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サプライチェーン・マネジメント

サプライチェーン・マネジメント

お取組先方針説明会

人権デュー・ディリジェンス

お取組先との対話に関するバイヤー向けセミナーの様子

目標と取り組み進捗

三越伊勢丹グループは、企業理念のなかで大切にする思考と行動の一つとして、「常に真摯な姿勢で、健全な方法を選択し、社会的責任を果たす」ことを定めています。企業理念につながるサステナビリティの重要な取り組みの一つとして、環境や人権などの社会課題に配慮した持続可能な調達活動の構築を推進しています。

当社グループを取り巻くサプライチェーン構造のイメージ
責任ある調達

当社グループのサプライチェーンは長く、それぞれの段階にはさまざまなリスクが潜在しています。私たちはお取組先の皆さまと協働してそのリスクを低減し、社会に対する責任を果たしていきます。
2018年度に「三越伊勢丹グループ調達方針」「三越伊勢丹グループ人権方針」を制定し、2022年1月にはサプライチェーンワーキンググループを発足させ、サプライチェーン上の社会課題の解決にどのように貢献するか議論を進めてきました。

持続可能な調達活動の実現に向けて、2023年度は以下のような取り組みを実施しています。

  • ● 各方針類の再整備とお取組先行動規範の制定
  • ● サプライチェーン・マネジメントに関する従業員教育
  • ● お取組先とのコミュニケーション

方針と行動規範の整備

三越伊勢丹グループ 人権方針、調達方針

サプライチェーン全体で、より一層人権の尊重や持続可能な調達に取り組んでいくため、2023年4月に両方針を改訂いたしました。改訂にあたり、国際規範や国内外のガイドラインを改めて参照するとともに、変化する社会潮流を鑑み当社グループが取り組むべき社会課題についての記載を更新しました。

三越伊勢丹グループ 人権方針

三越伊勢丹グループ 調達方針

お取組先行動規範

当社グループと関わるお取組先の皆さまに向けて持続可能な調達活動の実現のために取り組んでいただきたい項目を示し、ご協力をお願いするものとして、2023年6月に「お取組先行動規範」を制定しました。
あわせて、お取組先行動規範の内容をご理解・実践いただくために、各項目について詳細な解説を加えた「お取組先行動規範 解説版」を作成しました。

お取組先への依頼項目
  1. 法令順守と公正な事業活動
  2. 品質管理
  3. 人権への配慮
  4. 環境への配慮
  5. 情報の管理
  6. 地域社会の課題解決への貢献
  7. 反社会的勢力の排除
  8. 教育とコミュニケーション

これらの依頼項目は全て同様に重要であり、今までも当社グループがお取組先と協力して取り組んできた内容です。中でも近年、人権や環境への配慮について社会的な要請が高まっていることを受けて、より一層の留意が必要ということをお示ししています。

従業員への教育

  • サプライチェーン・マネジメントの重要性や方針類の再整備について従業員の理解を深めるため、eラーニングによる教育を実施しました。本教材では、責任ある調達が求められる背景や従業員が当事者意識を持つことの重要性について解説しており、グループ全社で9,000人以上(2023年9月時点)が受講し、業務での実践に活用しています。

  • eラーニング「責任あるサプライチェーンの構築のために」eラーニング「責任あるサプライチェーンの構築のために」
  • また、伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店のバイヤーを対象に、お取組先とのコミュニケーションに関する勉強会を開催しました。調達に関わる従業員として正しい知識を持ち、お取組先と適切・効果的にコミュニケーションをとれるよう、実際の対話を想定した、より実践的な内容のワークショップを実施しています。

  • お取組先との対話に関するバイヤー向けセミナーの様子お取組先との対話に関するバイヤー向けセミナーの様子

お取組先とのコミュニケーション

百貨店事業を中核とする当社グループのサプライチェーンの大きな特徴が、非常に多数のそして多様な業態のお取組先に支えられているということです。お取組先のご理解とご協力をいただくため、以下のステップでコミュニケーションをとっています。

①お取組先行動規範の通知

当社グループの主要事業である百貨店事業のお取組先を中心に、約6,000社(2023年10月末時点)に対して行動規範と解説版を送付し、お取組先の皆さまのご理解を求めています。

②方針説明会での説明
  • 年に一度、主要なお取組先に向けて説明会を開催し、当社の取り組みに関するご報告と、当社方針へのご理解・ご協力をお願いしています。
    2021年度は約300社、2022年度は約450社、2023年度は約600社のお取組先にご参加いただきました。

