエンゲージメント向上や幅広いステークホルダーとの信頼関係の醸成に向けて、人権、ダイバーシティ&インクルージョン等、広範な社会課題の解決に寄与する様々な取り組みを推進していきます。
グループの持続的成長に向けた全従業員の目標として「組織と個人の目指す姿」を掲げています。
全従業員が、すべてのステークホルダーの心を動かし、ファンになっていただけるよう、自律的に協働・貢献する組織
経営マインド・好奇心・想像力をベースとし、“特別な”百貨店を中核とする小売グループにふさわしい幅広い対応力で価値を創造できる人財であること
定期的な定量調査を活用し、「組織と個人の目指す姿」に向けた課題を明確にするとともに、経営と各部門との密なコミュニケーションによって、一体感のある改善に向けた取り組みを行っています。
三越伊勢丹グループでは、多様な従業員の活躍がイノベーションを生み、お客さまの豊かな暮らしをより進展させるという考えのもと、近年様々な制度や機会の提供を拡充しています。
「百貨店事業の再生」に始まり、10年後を見据えた「まちづくり」に至るまで、中長期経営計画の実現を支える人財基盤づくりとして、会社と従業員が一体となって共に成長し続ける、人財育成・人事政策を実施してまいります。
女性やシニア、障がい者、LGBTQ+等、全従業員が活躍できる職場づくりを推進しています。そして、当社グループならではの幅広いキャリアで養われた価値観や性別、年齢、障がいなど、「個性」の強みがフラットに融合し、新たな価値を生み出す組織力を開発し続けます。
百貨店から金融・不動産・システムまで広がるグループの多様性を強みとすべく、さまざまな背景を持つ人財を積極的に採用しています。さらにはその多様性を活かす組織づくりとして、グループ内出向、グループ外出向の機会増加に加え、学びの場をグループ共通で提供しています。グループ内外での出向者数は前年度より約30%増え、500名以上となります。
全従業員が会社の方向性・戦略を理解し、生涯を通じて、自律的なキャリア開発・能力開発を実践できるよう支援していきます。
そのために上長は、対話を通じてメンバー一人一人に寄り添いながら、中長期での成長を促します。そして会社側は、研修や学びの場の提供だけでなく、中長期的な視野に基づいた成長の機会やポジションを従業員に提供するとともに、自律的な個人の成長につながる新たな評価制度を効果的に運用していきます。
社内公募制度やチャレンジ申告制度といった公募の仕組みも積極的に活用してもらい、自ら手を挙げて、向き合う課題の幅を拡げ、経験値を拡げることで、従業員がより高いレベルの価値を創出できると考えています。そして、日々の業務で向き合った課題・難題において、自らよく考えて、果敢にチャレンジし続けることで一人一人が成長を遂げることを期待しています。
これまでは「働きやすさ」を中心に働く環境を整えてきました。今後は従業員一人一人の「働きがい」につながる取り組みもさらに推進し、モチベーションの最大化を図り、イノベーションと生産性向上につなげます。エンゲージメントとは対話に基づくものです。日常的な上長との1on1等の対話、経営層と従業員の対話、横の連携強化を図る部門を越えた対話会の実施など、会社と全従業員が同じ方向に向かって進んでいけるよう、様々な取り組みを推進しています。
最後に、「健康と家族は最優先」であると私自身が強く思っています。すべての従業員と家族が健康で、やりがいをもって働ける会社こそ、成長し続けることができると考えます。百貨店の再生を成し遂げ、当社グループが一丸となって豊かな未来へ向かう「まちづくり」に貢献していくためにも、従業員と会社が共に成長し続けることを目指していきます。
従業員エンゲージメントへとつながる「従業員満足度の向上」に向けたすべての取り組みのベースとなるのは“コミュニケーション”です。
下記のようなあらゆる関係性における対話・議論を進め、一体感を醸成していきます。
トップマネジメント層と従業員との対話
▼ 経営方針の浸透
ミドルマネジメント層とメンバーとの対話
▼ 一人一人の心理的安全性向上
階層や部門を越えた対話
▼ 当事者意識の醸成
労使コミュニケーション
▼ 働き方と人事制度の質向上
経営方針の浸透を図るため、トップマネジメント層と従業員の対話を実施しています。「経営方針を理解し行動につなげるキッカケとする」「参加者同士が課題感を共有する」といった意識変革・行動変容へとつなげることが目的です。
2021年度(株)三越伊勢丹および(株)三越伊勢丹ホールディングスより実施をしている本取り組みを、2022年度は主要グループ会社へと対象を拡大して実施を進めています。グループ全体の対話風土の醸成・モチベーション向上へとつなげていきます。
2022年度実施計画
● 社長との(株)三越伊勢丹および(株)三越伊勢丹ホールディングスのステージA(部長職)との対話会…計25回程度開催予定
● 社長とグループ各社のステージA・B(部長職、課長・係長級)との対話会…計40回程度開催予定
上司と部下が定期的に1対1で対話(1on1ミーティング)を行うことにより、「個性・感情の理解」や「自律的に考え行動できる人財の育成」につなげることを目的としています。この対話を通じて、一人一人の心理的安全性を向上させることで「働きがい」や「働きやすさ」にもつなげていきます。
2019年度から1on1ミーティング実施の目的や意義を正しく理解し、メンバーの話を聞くスキルを身につけるセミナーを開催してきました。
グループ全体を対象とし、2022年度までにステージA(部長職)約220名、ステージB(課長・係長級)約2,000名に教育を実施予定です。
未来の三越伊勢丹グループや、自身の働きがいや大切にしていることについて、一人一人が考えることも従業員エンゲージメントにつながると考えています。アンケート実施の他、回答内容を踏まえ、階層や部門を越えた対話活動をグループ全社で実施しています。
会社は「三越伊勢丹グループ労働組合」を唯一の正当な交渉団体として承認し、グループ各社の直接雇用従業員は、原則として組合員でなければならないと定めています。グループ企業26社と労働組合26支部・分会が労使関係や人事・労働条件を規定する労働協約を締結しています。
当社グループにおいては、人事賃金制度や働き方・労働時間制度などに関する労使協議を、いわゆる春闘などにおいて短期集中で交渉するのではなく、通年で継続的に行っています。
また、グループ経営トップと組合本部幹部、あるいは各社トップと組合支部幹部による懇話会も定期的に開催し、情報共有を行うことで、相互理解と信頼・協力関係のもとに、円滑な事業運営と働く環境の維持向上を図っています。労使関係は相互に協力的で、良好です。
図1
三越伊勢丹グループでは「三越伊勢丹グループ労働組合(以下IMGU)」を設置し、三越伊勢丹グループ企業のカウンターパートナーとして、グループ各企業と労働組合各支部・分会が労使関係や人事・労働条件を規定する労働協約を締結しています。
「あらゆる立場・境遇の人々が、自身の存在意義と幸せを実感しながら活躍できる社会」に向けた取り組みは、企業の社会的な責任です。
