三越伊勢丹グループでは、お客さまのライフスタイルをより豊かなものにするため、世界中の価値ある文化や芸術をご紹介する取り組みや、日本の良さをあたらしい価値として再認識していただく取り組み、また保有する史料の活用など、文化・芸術を支援する様々な取り組みを行っています。
春の院展
1907年の三越美術部創設以来、若手芸術家を発掘し、巨匠作家を紹介して参りました。現在でも、三越伊勢丹グループ店舗における春の院展・日本伝統工芸展の開催・運営を通じた文化芸術振興を、三越伊勢丹グループのサステナビリティ重点取り組みの一つである「人・地域をつなぐ」活動として進めています。
2018年度の開催回数・場所は以下のとおりでした。
春の院展:4回(2018年度)「日本橋三越・札幌三越・福岡三越・新潟三越」
日本伝統工芸展:5回(2018年度)「日本橋三越・名古屋栄三越・仙台三越・福岡三越・松山三越」
井上絢子さんの作品(手前)
2019年3月、三越日本橋本店は国際フォーラムにて開催された「アートフェア東京2019」に6度目となる出展をいたしました。「アートフェア東京」は国内外のギャラリーが集まり、アート作品を展示・販売する日本最大規模の芸術見本市です。
今回の出展テーマは「PRISM」。
これからの活躍が期待される、井上絢子さん、内海聖史さん、藤崎了一さん、柳田有希子さんの4名の現代美術家と、抽象の可能性を色彩というキーワードから再考する企画でご紹介しました。
MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭 2018
グランプリ受賞作品 「天型」 梶谷 文雄 氏
オーディエンス受賞作品 「涼流バカンス」 内田 早紀 氏
2018年8月、三越日本橋本店ではお客さまに身近な環境でアートやクリエーションを感じていただく「三越アート&クリエーション」を開催。日本唯一の国立総合芸術大学として数々の芸術作家を輩出してきた東京藝術大学と、5回目となるコラボレーションを行いました。日本画・油画・彫刻・工芸・デザイン・建築・先端芸術表現・美術教育・文化財保存学の分野で、現役教授陣が推薦する40歳未満の大学院在学生および卒業生約100名による作品を美術フロア全面を使って発表しました。
これは「アート」や「クリエーション」を三越伊勢丹のフィルターを通して新たな価値としてご提案するとともに、若手のアーティストの皆さんに発表の場を提供するなど、次世代育成につながる取り組みです。
また、2年に一度となるデザインコンペティションも実施。
藝大の学生、卒業生が三越の包装紙をデザイン、応募された20作品を日本橋本店のウィンドーでご紹介、その中から選ばれたグランプリ賞と三越オーディエンス賞となった作品は、期間限定で包装紙としてお客さまにお披露目されました。
正面玄関前の笹飾りと学生さん、先生
竹の伐採も学生さんが行いました
オーナメント作りのワークショップの様子
完成した錫のオーナメント
伊勢丹相模原店では2018年6月、「女子美術大学」とコラボレーションした「JOSHIBIISETAN」企画を開催いたしました。
相模原店と同時期に開校した女子美術大学(以下女子美)相模原キャンパスとのコラボレーション企画は今回で3回目となります。
今回のテーマは七夕にちなんだ「みんなの七夕 届け、願いごと☆」と題し、女子美芸術学部立体アート専攻2年生の皆様にご協力いただき、相模原店の2階正面玄関に七夕装飾を展開しました。
笹飾りのオーナメントは錫(すず)の塊を溶かして木型に落とし込み、表裏の異なる素材の押し型で作成したもので、風で揺れるたびにキラキラと光ります。
竹は東京都町田市相原町にご協力いただいた「無双竹」を使用。約4メートルある吹き抜けの高さをふんだんに活かした装飾となりました。
お客さまから飾っていただいた短冊は、会期終了後に北相模総守護社亀ヶ池八幡宮に奉納します。
また、会期中にはお客さま向けの錫のオーナメントワークショップを開催しました。
錫をIH機器で溶かし、学生が制作した木の型に注ぎ固め、オーナメント部分をカットし短冊をつけて行きます。
