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顧客に対する責任

顧客に対する責任

三越伊勢丹グループは、長い歴史において、常にお客さまへ安全・安心な商品をご提供することを念頭に、品質の確保と適正な表示に取り組んでまいりました。
これらは、持続可能なサプライチェーンの構築において、調達にも大きく関わる業務であると同時に、お客さまアンケートでも常にご期待の上位である「商品の品質・安全の確保・正確な表示」にも該当しており、その社会的責任を果たすべく、日々の業務に取り組んでいます。
百貨店は様々な商品を取り扱っていることが特性ですが、すべての商品に法律の規制があるわけではありません。法律を順守することはもちろんですが、法律の規制がない分野の商品についても当社グループの独自基準やルールを設定することで、様々な商品の品質を確保し、お客さまに安心してお買物をしていただけるための土台をつくり上げるべく、取り組んでいます。また、基準やルールを定めるだけではなく、その基準やルールが守られているかを確認するための自主点検の運営や、様々なツールを使った社内教育の実施、さらにはお取組先との連携を構築することで、より高い品質管理の実現を図っています。
当社グループの重要方針の一つである「三越伊勢丹グループ 調達方針」にも品質管理の項目がありますが、日々の業務行動につなげられるよう、より具体的な品質管理への姿勢を個別に設定しています。「調達方針」はもちろん、その上位方針である「サステナビリティ基本方針」と連携し、より良い社会の実現にも貢献してまいります。

品質管理への姿勢

三越伊勢丹グループは、お客さまのニーズとともに多様化する商品やサービスについて、常に安全・安心を最優先に、お客さまのご満足と信頼に応えられる品質を追求します

● 関連する法令を遵守するとともに、お客さまにご満足いただける品質をご提供するために必要な自主基準やルールを作成し、お取組先を含めた社内関係者全員に周知いたします

● お客さまへ安全・安心な商品をご提供するために、表示・外観・衛生などの点検活動を推進し、当社グループ社員一丸となって実践します

● 品質管理に必要な検査体制を社内に整備し、維持していきます

● 環境や資源への配慮、適正な商品調達も含め、品質管理面からのトータルサポートに取り組みます

適正表示の推進

当社グループでは、安全・安心な商品・サービスを提供するため、適正な表示(正しい情報の提供)に努めています。
とりわけお客さまの健康や安全・安心に直結する食品の販売においては、アレルギーに係る表記やアルコールの有無など、必要な情報を正確でわかりやすい表示・情報発信に努めることで、お客さまに対する責任を果たしていきます。アルコールについては、未成年者や妊娠中の方による飲酒など健康を損なう可能性があることを理解し、店頭およびWEBサイト上で注意喚起を行っています。「適正な表示」に関しては、品質管理基準とは別にマニュアル・基準を整備し、運用しています。
当社グループでは、中元歳暮などのご進物品を多く扱っており、進物を受け取った先様にも品質情報をご確認いただけるようオンライン検索サービスを提供しています。
このサービスでは、商品の原材料やアレルギー特定原材料、栄養成分、酒類のアルコール度数などの情報が閲覧可能です。

品質管理情報確認システム新しいウィンドウで開く

また、世界的にSDGsに関連する話題が多く取り上げられていますが、商品の表示にもその傾向が顕著に表れており、環境負荷低減につながる「オーガニック」や資源を循環させる「リサイクル」などの表示が増加しています。いずれの表示についても、その根拠資料などを確認した上で、お客さまが求める商品を正しく選択できるような表示・表現となるように注意を払っています。

適正な表示については、コンプライアンスの観点からも取り組みを推進しています。

品質管理基準・適正な表示のためのルール

当社グループが安全・安心な商品をお客さまにご提供するために、法令順守に加え、当社グループ独自の品質管理基準やルールを定めているものがあります。
例えば、食品・レストラン、化粧品、宝石・アクセサリー、衣料品などですが、商品分野ごとに名称の定義や機能性の基準などを定めることで商品の品質を確保し、お客さまのご期待に応えられるようにしています。また、品質に関連する多くの基準やルールは、お取組先との連携を欠かすことができません。当社グループ従業員、お取組先、そして品質管理が一体となって、安全・安心な商品をご提供するために、基準やルールの適正な運用に日々取り組んでおります。

三越伊勢丹グループ食品衛生管理計画書
~HACCPの考え方を取り入れた食品衛生推進活動~

2021年6月から制度化されたHACCPの考え方に基づく衛生管理計画書です。当社グループの独自ルール(食品取扱基準、デリバリールール等)も含まれた内容で、お取組先と共に食の安全を確保するためのマニュアルになっています。

※HACCP(ハサップ)= Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、国際的な食品衛生管理方法の一つ