また、不確実性の時代に多様な人財を活用し、イノベーション創出を促進することは、企業成長に直結すると考えています。
三越伊勢丹グループでは、性別や雇用形態等にかかわらず、すべての従業員が活躍できる基盤の構築を進め、多様な人財が能力を発揮する環境づくりに取り組んでいます。
多様な価値観を尊重し、お互いの違いに価値を認めて、個々人が最大限に能力を発揮できる組織と環境づくりにより、従業員満足度の向上を通じた会社戦略の実現を推し進めています。
当社グループは、従業員の約7割が女性です。
今後の企業成長(戦略実現、イノベーション推進)においても、人口動態の変化においても、女性の活躍は不可欠です。今後も、制度・サポートの充実に留まらず、組織風土や個々人の意識醸成を進めることで、様々なライフステージの女性が働きがいと働きやすさを実感しながら活躍できる環境をつくっていきます。
性別にかかわらず活躍できる環境づくりを行うことで、女性管理職比率は年々増加しています。女性活躍推進の基盤として、育児関連制度を充実させながら、女性が出産後も継続して働き続けられる環境整備を進めており、子どもを持つ女性管理職も多く在籍しています。その結果、女性の平均勤続年数も年々長くなっています。
女性社員平均勤続年数※(株)三越伊勢丹
2022年度女性管理職在籍人数※グループ計
2014年4月に初めての女性役員が誕生以降、当社グループでは継続的に社内外から女性役員を登用しています。
現時点では、6名の女性役員(社内取締役1名、社外取締役2名、執行役員3名、主要グループ会社社長1名)が就任しています。
2022年度女性役員在籍人数
多様な価値観を尊重し、採用基準を設けています。その結果として、例年新卒社員(総合職)の約半数あるいはそれ以上を女性が占めています。
新卒(総合職)採用実績人数※(株)三越伊勢丹
◆ 経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」(2015年)
◆ 日本生産性本部「女性活躍パワーアップ大賞」優秀賞受賞(2016年)
内閣府 女性が輝く先進企業2018「内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰」受賞
◆ くるみん認定(2014年)
◆ えるぼし認定(2016年)
2022年6月、社内出身で初の女性取締役に就任いたしました。私は1985年に(株)伊勢丹に入社したいわゆる男女雇用機会均等法第一世代で、これまでもいろいろな”女性初”を経験してきました。女性であることは自身の個性の一部なのですが、外形的に男性のみの集団に私が入ることで多様性が増すと思われてきました。女性の活躍の場が広がることは、男性のみの集団に違う視点をもたらす、有用かつダイバーシティの最初の一手です。
女性に男性と同様の就業機会すら与えられていなかった入社当時からすれば、企業におけるダイバーシティがその価値向上に欠かせないという認識が広がっていることは大きな進歩です。しかしながら、グローバルには数十年前から取り組まれていたダイバーシティ&インクルージョンというテーマが、日本では優先度が上がらず、現時点ではグローバル比較で劣後しています。
当社グループは従業員に女性が多く、現在では性別による活躍の場には差がほとんどないと言っていいでしょう。育児や介護、傷病にも合理的な配慮をもって制度が整えられており、働きやすい環境整備を確実に進めてきました。多くの職場で女性が活躍し、女性の管理職も着実に増えています。
一方、権限と影響力のあるポジションにおいては、まだまだ多様性が不足していると考えています。お客さまのご要望に真に寄り添うことのできる新たなビジネスモデルへの転換には、お客さまの多様な価値観に寄り添うことのできる多様な人財が不可欠であり、さまざまな個性を活かすマネジメントや個性的なリーダーが欠かせません。
そもそも百貨店事業は、首都圏だけでも年間約4,500万人ものお客さまをお迎えし、約2万6千社ものお取組先と協働することによって成り立っています。それ自体がすでに多様性を包摂しているわけで、当社側にダイバーシティ&インクルージョンがなければ、提供価値を最大化することはできません。私たちが目指す“特別な“百貨店’を中核とした小売グループには、ダイバーシティ&インクルージョンが欠かせないのです。
思い返すと、入社当初に学卒女性は異質な存在だったため、会社も預かった上司もどう扱っていいか試行錯誤していたように思います。職場には性別による役割分担も存在していました。入社直後の私は上司に恵まれ、過度な同調圧力もなく、期待役割を理解して働ける環境をつくっていただきました。先輩や同僚とも同じ目標に向かって頑張った良い思い出がたくさんあります。長年のキャリアにおいては困難な時期もありましたが、その時は内向きにならずにさまざまなネットワークに自ら支援を求めて、助言や励ましに力をもらってきました。これまで一緒に働いてきた方々に心から感謝しています。
誰でも自分に価値を感じて仕事で力を発揮するには、上司と同僚の支援が欠かせません。個に寄り添うことは、お客さまのみならず従業員や一緒に働くメンバーについても同様で、マネジメントの重要なテーマだと考えています。
私たちはさまざまな商品を扱っていますが、1つの商品は2つにはなりません。一方、一人の力は倍にも10倍にもなる可能性を持っています。私は人財が資本であるという考え方の根幹はここにあると考えています。人と組との力で変革を成し遂げるために全ての従業員が活躍できる企業風土が醸成されることが求められており、私も貢献したいと考えています。
いま日本社会の多くの組織において、モノカルチャーから脱して多様性の高い組織風土を醸成していくことは喫緊の課題です。当社グループにとってもダイバーシティ&インクルージョンの実現は、多くのステークホルダーにこれからも引き続き企業価値を認めていただくために不可欠です。そのためには、取締役会はもとより、経営を支える中核となるポジションに女性をはじめ、多様な人財が就くことが必要です。当社における人財の登用において、性別などの属性や経験に偏りがないかに留意し、グループで働く全ての従業員に公平かつ十分な活躍の機会が与えられていくか、取締役としてモニタリングしていきます。
育休・産休を経て、育児短時間勤務を利用して、2021年にスタッフ部門に復職しました。2022年4月からは伊勢丹新宿本店リビング部門のバイヤーを担当しています。
夫も当社グループで働いています。夫は子どもを授かったことが分かってから「育児のスタートダッシュを夫婦で一緒に経験したい」「母親が仕事に戻ったとき、自分一人でも育児ができるようになりたい」という気持ちが湧き、相談した結果、夫婦2人で育児休業制度を取得することにしました。そのおかげで、1年間子どもの成長を一緒に見守ることができました。夫は育児休業に入ってから、今まで全くやったことがない料理や掃除も一通りできるようになり、さらに子どもの検診やお薬を飲ませることなども率先してやってくれました。私は新しい部署へ復職することになり、体調面や仕事と育児の両立に向けて不安もありましたが、家事育児に関しては私が全てやらなくても大丈夫と実感し、安心して復職をすることができました。