  • 越伊勢丹方針説明会の様子三越伊勢丹方針説明会の様子
③アンケート

当社グループ方針の浸透度とお取組先の状況についてモニタリングするため、定期的にアンケート調査を実施しています。
2021年度に、当社グループの中核事業である百貨店事業を中心に、当社グループの売上上位約7割を占めるお取組先およびその他事業や後方部門の主要お取組先に対して「サステナビリティ調達に関するアンケート」実施し、292社・グループ(回答率51%)よりご回答をいただきました。
アンケート結果からは、製品の品質管理には積極的に取り組まれているものの、環境(生物多様性保全、水資源、環境データの開示)や人権(雇用、不当労働、労働安全衛生)などに関して、サプライチェーン全体の実態把握に課題があることがわかりました。

2023年度11月~2月に2回目となるアンケート調査を実施いたしました。結果概要は以下よりご確認いただけます。

今後も、アンケートを通じ、潜在リスクをはじめとするサプライチェーン全体の状況把握を実施していきます。

④対話

伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店のお取組先を中心に、バイヤーがサプライチェーン上の課題に関する対話を行い、調達活動におけるリスクや課題についての情報共有と意見交換を行っています。2023年10月時点で198社と対話を行いました。

当社は、お取組先との日頃からのコミュニケーションを重視し、社会課題に対し協力して取り組む関係性の強化を図っています。

調達担当者のインタビュー
■INTERVIEW 【サプライチェーン・マネジメント】調達を行う担当者としての責任
木屋 龍太
  • (株)三越伊勢丹
  • 営業本部 第1MDグループ 新宿ライフデザイン商品部
  • ホームファニシング・キッチンダイニング バイヤー
  • 木屋 龍太
  • ※所属は2023年11月時点のものです。

お取組先行動規範の制定を受け、お取組先にその内容をお伝えしていくにあたり、商品の仕入れ・調達を行う担当者としての責任や求められる視野の広さ・視座の高さを今まで以上に実感しています。お取組先と一層の発展的な取り組みができるよう、今後も理解を深めていきたいと思っています。現在、当社方針についてのご理解と各社の取り組み状況の確認のため、複数のお取組先と対話を実施しています。日頃の商談は売上施策やプロモーション企画など、お客さま満足やお互いの売上向上に関わる内容が主でしたが、今回の対話では、サプライチェーン・マネジメントや各社の方針についてお話を聞くことができ、お取組先の新たな一面を垣間見ることができました。
あるお取組先では、通勤時にマイボトルを持参する方が8割いらっしゃり、社内の自販機にペットボトル製品が置かれておらず、日常から環境に配慮した行動が習慣化されているというお話を伺いました。また、会社指定の資格を取得した社員の方に毎月の給与が積み増しされるという個人の自律的成長を促す制度を運用されているお取組先もいらっしゃいました。私自身、とても共感し、「当社にもあったらいいな」と感じる仕組みや制度についてお話を伺ったことで良い刺激を受けました。
今後も、対話を通じてお取組先とのより一層の協力関係を築き、お客さまやステークホルダーに信頼される調達活動を行っていきます。

■INTERVIEW 【サプライチェーン・マネジメント】業界内に社会課題解決の機運を醸成
石本 聡
  • (株)三越伊勢丹プロパティ・デザイン
  • 技術・調達統括部長
  • 石本 聡
  • ※所属は2023年11月時点のものです。

(株)三越伊勢丹プロパティ・デザインの主要事業である建装・住環境事業では、多数のお取組先との協力により付加価値の創造につなげています。建設業界では、昨今、サステナビリティについて声高に叫ばれてはいるものの、当社を含め個々の企業の具体的取り組みはまだまだ進んでいないのが実態で、労働安全衛生を含む働く環境の整備も課題として捉えています。
建設業においては、環境や人権リスクの中でも、①労働安全衛生の確保、②長時間労働の正、③労働力不足を背景とする外国人労働者の人権の3点について、特に留意が必要と考えています。人財不足に直面するなかで、サプライチェーンにおいて人権リスクがどこに潜んでいるのかを適切に把握し、その実態に応じた施策を展開することで、当社の企業価値向上のみならず、業界としても魅力を高め活性化させることにつなげてまいります。

  • 今回、当社では約700社にお取組先行動規範をお送りしました。また、職場での労働災害の撲滅や環境保全活動の推進に努めることを目的としてお取組先約100社が参画する「安全衛生協力会」を発足させており、その年次大会において社長自ら「お取組先行動規範」の内容についてご説明し、お取組先の理解を求めています。
    現在、次のステップとして個別のお取組先との対話会を通じて相互理解を深める活動を続けていますが、お取組先の受け止は大変好意的で、当社の投げかけをきっかけとして社会課題解決に対する機運が業界全体で高まっていることをひしひしと感じます。