三越伊勢丹グループ アレルギー情報提供マニュアル

食物アレルギーは一歩間違えれば生命の危機につながる重要なファクターです。正しいアレルギー情報を提供することで、お客さまに安心して食品を購入し、召し上がっていただけるよう、このマニュアルには、アレルギーの基礎知識、当社グループのルール、アレルギーに関する情報開示のフロー、有事の際の対応についてまとめています。

三越伊勢丹グループ 化粧品類・エステ類NGワードルール

化粧品に関わる表現について、表現可能な効能効果を示すとともに、化粧品類やエステ類にはNGワードを設定し、適正な表現を推進しています。

現在、上記3つに「三越伊勢丹グループ 針管理マニュアル」を加えた4種類のマニュアル類は、お買場の社員が、日常の業務に加え、自主点検やお取組先からの問い合わせ等に適切に対応できるよう、業務スマートフォン内にアプリ化しています。今後も必要なマニュアル類を加えながら、利便性と実用性の向上を推進していきます。

社内体制の構築と推進

百貨店の商品点検

百貨店では日常的に商品点検を行っております。

● 会社のディフェンスラインの機能を働かせながら重点リスクの未然防止策として行っている「自主点検」

● 商品の安全性を販売前に確認するための「日常点検」

いずれも店頭のスタッフを中心に、各店舗が主体的に取り組んでおり、商品の安全性確保に大きく寄与しています。

食中毒予防点検(自主点検)
  • HACCPの考え方に基づく記録(健康管理記録・温度管理記録等)を適切に行っているか、基本となる衛生管理計画書が保管されているかなどを点検することで、法対応が適切に行われているかを確認するとともに、食中毒リスクの軽減を図っています。年2回の自主点検だけでなく、日々の食品衛生管理は私たちの重要なテーマです。

  • 「食中毒予防」点検フローイメージ

    「食中毒予防」点検フローイメージ
アレルギー強化月間(自主点検)
  • 各ショップにアレルギー台帳が整備されているか、アレルギー台帳と店頭POPは一致しているかなど、お客さまへ正しいアレルギー情報が提供できる体制を整えることを目的に、年に2回自主点検を実施しています。2022年度から、アレルギー事故の予防をさらに強化するために、食品レストラン取扱部門だけの中間点検も年に2回加えました。まずは事故の未然防止を優先に取り組んでいます。

  • 「アレルギー強化月間」点検フローイメージ

    「アレルギー強化月間」点検フローイメージ
お買場商品点検(日常点検)

全店全売場を対象に、陳列している商品の点検を、毎月品質管理が発信するテーマに基づき実施しています。見つかった不適は現場で速やかに改善されますが、全国に影響が出るような重大不適が見つかった場合には、品質管理がハブとなり全店へ情報を共有することで、全店的な事故予防にも効果を発揮しています。
また、商品点検を行うために商品知識や品質知識を身につけることができるため、スタイリスト(販売員)のスキルアップにつながる相乗効果も図られています。

直輸入品の対応

三越伊勢丹グループでは、バイヤーが選定した商品を直輸入するなど、お客さまのご要望に沿った品揃えに取り組んでいます。しかし、海外で販売されているからといって、そのまま日本で販売することはできません。
品質管理では、国内で販売するために必要な日本の法律に沿った表示の指示をはじめ、機能性や外観、安全性などを確認するための1点検品、そして根拠資料の確認を行っています。

安全性の確認

直輸入品も国内製品と同じ目線で安全性を確保することが重要です。針や釘などの異物が混入していないか、モノフィラメント糸や鋭利なスパンコールが使用されていないかなど、肌に触れる部分を中心に、安心して着用いただくための点検を実施しています。
また、子供服においては、より高い安全性を確保する必要があり、通常の検品に加えて、フードや紐による怪我を未然に防止するため、JIS規格に沿った仕様であることも確認しながら、可愛いデザイン性と安全性の両立も図っています。

品質知識を習得できる社員教育の実施

  • 商品に関連する品質管理の知識は、スタイリスト(販売員)がお客さまに必要な商品情報をご説明するうえでも、お客さまの安心とご満足につなげるためにも、とても重要です。お買場はもちろんのこと、新規事業を担当する所属からの教育要請も増えており、より幅広い対応が求められています。
    品質管理担当が毎年作成しているオリジナルの教育「知っておこう品管テスト」は、三越伊勢丹グループで働く従業員の誰もが品質管理知識を習得できる内容となっており、2023年度は、延べ12,000人以上が受講しました。必要な品質管理知識を得られるよう、教育資料の充実に取り組んでいます。当社グループで従事する誰もが分け隔てなく、品質管理の知識を得られるメニューとツールの提供、環境づくりに今後も取り組み、スキルを高め商売の基盤づくりに貢献していきます。