今年からリビング部門のバイヤーとして、商談のための外出や新規大型催事の準備など、日々の業務に追われる半年間を過ごしています。ある日、子どもと一緒に居るときにスマホでメールを見ていたら「ママ、スマホ見ないで」と言われてしまいました。娘の一言で寂しい思いをさせてしまっているのだと気づき、子どもと一緒に居るときは仕事から離れようと心に決めました。そのエピソードをチームの先輩ママたちに話したところ「親の気持ちは、子どもに伝わってしまうよ」「子どもと一緒に居られるときは、その時間を楽しんで」とアドバイスをいただきました。周囲に理解してくださる方が居て、本当に支えになっています。
私はこれまでの経験から「大変さはあるけれど、それを乗り越えてカタチにできる現場がやっぱり好き!」と感じます。頑張っている姿を子どもに見せて、ポジティブな影響を与えられると良いなと思っています。また、仕事をしながら自分の成長にもつなげていきたいです。
現在は、育児短時間勤務を利用していますが、成果として求められることや、業務が減るわけではありません。自身の不在時に業務を止めてしまうことなく、お客さまへ価値のあるものを届けられるよう、チームのメンバーには常に情報を共有し、自分だけがやらないといけない働き方にならないよう意識しました。私が対応できない緊急案件の対応や、宿泊を伴う出張なども含めて、担当長やチームメンバーをはじめとする、周囲の方々に多大なるサポートをいただいています。現担当は新しい領域で一からのスタートでしたが、産休前に長年担当していたファッション領域での経験も活かし会社に貢献していきたいと思っています。
子どもは現在2歳であり、正直、今はまだフルタイム勤務に戻ることが想像できません。これからはその時代に合う、一人一人にとっての居心地の良い働き方を作っていくべきだと考えています。産休や育児短時間勤務を経験して分かったことは、「育児」というものは、そのときの状況や家庭ごとに異なる「個性」だということ。必ずしもロールモデルがあるわけではありません。ほかにも介護をされている方、副業している方など、働き方が多様化していますが「自分の担当だから自分で全部やろう」という働き方ではなくて、「それぞれの状況に応じながら、それぞれの強みを活かして働ける」という体制をつくっていくことも大事だと思います。育児をしながら働いていることも一つの個性として、自分らしいステップアップをしていきたいです。
三越伊勢丹グループでは、「障がい者も社会経済を構成する一員として職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとする」という障がい者雇用の理念を引き続き実践していきます。
障がい者雇用比率 ※(株)三越伊勢丹および首都圏主要グループ会社の合計
障がい者の優れた能力を活かして、本業に直結する業務をワークシェアリングすることで、業績向上に貢献、かつ障がい者自身のやりがいが実現し「企業の一員」としての帰属意識が生まれています。
※ 同社は三越と伊勢丹の統合に伴い、2011年3月に(株)三越伊勢丹ソレイユとなりました
三越伊勢丹ソレイユで働く従業員
2017年10月、三越伊勢丹ソレイユは障がい者雇用において特色ある優れた取り組みが評価され、東京都産業労働局が主催する「障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞し、東京都知事より表彰されました。
障害者雇用エクセレントカンパニー賞
障がい者の能力開発や処遇改善を積極的に行う障害者法定雇用率を達成している都内企業を表彰する東京都独自の制度です。障がい者が職場で活躍できる環境整備の促進、障がい者雇用に関する周知啓発を目的にしています。
2017年12月の「障害者週間(内閣府)」に合わせ、天皇皇后両陛下(当時)が三越伊勢丹ソレイユを行幸啓されました。両陛下は障がいのある従業員に話しかけるなど、ご熱心に仕事ぶりをご覧になりました。
主な業務は、百貨店で使用するギフトリボンやシール作りなど100種類以上に及びます。受け継がれてきた作成マニュアルのほか、障がい者従業員自らが作成した自分用の「仕事ノート」で手順を確認しながら作業を進めています。作業はおのおの責任をもって行い、できあがったら支援スタッフ(指導員)に自ら報告に行きます。報告を受ける際は、「きれいにできました」「上手にできていますよ」などまずは良い点を褒めて、やる気を引き出すことを心掛けています。
従業員は褒められると心からの笑顔で応えてくれます。
また、失敗をした時は「必ず自分で支援スタッフに報告する」ということを強く指導しています。当社の製品は、三越や伊勢丹に来店されたお客さまにお渡しするものですから、不具合なものを納品することは許されません。そのためには、「失敗することは悪いことではない、失敗を隠す方が悪いことである」という意識づけが必要と考え、失敗報告を受ける際には、まずは「失敗によく気づきました」「失敗をちゃんと報告できましたね」と褒めることを徹底しています。
ほとんどの支援スタッフは、(株)三越伊勢丹からの出向者およびOB・OGで、障がい者についての専門知識はありません。「障がい者にこんな作業はできないだろう」「障がい者に刃物を扱う業務は危なくてやらせられない」といった先入観なく接することで、一人一人の能力の限界を決めることなく、「どうやったら障がい者がこの作業を遂行することができるか」を絶えず考え、課題を解決しています。例えば、誰が作っても百貨店クオリティに耐えうる完成度の高い製品ができあがるように、支援スタッフが独自に治具(障がい者が業務を遂行するために使用する補助具)を考案・作成・改良する等の工夫を重ねています。また、障がい者が作業しやすい現場を整えることは、障がいのない者にとっても働きやすい環境となるため、障がい者への配慮や工夫が職場全体の改善にもつながっています。
当社には、特別支援学校新卒者から定年後再雇用された者まで、幅広い年齢層の従業員が在籍しており、そういった側面からもダイバーシティの進んだ環境であるといえます。障がいのある従業員に対しては、共に働く仲間としての「配慮」には十分留意しますが、「特別扱い」はしません。当社では【三越伊勢丹ソレイユで働き続けるための10の問いかけ】を設定していますが、その一つに「障がい者であることに甘えていないか」というものがあります。これは「障がい者は甘えている」ということではなく、「障がいがあるからこの仕事はできない、できなくてもしょうがないとあきらめてはいないか」「どうしたらできるようになるか、その努力をしているか」という問いかけなのです。肢体不自由な従業員が、自分の横でリボン作りをしていた同僚の様子を見て、自分もリボンを作りたいと自ら治具を用意し、作業工程を工夫してリボン作りに挑戦しています。その姿こそが【10の問いかけ】に対する答えなのだと思います。当社の障がい者従業員は、みな「ソレイユで働くことが本当に好き」と言ってくれます。ソレイユが、障がいのある従業員にとって働きがいがある会社となりつつあることを、大変嬉しく思います。これからも従業員が社会の一員として誇りをもって働き続けられる会社でありたいと思います。