  • 業界内に社会課題解決の機運を醸成
「パートナーシップ構築宣言」

当社グループは、お取組先や価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを宣言する「パートナーシップ構築宣言」の趣旨に賛同し、2022年8月に同宣言を公表いたしました。調達・人権方針に基づいた個別項目を掲げることで、お取組先や事業者の皆さまとの連携・共存共栄のための取り組みをより明確に宣言しております。今後も公平、公正な取引を通じ、お取組先との信頼関係を築き、「社会的価値」と「経済的価値」を両立しながら、持続可能な社会、豊かな未来の実現を目指します。

  • ※経団連会長、日商会頭、連合会長および関係大臣(内閣府、経産省、厚労省、農水省、国交省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」における「パートナーシップ構築宣言」

  • 調達方針に関するeラーニング
海外のお取組先

当社グループは、海外に27店舗の商業施設を展開しております。各国・各拠点のお取組先にも調達方針に基づく取り組みを実践いただくべく、2022年に中国語・英語へ翻訳し、2か国(4拠点)のお取組先1,400社・グループに対して送付し、理解・順守を働きかけを行いました。
2023年には、改訂および制定した「人権方針」「調達方針」「お取組先行動規範」を海外27店舗の従業員に対して配布し、一人一人の実践を求めています。一部店舗では国内の教育教材を翻訳し現地従業員への研修も実施しています。
今後は、お取組先の実践状況・課題の把握に向けて、アンケートおよび対話の実施を検討してまいります。

人権デュー・ディリジェンス

三越伊勢丹グループは、2023年4月に改訂した「三越伊勢丹グループ 人権方針」に基づき、人権尊重の責任を果たしていくため、人権デュー・ディリジェンスに取り組んでいます。

当社グループが目指す人権を尊重する経営の全体像
人権デュー・ディリジェンス

多くのお取組先にご協力いただき、サプライチェーン全体の状況のモニタリングと潜在するリスクの評価を行っています。そして、そのリスクを防止・軽減するために従業員への啓発を行うとともに、同様の取り組みをお取組先にも要請しています。
苦情処理メカニズムについては、店舗で働くお取組先の従業員までを対象としたホットラインを設置しています。今後は、サプライチェーンに開かれた相談窓口の設置について検討し、権利の侵害を受けた当事者がより声を上げやすく、受け付けた相談に対して適切な対応ができる体制づくりを目指します。
人権デュー・ディリジェンスは一度実施して終わりではなく、繰り返し継続して実施していくことが重要な活動です。今後も、お取組先の皆さまと連携しながらこれらの取り組みの精度を向上させ、持続可能なサプライチェーンの実現に向けた取り組みを推進していきます。

■INTERVIEW 【サプライチェーン・マネジメント】お取組先の“こころを動かす”仕事
大久保 美侑
  • (株)三越伊勢丹ホールディングス
  • 総務統括部サステナビリティ推進部
  • 大久保 美侑
  • ※所属は2023年11月時点のものです。

当社グループの中核である百貨店事業は、多様な商品・サービスを提供しており、当社グループと直接取引を行うお取組先だけでも約2万社に支えられています。2021年に調達に関するアンケートを実施したところ、お取組先の業種・事業分野・規模がさまざまであることから、人権課題も一様ではありませんでした。
そこで、当社グループによる人権デュー・ディリジェンスでは、「ステークホルダーとのコミュニケーション」を最も重要なポイントとし、その一環として、2022年度には34社のお取組先と持続可能なサプライチェーンに関する個別対話を行い、潜在的なリスクを紐解き、当社グループとしてすべきことを検討しました。対話では、お取組先の多くが人権や環境配慮の重要性は認識しているものの、具体的な取り組み手法について苦慮していることが分かり、取り組みの一助にしていただきたいという思いで、2023年6月に「お取組先行動規範」とその解説版を公表しています。解説版は、用語解説や参照すべき行政・業界のガイドラインなどをご紹介し、各社のルールづくりに役立てていただくことを目的としています。
私たちの存在意義は、あらゆるステークホルダーの「こころを動かす」ことにありますが、今般の方針類の整備をきっかけに、従業員だけでなく、お取組先行動規範の制定や対話を通してお取組先・調達先のこころを動かしつつあることを実感しています。
百貨店事業を中核とする当社グループにおいては、お客さまに共感いただき、ご安心いただける商品・サービスを提供し続けることがサステナビリティだと考えます。2013年より毎年実施しているお客さまアンケートでは、商品の品質や安全性に関する高い期待が寄せられており、そうした理由からも責任ある調達に取り組むことは必然であると言えます。今後もお客さまの期待に応え続けるため、当社グループらしい責任ある調達に取り組んでいきます。

株式会社ディ・エフ・エフ, 三越伊勢丹HDS 総務統括部 総務企画部