  • 2022年度知っておこう品質テスト

お取組先との連携

品質管理は、サプライチェーン・マネジメントにおける課題の一つです。2023年6月に制定した「お取組先行動規範」をベースに、お取組先とのさらなる連携を進めています。
当社グループが販売する商品の品質は、一次生産者や原材料加工会社などにおける品質がそのまま引き継がれていくため、販売前に商品点検するだけでなく、川上まで遡って適正に製造が行われているかを管理することが、とても重要です。ここがまさにサプライチェーン・マネジメントにおける品質管理の観点であり、適正な管理を行うことが、お客さまへ安全な商品を提供し続ける責務と考えています。

当社品質管理基準の共有

お取組先から適正な商品を納品していただくために必要な当社の品質管理基準を一部共有しています。

「三越伊勢丹グループ品質管理基準」※衣料品・雑貨・リビング製品の総合基準書
「三越伊勢丹グループ食品衛生管理計画書」
「アレルギー情報提供マニュアル(簡易版)」
「化粧品類・エステ類NGワードルール」

今後は、環境負荷低減のための取り組みや、DX化による商売のスピード向上など、さまざまな外部環境変化が考えられます。そういった変化に対応し、お取組先にとっても活用度が高いと感じていただけるよう、内容のブラッシュアップを続け必要な基準を追加しながら、商品に関連する課題解決に一緒に取り組んでまいります。

新規お取組先の確認スキーム

三越伊勢丹グループでは、取組先と取り組みを開始する際に各社の品質管理体制を確認しています。

①お取組先の品質管理体制の把握
②表示等が各種法令に準じた内容であるかの確認
③商品等の品質が確保されていることをデータ等で確認
④三越伊勢丹グループ品質管理基準の共有

お取組先の規模は様々であるため、不足している法令知識等を最初にお伝えすることで、お取組先の知識向上も図っています。取り組みを開始するその時点から、相互理解を深めるためにも大きな役割を果たしています。

化学物質への対応

三越伊勢丹グループ百貨店各店舗では、「三越伊勢丹グループ品質管理基準」に基づいたチェックおよび管理を行うことで、商品や店舗環境の安全・安心につなげています。

(1)「ホルムアルデヒド」への対応

「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で規制されている「ホルムアルデヒド」について、特にベビー用品売場における管理が重要です。当社グループでは、直輸入品の法規制対象のベビー用繊維製品は全品番全色の検査を行うことや、ベビー服売場の什器等のホルムアルデヒド計測を年1回実施するなど、商品・販売・環境面からの管理を適正に実施することで、ベビー用品の有害物質に対する安全性を確保しています。

(2)「特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料」への対応

「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で規制されている「特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料」の規制対象品に加え、「三越伊勢丹グループ品質管理基準」では和装や座布団なども対象品として追加指定しています。この内容に沿って、2016年4月より、取り組みを最初に始める段階において、食品以外のすべてのお取組先から「有害物質不使用宣言書」(該当商品を取り扱っていない場合は「対象製品の取り扱いに関する証明書」)を提出いただいています。

■INTERVIEW 【品質管理】品質管理は事故を未然に防いでのれんの信頼を守り、社会を守る。
(株)三越伊勢丹ホールディングス 総務統括部 コンプライアンス部 榎本 明子
  • (株)三越伊勢丹ホールディングス
  • 総務統括部 コンプライアンス部
  • 榎本 明子
  • ※所属は2021年11月時点のものです。
品質管理を取り巻く環境

皆さまは、「品質」という言葉にどんなイメージを持っているでしょうか。データ偽装、異物混入、産地偽装など、様々な「品質」に関連する問題がニュースで取り上げられることも多く、高い「品質」を維持することの重要性は年々高くなっております。社会の「品質」に対する目もより厳しくなっており、「品質」の問題は、企業の存続にさえ影響を及ぼすような重大なリスクとなっています。
また、社会環境の変化とともに品質管理を取り巻く問題も変化しますが、過去に社会的な問題になったことが、忘れた頃に形を変えて再度問題になることも多くあり、「品質」の課題は継続的に取り組む必要があると感じています。さらに、最近では商品の流行やトレンドの移り変わりが早く、加えて法律や規則の改訂や新設も多くあり、情報を素早くキャッチすることがとても重要になっています。