心のバリアフリーに対する社会的機運の醸成を図るため、従業員に対する意識啓発等に取り組む企業等を東京都が「心のバリアフリー」サポート企業としています。(株)三越伊勢丹ホールディングスは、2018年度に登録されました。
1991年、鹿児島県大崎町にて知的障がい者授産施設・社会福祉法人愛生会を運営していた新平重人氏と岩田屋(現・(株)岩田屋三越)の社長、中牟田健一(当時)の間で障がい者に就労の場を提供しようという思いで(株)愛生が設立されました。のち、1998年には(株)岩田屋の特例子会社に認定され、現在16名の障がい者が在籍しています※。
愛生の主な業務は、岩田屋、福岡三越両店で使われる用度品やブランドショップの手つき紙袋の製作と野菜づくりです。愛生は雇用確保と社会参加促進のために、高付加価値な農業への取り組みを創業以来続けています。焼酎用のサツマイモほか、地元農家の方と協力して育てた野菜の一部を2021年より岩田屋本店の食品売場で販売しています。ここでつくられた野菜は、安全で高品質な農産品の一貫した生産管理体制が構築できていることを評価され、世界120ヶ国以上で運用さる国際標準のグローバルギャップ認証を鹿児島県内の障害福祉サービス事業所として初めて取得しました。
また、人の交流もあり、愛生にて年に一回開催される「大運動会」に(株)岩田屋三越の社員がサポートとして参加、また夏に開催される「カブトムシ相撲大会」の応援にも有志で駆けつけています。このような機会に愛生の方々と直接触れうことは、従業員の意識改革、ダイバーシティの理解が進むきっかけになっています。
※(株)岩田屋三越の障がい者雇用率は3.22%(2022年6月現在)
3年ぶりに大運動会が開催されました
仙台三越では、障がい者雇用職場改善の取り組みが評価され、2018年度より仙台市から「障害者雇用優良事業者」に認定されています。また、2019年には、厚生労働省および独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構より「障害者雇用職場改善好事例 優秀賞(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞)」を、2020年には「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞」を受賞しています。
支援学校との連携や、新たな採用枠の創設など、ともに社会を構成する障がい者と企業が、それぞれにメリットを持てるような取り組みを積極的に作っていることが評価されています。
仙台三越では、現在12名がそれぞれの障がい特性に応じた職務および勤務場所で、健常者の従業員とともに勤務し活躍しています。
少子高齢化が進行する我が国においては、シニア人財の活用は必要不可欠です。三越伊勢丹グループでは、再雇用ありきではなく、従業員が定年後に自身のライフスタイルに合わせて最適な第二の人生を送れるよう支援しています。
定年後のライフスタイルの選択肢の1つとして、定年後の再雇用制度(エルダースタッフ制度)を導入しています。これは、原則として定年後再雇用希望者全員が65歳まで継続勤務が可能な制度です。現在は定年退職者の約8割が定年後も勤務しており、定年前の役職は次世代に譲り、豊かな経験や知識を活かして現場における後輩の指導・育成を担っています。
この取り組みにより、経験豊かな60歳以上の従業員が活躍する機会を広げるとともに、その豊かな経験やスキルを活かして企業成長につなげながら、(株)三越伊勢丹らしさの継承を図っています。
◆ 40歳、50歳時にキャリア・マネーを考えるセミナーを実施
◆ 59歳時に人事による定年に向けての各種説明実施
◆ 再就職支援会社による支援サービスを18カ月間利用可能
◆ 支援会社を4社の中から自由に選択
◆ 在職中から再就職活動が可能、定年とともに新たな就業開始可能
定年後再雇用者数・再雇用率 ※(株)三越伊勢丹の社員・メイト社員
当社グループの一人一人にとっての日々の行動の基準である「三越伊勢丹グループ企業倫理行動基準」、および「三越伊勢丹グループ人権方針」において、人権・多様性の尊重、性別・性的志向による差別の禁止を明文化しています。
個々人が持つ個性と能力を十分に発揮できる環境づくりのため、また従業員だけでなくすべてのステークホルダーにおける多様性を実現させるために、LGBTQ+についての取り組みを積極的に進めていきます。
ユニバーサルマナーハンドブック
三越伊勢丹グループでは人権・国籍・性別・宗教・年齢・障がい等に関わらず、あらゆる人々が活躍できる「ユニバーサル社会」の実現に向け、多様な人々や社会のニーズを的確に把握し、適切な対応を図ることをめざしています。
商品・サービス・店舗環境等における安全・安心・高い利便性でお応えするにとどまらず、お客さま一人ひとりのきめ細かなニーズに寄り添うことで三越伊勢丹の新たな付加価値を生み出すことにつながると考えています。
また「三越伊勢丹グループ人権方針」では、多様な個性を尊重し、人種・民族・国籍・信条・宗教・性別・性的指向・出身地・年齢・疾病・障がい・雇用形態等による差別や、個人の尊厳を傷つける行為は行わないことを徹底しています。
三越伊勢丹グループでは、ユニバーサルマナーが求められる理由や学ぶ理由を知り、障がいのある方々、高齢の方々に対する理解を深めるため、2018年3月に三越伊勢丹グループオリジナルの「ユニバーサルマナーハンドブック(基本編・応用編)」を策定し従業員で共有しています。ここでは概念、基礎知識、対応マナーの解説のほか、応用編では、現場ノウハウの集積(マニュアル化)で、カード払いの代筆等、現場で生じえる様々なケースへの実践例が示されており、現場における顧客サービスの均一化はもちろん、従業員研修等で活用しています。さらに日本百貨店協会と連携して、全国の百貨店へと横展開することで、サービスの一層の向上へとつなげています。2019年度から2020年8月末までに、国内グループ会社従業員約4,400名がEラーニングを受講しました。
また2017年度より民間資格であるユニバーサルマナー検定の取得を推奨し、3級352名、2級15名が取得しています。1980年代より、社内資格として手話講座全15回を自主開催し、合格者に手話バッジを授与。計228名が手話バッジ保有者として活躍しています。
基幹店舗では、アクセシビリティの向上に向け以下の設備を整えています。
ユニバーサル対応施設(伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店・三越銀座店)
当社グループでは、求める人財像に沿って国籍にかかわらず採用しています。新卒採用実績としては、過去6年で59名の外国人採用を行っており、今後も継続する予定です。
新しい発想・スキル・ノウハウを積極的に取り込むことによるイノベーション創出促進のため、グループ外からの人財の活躍も推進しています。また、当社グループからも別の組織に出向する制度もあります。(P.66参照)
グループ外人財の人数
三越伊勢丹グループでは、職場の環境整備と生産性向上のための重要な課題の1つとして「しない、させない、みすごさない、Noハラスメント」を合言葉にハラスメントゼロに向けた取り組みを実施しています。