小さなお子さまから大人の方までご参加いただき、制作したオーナメントを嬉しそうにお持ち帰りいただけました。
ワークショップにご参加されたお客さまからは「楽しかった!正面玄関の七夕装飾に飾りたいけどもったいないからお家で飾ります。」といったお子さまの声のほか、保護者の方からも「なかなか図工の授業や家では体験できないことが出来た。錫の塊を見たのも初めてだし、子供も楽しく参加できていた。」との声を頂きました。
①お客さまでにぎわうギャラリー。期間計で約●●人の方にお越しいただきました
③軽量粘土で瞬時に造形する林航平さんのライブイベントの様子
⑤玉川宗則さんの次々変化するキャンバスにお客さまも目を奪われます
伊勢丹立川店では、芸術支援・地域コミュニティへの貢献の一環として、障がいのある方々が自由な発想で表現したアート作品を展示する「アール・ブリュット(※)立川2018」を2018年10月に開催しました。
地元多摩地域在住の42名の作家が56作品を5階特別室、2階ギャラリースクエア、エスカレーターサイドなどで展示。今回で4回目を迎え、年々反響も大きくなっています。
福島県美術館での展覧会会場の様子
天女(まごころ)像木彫(彩色蓮弁)
「歌舞伎衣裳 綺羅をまとう」展
三越伊勢丹グループでは歴史と伝統とともに歩んできた三越の歴史史料を保存し、現代に引き継がれている貴重なデザインや写真などを後世に残すべく、国内外の美術館・博物館への展示協力をしております。
●三越の歌舞伎衣裳を石川県立歴史博物館で展示
2018年9月から11月にかけ、石川県立歴史博物館で「歌舞伎衣裳 綺羅をまとう」展が開催され、「三越の由緒衣裳」として九代目市川團十郎、五代目中村歌右衛門、七代目松本幸四郎、六代目尾上菊五郎らが着用したという記録が残る衣裳を展示しました。
この展覧会では、明治後期から大正期にかけて金沢市中心部のにぎわいを生み出し地域文化に大きな影響を与えた、芝居小屋「福助座」と興行師梅若ゆかりの衣裳約40点を中心に、江戸大奥で活躍した御狂言師・坂東三津江の衣裳、明治から昭和初期の名優の衣裳を一堂に公開しています。
三越は、明治40(1907)年に歌舞伎座の太夫元から衣裳一切を引き取り、衣裳部を設けて貸衣裳業を始めました。大正12(1923)年の関東大震災でその多くを消失しましたが、その翌年から昭和14、15年ごろまで多くの歌舞伎衣裳を製作しました。
●三越伊勢丹所蔵『天女(まごころ)像』の巡回展
2018年10月から12月にかけ、福島県美術館にて「生誕130年 佐藤玄々(朝山)展」が開催され、三越伊勢丹が所蔵している『天女(まごころ)像』の関連作品が展示されたほか、3D映像での再現も行われ訪れた人々を魅了しました。いずれも今回が初めての展示となりました。
今回の企画展は2019年1月から愛知県碧南市藤井達吉現代美術館(愛知県)、3月には三越日本橋本店本館1階中央ホールにて巡回展示されました。
※昭和35(1960)年に完成した三越日本橋本店の『天女(まごころ)像』の製作者である佐藤玄々氏は、
明治21(1888)年、福島県相馬郡(現・相馬市)の宮彫師の家に生まれ、18歳で山崎朝雲に師事。
大正11(1922)年には渡仏し、ブールデルの指導のもと西洋彫刻を研究。
帰国後は、歴史や神話をテーマにした像や、身の回りの蔬菜(そさい)、小動物に特化した精緻な木彫作品を手がけました。
三越日本橋本店本館全景
1927年増築時に建築の「三越ホール(現三越劇場)」
1935年増築時に建築の「中央ホール」
1921年増築時に建築の本館屋上「金字塔」
2016年、三越日本橋本店(本館)が、国の重要文化財に指定されました。
現在の建物は、1914年完成の建物をもとにした豪華なルネサンス式建築。格調ある色調で彩られた三越劇場、吹き抜けの中央ホールなど、各時代の先駆的な意匠を用いて華やかに装飾されており、日本における百貨店建築の発展を象徴するものと評されています。
関連リンク
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