私たちが大事にしていること

お客さまが三越伊勢丹グループに求める商品品質への期待は、創業当時から先代が築き上げてきたのれんへの信頼につながっています。ゆえに、こののれんへの信頼を守ることが、私たちの最大のミッションです。
のれんへの信頼については、まだ私が若手の頃に、多くのお取組先からも教わりました。例えば、「三越や伊勢丹からお墨付きを貰えれば、他社へも自信を持って薦められる」とか「上司から三越や伊勢丹の品質管理へ確認してから決定しろと言われた」などなど、相談を受ける責任の重さを感じながら、とても嬉しかったことを今でもよく覚えています。先輩方が真摯に取り組み築いてきた信頼を損なわないように、私たち後輩はしっかりとその土台を継承していくことがとても大事だと考えています。

品質管理の取り組み

品質管理は様々な業務を担っていますが、このレポートでも一部をご紹介させていただきました。
品質管理というと、何か問題が発生した際に対応する役割だと思っている方もいますが、私たちが考える本来の役割は〈事故の未然防止〉です。土台としての「基準・ルールの策定」、事故予防の武器となる知恵を得るための「教育」、そして適時不適品を排除する「日々の点検」などに力を入れているのは、そのためです。他にも、直輸入品の適正な検品体制の構築や表示の指示など、一部メーカー的な役割も果たしています。
一方で、事故の未然防止の観点に加え、万が一の事故発生時の被害拡大防止においては、品質管理としての専門性を活かした対応も行っています。例えば、社内に設置している検査室で定期的に店内製造品の細菌検査を実施して衛生状況を確認したり、食品に重篤な異物が入っていた場合にはその工場まで出向き、原因を特定し、再発防止策がきちんと取られていることが確認できるまで商品の再販は認めないなどです。私も実際に、事前確認や改善対応を含め、300カ所を超える食品関連の厨房や工場確認を経験しています。
2このように、品質管理は安心・安全な商品を確保するために努力をしていますが、一緒に取り組んでいる〈お買場のスタイリスト〉〈バイヤー〉〈各店舗〉、そして〈お取組先〉の方々の働きがあることも忘れてはいけません。それぞれが信頼関係を築き、連携を図ることではじめて、良い「品質」の商品をお客さまへ提供することが実現できるのです。私たちは黒子として、またある時は前面に出て対応できるよう、今後も精進と関連各所との連携を進めていきたいと考えています。

これからを見据えて

当社グループがこれからも持続的成長を続けていくためには、お客さまが商品やサービスを安心・安全にご利用いただくことを大前提としながらも、品質管理という狭義の意味に囚われることなく、今後の社会的な役割(プラスチック問題、化学物質への対応、フードロス等)へも積極的に関与したいと考えています。それぞれが持つ得意分野が相乗効果を発揮し、部門を越えて連携できることが理想です。それが実現できるよう、私たちも知見を深めていかなければなりません。品質管理が持つノウハウや知識が、様々な現場の仲間に役立つと思って貰えるよう、メンバー全員が一丸となって新たな1ページを作るために努力してまいります。
サステナビリティレポートをご一読いただき、当社グループの品質管理について知っていただければ幸いです。

ユニバーサル対応

三越伊勢丹グループでは人権・国籍・性別・宗教・年齢・障がい等に関わらず、あらゆる人々が活躍できる「ユニバーサル社会」の実現に向け、多様な人々や社会のニーズを的確に把握し、適切な対応を図ることをめざしています。 商品・サービス・店舗環境等における安全・安心・高い利便性でお応えするにとどまらず、お客さま一人一人のきめ細かなニーズに寄り添うことで三越伊勢丹グループの新たな付加価値を生み出すことにつながると考えています。
また「三越伊勢丹グループ人権方針」では、多様な個性を尊重し、人種・民族・国籍・信条・宗教・性別・性的指向・出身地・年齢・疾病・障がい・雇用形態等による差別や、個人の尊厳を傷つける行為は行わないことを徹底しています。

■ユニバーサルマナーへの対応

  • 三越伊勢丹グループでは、従業員一人一人が多様な方々へ向き合うためのマインドとアクションである「ユニバーサルマナー」の理解を深め、実践できることを目指しています。2018年3月に三越伊勢丹グループオリジナルの「ユニバーサルマナーハンドブック(基本編・実践編)」を策定しました。ハンドブックには概念、基礎知識、対応マナーの解説のほか、実践例が示されており、お客さまに安心して当社グループをご利用いただけるよう、従業員研修等で使用しています。さらに日本百貨店協会と連携して、全国の百貨店へと活用を拡大することで、サービスの一層の向上へとつなげています。
    2017年度より民間資格であるユニバーサルマナー検定の取得を推奨しています。また、1980年代より、社内資格として手話講座全15回を自主開催し、合格者に手話バッジを授与。計50名が手話バッジ保有者として活躍しています。

  • ユニバーサルマナーハンドブックユニバーサルマナーハンドブック
三越伊勢丹HDS 総務統括部 総務企画部