ハラスメントそのものの発生を防ぐため、予防教育に力を入れています。2020年には、グループ全社の社員・メイト社員を対象にeラーニングを実施し、延べ15,000人が受講しました。2021年には、受講対象を役員からフェロー社員(時給制社員)まで拡大しました。2022年もeラーニングを継続して実施し、一層の撲滅に努めています。また、懲戒が科せられた案件については、その内容を社内で開示し、注意喚起も行っています。
ハラスメントの通報があった場合には、各社人事、(株)三越伊勢丹ホールディングスリスクマネジメント室、労働組合が三位一体となって、真摯に対応しています。2020年6月1日に施行された改正労働施策総合推進法に則り、通報があった際には「迅速かつ適切な対応」ができるよう、通報窓口教育も実施しています。
ハラスメントの通報・対応フロー
三越伊勢丹グループでは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」および日本経済団体連合会の「企業行動憲章」に則り2018年11月に「三越伊勢丹グループ人権方針」を制定しました。これは、当社グループが、お客さま、従業員、お取組先、地域のコミュニティ等、企業活動を行うで関わる様々なステークホルダーの人権を尊重するための方針です。
本方針をグループ全体の役員・従業員に教育・啓発するとともに、サプライチェーン全体で人権に配慮した事業が行われる、周知・徹底に努めていきます。
また、当社グループは、約120社が参加している東京人権啓発企業連絡会に加盟しています。人権に関する最新の課題と取り組みについて情報を収集しつつ、参加企業との情報交換を通じて、より良い人権保護を実施しています。2022年度より特にダイバーシティ&インクルージョンの推進に注力し、あらゆる差別の排除を軸に、ハラスメントの防止、LGBTQ+尊重の取り組み、女性活躍推進、障がい者活躍推進、シニア活躍推進、外国人・グループ外人材の活躍推進など多様な人材が活躍し、全ての従業員が働きがいの持てる環境の構築を目指していきます。
少子高齢化、生産年齢人口の減少、働き方への価値観の変化に伴い、働き方の自由度を拡大する「ライフワークバランスの実現」が重要視されています。文字どおり「生活と仕事の調和」を実現させるためには、従業員の健康や生産性向上も重要な要素となってきます。
三越伊勢丹グループは、ライフワークバランスの実現に向けて、従業員が“働きやすさ”を実感できる環境をつくっていきます。従業員のライフステージ・ライフイベントにおける問題に適切に対応できる制度構築をはじめ、健康サポートや多様な働き方の促進など、個々人が柔軟にかつ継続的に働くことができるよう取り組みを進めていきます。
※「いかなる時も“仕事最優先”ではない」「一人一人の人生や価値観が最大限に尊重され、それにフィットする企業・職場でありたい」という思いから、当社グループはワークライフバランスではなく、“ライフワークバランス”と表現します。
メリハリある働き方を実現することで、従業員の心身の健康を確保しライフワークバランスの向上につなげるため、継続的に総実労働時間の短縮に向けて取り組んでいます。単に時間だけを削減するのではなく、業務の見直しを図ることで、生産性の向上につなげています。
(株)三越伊勢丹では、2019年度より1日の労働時間を30分短縮し(変更後の1日あたりの労働時間:7時間25分)、年間所定労働時間を1,972時間から1,840時間に短縮しました。
(株)三越伊勢丹では、効率的な働き方を進めるため、Office 365の活用や業務用スマートフォンの貸与、書類のオンライン化(ペーパーレス)、会議の在り方の見直しなどの業務改善を実施しています。
長時間労働抑制のため、PC使用時間を把握するシステムにより労働時間を客観的に把握できる仕組みも導入しています。また、勤怠関連の意識・知識浸透に向けて、CHROからの従業員への啓発動画発信や、マネジメント層へのeラーニングの実施や、毎月労働組合と協働で時間管理に関して所属や個人に確認・啓発するなどの取り組みも行っています。
モバイルPCと通信機器を貸与することで、外出先など通常勤務先以外での業務遂行を可能にしています。2015年度よりテレワークの推進に努めています。
1)在宅勤務制度
◆ 2017年度より導入しています。
◆ 対象者は雇用形態ではなく「自宅で通常業務が自律的に実施可能か」で判断・実施しています。
◆ 2022年10月時点で(株)三越伊勢丹と(株)三越伊勢丹ホールディングスの合計で、2,870名(全従業員の36.5%)が実施しています。
2)社内サテライトオフィス
◆ 2019年度より順次導入しています。
◆ 新宿、日本橋、銀座、浦和の店舗または周辺ビルにて執務可能な共有スペースを設置しています。
◆ 店舗立ち寄り時や顧客やお取組先訪問後の残務処理時に活用することで、総実労働時間の短縮にも貢献しています。
グループとして年間の取得目標(55%以上消化)を掲げ、取得推進を図っています。期初に連休取得計画を立案することで有給休暇を取得しやすい環境づくりを推進しています。
三越伊勢丹グループでは、性別にかかわらず、出産・育児をしながら働く従業員を支援するために、法令を上回る制度を設けているほか、働きがいをもって仕事をし続けられるよう、様々な制度と環境を整えています。
「産前・産後休暇」「育児休業制度」を取得した従業員の出産後の復職率は約9割であり、2022年8月現在、約450人が「育児勤務制度」を利用し、仕事と家庭の両立を図っています。
そのほかにも、フルタイム勤務への早期復帰に向けた支援として「育児勤務の一時的勤務時間延長制度」「フルタイム早番固定勤務制度」「育児勤務のスライド制度」など勤務形態の拡充を行っています。
また、人事統括部内に「育児関連制度相談窓口」を設置しており、育児休業中の従業員への情報発信などの支援を行っているほか、職場復帰前には「育児休職者セミナー」を、復職後には育児とキャリアの両立をテーマとした「育児休職からの復職者向けeラーニング」を実施しています。さらに、フルタイム勤務復帰を迎える従業員を対象としたeラーニングを実施するなど、ソフト面の取り組みにも力を入れています。
育児関連制度利用者数※(株)三越伊勢丹の社員・メイト社員
育児支援制度の体系
育児関連制度
性別にかかわらず、希望に応じて仕事と育児を両立できる職場環境の実現を目指して、「男性の育児休業取得率100%」を目標※に掲げ、取り組みを進めています。「育児関連制度相談窓口」の設置に加え、制度面では、法定の育児休業制度のほか、男性の育児参加を促進するために独自制度「育児休業の特例」を設けています。2022年度からは、配偶者の妊娠・出産の申し出をした男性従業員へ人事から個別周知・意向確認の実施を開始しました。
※(株)三越伊勢丹:2024年度/グループ全体:2030年度
2021年度制度を利用した男性従業員※(株)三越伊勢丹
第二子誕生にあたり、育児のために、育児休業制度とストック有給休暇制度を活用して、2022年4月から9月まで6ヶ月間休業しました。第一子誕生の際に、育児の大変さや妻にかかる負担を痛感し、当時から、第二子の時は育児休業を取得しようと考えていました。
以前より育児休業を取得しよう、と考えていたこともあり、第二子の妊娠が分かり、安定期に入ったタイミングで、すぐに上司へ相談しました。上司が自然に受け止めてくれたことはもちろん、社内で男性育児休業を取得している方がいることも知っていたことで、不安なく準備を進めていくことができました。諸制度の活用や手続きについては、人事担当が個別にアドバイスしてくれました。私の場合、出産前から計画的にお休みを取得することができ、家族3人の時間をゆっくり過ごすことができましたし、いつ産まれても大丈夫という安心感の中で第二子誕生までを過ごすことができました。出産直後の大変な1ヶ月はもちろん、その後も家族と過ごせたことで家族の絆が強くなったと、育児休業が終わった今実感しています。
女性が多く働いているため、育児休業や育児勤務に対する理解が進んでいる会社だと思いますが、その中でもまだ少ない男性の育児休業取得について周囲がポジティブに受け止めてくれたことで、安心してお休みに入らせていただきました。また、自身が育児休業を取得したことで、育児と仕事を両立する育児短時間勤務者や育児休業者に対する私自身の理解が進んだと感じています。一緒に働く育児短時間勤務の同僚が、帰宅後休む間もなく忙しく過ごすことが想像できるので、自然と「頑張って!」と応援する気持ちになります。また私自身はフルタイム勤務で復職しましたが、夕方以降の家事・育児は大変で、子どもたちが待っているという想いから、無駄な残業をせずに早く終業する意識が強まりました。そのために、時間内で効率的に業務を進めることと、早く終業することでチームに迷惑をかけないよう、業務中により密なコミュニケーションを取ることを心がけています。
育児休業の取得に際して、「自分がいなければ仕事が回らない、迷惑はかけられない」と考えてしまいますが、会社の制度は整っていて、フォローしてくれる仲間がいます。そして、そのおかげで私は半年間育児休業を取得でき、家族との貴重な時間を過ごすことができました。今回の休業を経て、周りに多くの仲間がいて、それぞれが助け合いながら会社は動いていくんだ、ということを強く実感しました。復職した今は、「『自分にしかできない仕事』はない。でも『自分がやってよかったと思われるような仕事』を増やしていきたい」と思っています。
仕事では仲間と、育児では夫婦で、お互いに助け合いながら、私にしか出せない「自分らしさ」を大切にしながら、両立していきたいと考えています。
家族の介護をしながら働く従業員を支援するために、一定期間内において休業できる制度や勤務時間を短縮できる制度を法令以上に設定し、継続して働き続けられる体制を構築しています。また、家族の介護を事由としてストック有給休暇※を取得することを可能とし、選択肢を広げています。
※期限内に取得できなかった年次有給休暇を一定数までストックできる制度
2021年度介護関連制度利用者数※(株)三越伊勢丹の社員・メイト社員
従業員がグループ内で得ることが難しいスキルや経験を会得できるだけでなく、従業員の自律性や自主性も促進されるため、2020年4月より制度を開始しました。長時間労働や過重労働による従業員の健康被害が生じないよう、また、職務専念義務や秘密保持義務に違反することがないよう、順守事項を常時掲示しています。
2021年には(株)三越伊勢丹ホールディングスおよび(株)三越伊勢丹で計142名が利用しました。
当社グループでは、個人のライフワークバランスを支援する制度を設けています。
結婚、出産、育児、介護または配偶者の転勤等を理由に退職した場合、退職後12年以内であれば、退職時の雇用形態で優先的に再雇用する制度。
結婚、育児、介護、配偶者の転勤等ライフイベントに応じ、転居先地域のグループ企業へ転籍を可能とする制度。
働きやすい仕組みづくりの一環として、法的には失効してしまう未取得の年次有給休暇を最大230日までストックできる制度。あらかじめ定めた事由と日数の範囲内であれば原則本人が希望する時期に取得が可能。取得が認められる事由は、従来の治療・介護・看護などのほか、ボランティア、不妊治療など社会的な動きに合わせた内容も対象。近年は介護、看護、学校行事の事由での申請が増えており、育児事由で男性が1ヶ月単位で取得するケースもあります。
ストック有給休暇制度の利用実績※(株)三越伊勢丹ホールディングスおよび(株)三越伊勢丹
個人の生活上の事業と仕事との両立のために、一定期間内において勤務時間の短縮を可能とする制度として、2022年度より新設。対象となる事由は、介護・兼業副業・私傷病の療養・修学・資格取得などで、1日あたりの所定労働時間の短縮や所定労働日数を低減した勤務が可能。
従業員が心身ともに健康で勤務できるよう、様々な取り組みを進めています。
従業員が健康に勤務できるよう、年に1回の健康診断を実施しています。法定以外の項目についても定期的に健康診断を行い、年齢や個人の状況に応じて実施内容を変えており、満40歳になる年からは、5年に一度人間ドックを実施しています。
診断結果に対して細やかなフォローを行うことで、従業員一人一人の健康管理を支援しています。
健康診断受診率※グループ計
組織のストレス状態を捉える機会としてグループ全体でストレスチェックを活用しています。(株)三越伊勢丹では、法制化前の2014年8月に「ストレスチェック」を実施。2016年度よりグループ全体に広げて実施しており、グループ全体・各社・各所属で組織の活性度合いを可視化しています。
本人への結果通知はもちろん、管理職には組織の調査結果をフィードバックすることで組織改善に結びつけています。
ストレスチェック受検率
(株)三越伊勢丹では、常勤産業医を伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店に各1名配置しています。非常勤の産業医7名と連携を取り、従業員の健康診断結果や安全衛生体制を確認しています。従業員は自分の健康診断結果に関する質問や、健康に関する相談を産業医に申し込むことができます。また、メンタルヘルス専門の産業医もおり、心身の健康管理に対応しています。
メンタル不調による休職などを未然に防ぐため、社内・社外に相談窓口を設置して早期に相談しやすい環境をつくっています。また、一旦休職に至った従業員に対しては、勤務時間や業務を調整して段階的に通常業務に復帰できる仕組みを設けています。
気軽に体調など健康関連のことを社内の保健スタッフへ相談できる制度です。状況に応じて産業医との面談や医療機関の紹介を行っています。
ハーフタイム利用者数※(株)三越伊勢丹
体調相談中心のハーフタイムとは異なり、職場問題やハラスメント関連を産業カウンセラーに相談できるカウンセリングルームを設けています。
メンタル不調で休職した方の復職をサポートするシステムです。要保護勤務(時間外不可)を設定し、休職から段階を経てスムーズに復職できる環境を整備しています。
(株)三越伊勢丹では労働災害の状況や対策の実施状況を会社と労働組合の両者で確認しています。職場巡視による確認など、産業医とも連携しながら労災の未然防止に努めています。
また、労働組合と会社の合同会議として、年2回中央安全衛生委員会を開催しています。職場をまたいだ社内の労災の発生状況を確認し、再発防止に向けた対策を共有するとともに、開催時期に応じたテーマを設定し、議論することで取り組みの精度向上を図っています。
人はあらゆる場面で、常に同等の能力を発揮できるとは限りません。特に“気持ち・マインド”の良し悪しは、個々の能力の発揮度合いを大きく左右します。企業においても、従業員のモチベーションは「個々のパフォーマンス」「組織の生産性」「離職率」など様々な形で影響を与えるため、企業が成長を続ける上で必要不可欠な要素です。
三越伊勢丹グループは、従業員が大きな“働きがい”を感じられるための様々な制度の充実を行い、従業員満足度の向上を目指しています。併せて、「学び」と「幅広い経験」を従業員が自律的に築き上げていくためのサポートや、それを促進させる風土醸成を推進しています。
三越伊勢丹グループでは、企業の持続的な成長に向けて、すべてのステークホルダーの心を動かしファンになっていただくために、社員一人一人が、
・商売人として利益を産み、ステークホルダーに還元していこうとする「経営マインド」を持ち、
・百貨を扱う小売グループの一員として、幅広い「学びとキャリア」を自律的に経験し、
・その経験から養われた幅広い「好奇心」、深い「想像力」、デジタルの力をフルに活用することで、
・三越伊勢丹グループならではの“特別な”価値を創造することにチャレンジしていく。
このような人財がやりがいと誇りを持つ組織づくりを目指していきます。
全従業員が自身の個性を大切にし、最大限の「力」を発揮できるキャリアパスこそが、個の育成・成長の重要な機会と捉え、計画的に推進していきます。その中で一人一人が期待される行動を上司との対話から明確にし、学びの成果と進捗を確認する評価制度と一体となった教育グランドデザイン【MANABIの森】を全従業員に提供し、やりがいと誇りに満ちたキャリア形成を後押ししていきます
人財育成方針の考え方の詳細については こちらをご覧ください。
当社グループは、企業の持続的な成長と事業戦略実現に向けて、従業員が自律的に学び、成長し、キャリアにつなげる環境と機会が整っている状態を目指しています。そのために、人財育成のグランドデザインである【MANABIの森】を策定し、教育の環境・機会を全従業員に提供しています。
これは、2015年より発刊している教育体系「MANABIの森」をベースに、企業の継続的成長に向けて、①全従業員にとって必要不可欠な教育と、②従業員一人一人が描くキャリアに合わせて自ら選べる教育、の両軸で構成されています。大きく「キャリア教育」「基礎」「専門」「体験教育制度」の4つの分類に沿って、業務教育と能力開発のコンテンツを用意し、徹底すべきところを押さえつつ、従業員それぞれが描くキャリアに沿って自ら選び学べる機会をeラーニング含めて展開していきます。
当社グループが目指す人財開発のあるべき姿
総合職として新卒入社した社員がまず経験するのが、百貨店事業の業務です。まずは百貨店事業において現場に身を置き、お客さまと直接接しながら、商売の基本を身につけます。
その後は本人の希望と適性に合わせて、継続して百貨店事業に携わるほか、百貨店事業以外の様々な事業へ配属されます。
また広い視野を持ちどの分野でも通用する人財になるために、希望者からの選抜で海外店舗や他企業へ1~2年程度研修出向するという選択肢も用意されています。
その後昇格試験を経て、最短で7年目にはマネジメント職を担います。
三越伊勢丹グループ内では獲得できない知見・スキルを、外部企業で一定期間経験を積むことで身につけ、帰任後に組織に還元することを目的にグループ外出向を実施しています。
官庁、団体、異業種企業など幅広い組織へ直近3年間で39社100名が出向しています。
ステージA(部長職)4年目以降の人財を対象に、将来のボードメンバーとなりうる人財プールを形成すべく、育成プログラム「ビジネスリーダープログラム」を実施しています。
このプログラムは、2013年度より「企業価値構想力」や「リーダーシップ」の養成を目的に開講しました。これまでに累計150名以上が参加し、その受講者の中から2021年度までに30名の役員が誕生しています。
また、配置においても、評価、面談、自己申告など多方面から本人の能力・適性を見定め、経営人財育成視点での戦略的な異動配置を実施しています。
当社グループでは、積極的に人財交流を促すことで、グループの一体感の醸成と次世代人財の育成を進めています。例えば、グループ百貨店の入社3年目以降の定期採用社員(選抜者)を、首都圏の商品統括部や店舗に配属し、1年間に及ぶ研修を実施しています。これは主に、リアル店舗でのお客さま一人一人とつながるCRM戦略の理解、デジタルリテラシーの向上、お取組先との関係づくりなど、首都圏ならではの知識やスキル、経験を習得する学びの機会を提供するものです。帰任後はそれらを活かし日々の業務に邁進しています。この研修を継続実施することでグループ全体のレベルアップと将来の優秀なマネジメント層の早期育成を目指しています。
表彰制度開始から10年を迎えるにあたり、2021年度には表彰内容の見直しを行います。好事例のノウハウを見える化し、人財育成につなげながら、従業員の自律性を高めモチベーション向上に寄与する表彰制度とする予定です。
三越伊勢丹グループではお客さまと接点を持つすべてのスタイリストの中から、お客さま・働く仲間・会社にとってなくてはならない存在として最も優秀なスタイリストを「エバーグリーン」として敬意を持って認定・表彰し、モチベーション向上を図っています。
「エバーグリーン」は2011年度に(株)三越伊勢丹でスタートし、翌2012年度よりグループ全社に拡大しました。対象となる約78,000人のスタイリストのなかから、10年間で累計639人が表彰されています。
当社グループでは、「高い専門知識をもって、お客さまのご期待を上回る感動レベルでお応えすることができる人財」を目指しています。商品領域ごとに求められる専門知識を社内資格と定め、体系的な知識・技術の習得を推進しています。
現在は「インテリアスペシャリスト」「パーソナルカラーアナリスト」「シューカウンセラー」「マスターシューカウンセラー」「マタニティ・ベビー・コンシェルジュ」「手話」「モードフィッター」の社内資格を取得したスタイリストがスキルを活かしながら活躍しています。
社内資格者数※(株)三越伊勢丹計
三越伊勢丹グループでは、継続的な企業成長の実現のためには、「会社が戦略としてやるべきこと」と「従業員がやりたいこと」を最大限マッチングさせること(=適所適財)を重要視しています。適所適財はモチベーションの向上に直結するため、個人のパフォーマンス、ひいては組織・企業としての業績にも大きく影響すると考えます。
また、不確実性が増していく世の中において、企業も人も常に変化し続けることが求められているなか、個人の成長においては会社主導のキャリア開発ではなく、自らの責任でキャリアを選択していくことが必要であると考えます。
そのための情報提供の一環としてグループ内の働き方や仕事内容を把握することができる「会社別・事業別 業務内容紹介」の取り組みを、2022年度より始めました。
当社グループは「意欲ある人財の自律的なキャリア形成を支援する」という考え方のもと、1年に1度の「自己申告制度」や、社内で募集がかかった案件に自身の意思で自由に応募ができる「社内公募制度」、希望部署に自ら手を挙げる「チャレンジ申告制度」など、自律的なキャリア形成を支援する制度を整備しています。
今後は、今まで以上に個々の従業員の要望・スキルなどを深く収集するとともに、「パーソナルデータ」「パフォーマンスデータ」「キャリアデータ」を一元管理することで、「戦略」と「個々人の想いやスキル」を有機的にマッチさせた戦略的な人事配置を効率的に実行していきます。
この取り組みでは、会社が三越伊勢丹の各所属、また当社グループ各社の業務内容や求める人財像などの情を一元化し従業員に対して情報提供を行っています。従業員はこの情報をもとに、自らのキャリアを考え、各制度を利用することで個々のキャリア自律を促進していきます。
当社グループで働く上での仕事や進路、異動等の希望や自己啓発、キャリアプランについての意見や意欲を自由に回答し、提出する制度です。
現在の仕事への満足度や、過去のキャリアの振り返り、保有スキルなどの情報も収集することで、より本人の要望や適性にマッチした異動配置に活用しています。今後は、従業員個々人の「想い」や「要望」をより深く抽出することで、人財育成や適所適財を通した「従業員満足度の向上」につなげ、企業としての戦略実現につなげます。
なお、この申告制度は毎年1回、社員、メイト社員(地域限定社員)、エルダースタッフを対象に実施しています。
中期経営計画の実現に向け、広く人財公募の必要性が高い案件の募集に対し、職務遂行に必要な能力や適性を持ち、意欲のある人財を公募する求人型の公募制度です。
なお、この申告制度は社員、メイト社員、エルダースタッフを対象に実施しています。
社内公募制度の実績
希望する役割や業務内容に対して、活かすことのできる自身の経験、能力を具体的に申告できる求職型の公募制度です。自己申告制度を一段階進め、ポジティブなキャリアチェンジを希望する人に人事担当との直接面接を実施します。
なお、この申告制度は入社7年目以降の社員を対象に実施しています。
チャレンジ申告制度の実績
希望する役割や業務内容に対して、自分を活かすことのできる経験、能力を具体的に申告できる求職型の公募制度です。自己申告制度を一段階進め、ポジティブなキャリアチェンジを希望する人に人事担当との直接面接を実施します。
なお、この申告制度は入社7年目以降の社員を対象に実施しています。
制度の流れ
従業員が今よりもさらに専門的な知識を身につけ、能力を向上させるための制度・取り組みです。メイト社員にも正社員登用を通じて、キャリアアップの機会があります。
上司と部下の定期的な1対1の対話に加え、2017年度からは、節目節目での評価に対するフィードバック面談にも力を入れています。評価の納得感を高め、今後強化すべきポイントを相互に明確にすることで、個人の目標が明確になり、自己成長意欲の向上につながっています。
三越伊勢丹グループでは、自己啓発のために一時的に休職できる制度やグループ外出向制度があります。
期間は、最短1カ月から最長2年です。2015年から計10名が制度利用しており、取得目的は、主に大学院進学です。
グループ内では経験できない知見を、外部企業で一定期間経験を積むことで身につけ、帰任後に組織に還元することを目的に、グループ外出向を実施しています。(P.66参照)
(株)三越伊勢丹のメイト社員(地域限定社員)は、全従業員約8,400名のうち約1,900名を占め、百貨店で最も重要な店頭販売で大きな役割を担っています。入社4年目以降を無期雇用とする制度でしたが、2016年4月からは入社初年度より無期雇用とし、スタイリストの働く環境のさらなる改善を図っています。
また、メイト社員から正社員への登用は、登用試験受験までの年数を入社5年目から4年目に短縮した結果、正社員登用者数は年々増加し、2021年度は約70名、累計で約1,080名が正社員となり、うち約45名が管理職に昇格しています。また、フェロー社員(時給制契約社員)からメイト社員への転換者数は、2021年度は約25名、累計で約1,480名となっています。
当社グループでは、能力開発として従業員が自主的に学ぶ場を提供しています。これまでは集合開催が中心でしたが、2020年度からはオンライン開催も取り入れることで、地理的、時間的な制限を可能な限り取り除き、より学びやすい環境を整えています。
NACKとは、2016年から始まった当社グループの全従業員が企画・参加できる自律的な学び合いの場です。「Skill」「Network」「Attitude」「Communication」「Knowledge」を意味しています。
始業前や終業後など個人の時間を利用して、任意でさまざまなテーマの企画に興味や関心に応じてリラックスして参加できます。
当初は首都圏店舗中心にリアルで集合実施していましたが、現在はeラーニングコンテンツやオンラインセミナーなどさまざまなかたちで発信し、全国どこからでも、誰でも学べる場として進化しています。
「SNACK」は、(1)自分の時間を使い誰もが参加できる場、(2)従業員自らが自由に設計し教え合い学び合う場、(3)店や部署の垣根を越えた全社横断型の場、などのさまざまな場を提供し、主体的に学ぶ企業文化の醸成と、従業員と会社の新しい関係を築く働き方改革との連動をめざします。
DBJ健康経営
表彰・認定日 | 主催 | 表彰制度・認定制度名 | 表彰企業 |
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2018年12月 | 内閣府 | ![]() 「内閣府特命担当大臣 (男女共同参画)」表彰 |
(株)三越伊勢丹 |
2018年8月 | 東洋経済新報社 | 「CSR企業総覧」 女性が働きやすい企業ランキング1位 ※2015年、2016年 1位獲得 |
(株)三越伊勢丹ホールディングス |
2017年1月 | 厚生労働省 | ![]() 「えるぼし認定」 |
(株)三越伊勢丹ヒューマンソリューションズ |
2016年10月 | 厚生労働省 | ![]() 「えるぼし認定」 |
(株)三越伊勢丹 |
2016年2月 | 日本生産性本部 | 女性活躍パワーアップ大賞優秀賞 | (株)三越伊勢丹 |
2016年2月 | 日本能率協会 | KAIKA Awards 2015 | (株)三越伊勢丹 |
2015年11月 | 厚生労働省 | キャリア支援企業表彰 2015 ~人を育て・人が育つ企業表彰~ |
(株)三越伊勢丹 |
2015年6月 | 日本HRチャレンジ大賞実行委員会 (後援) 東洋経済新報社 ビジネスパブリッシング Pro Future |
![]() |
(株)三越伊勢丹 |
2015年3月 | 経済産業省 | ![]() ダイバーシティ経営企業100選 |
(株)三越伊勢丹 |
2014年9月 | 厚生労働省 | ![]() 「子育てサポート企業」 |
(株)三越伊勢丹 |